6日目 なにもできない

 なにもできない。どうでもいい。


 そんな気分の日が定期的にやってくる。


 お腹が空いても、顔を洗っていなくても、天気が良くても、部屋が汚れていても、

 なにもかもどうでもいい。


 仕事を辞める少し前に、SNSは全てやめた。年賀状も返さなかった。

 自分が消えていなくなることで、嫌な気分になる人がいるのであれば、自分が消えたこと自体が誰もわからない状態にすればいい。


 電話番号のショートメッセージが唯一繋がっているラインだ。でも、一切返信しない。


「明けましておめでとう。今年もよろしく。」

 新年の定番の言葉。今年は文字でも言葉でも一切言わなかった。

 おめでたくもないし、よろしくすることもないからだ。


 もう死ぬつもりだった。今も死にたい。


 通っていた精神科にも行かなくなった。薬も勝手に断薬した。


 死にたいのに病院に行くのは矛盾している。そう思った。


 病院に行けば、お金がかかる。仕事をしていないからお金は補給されない。すり減っていく残高と精神、繰り返される毎日に何か意味はあるのか。


「死なないで欲しい」

 その言葉は、毎日の苦しみを軽減してくれるのか。肩代わりしてくれるのか。それはない。自分の苦しみは自分にしかわからない。自分で何とかするしかないが、自分が嫌で嫌で仕方がない。

 早く解き放たれたいの。


 自分が死んで事故物件になって迷惑をかけるのが嫌だから、自宅では死ねない。

 一応、職員だから、自殺したら職場にも迷惑がかかるから退職するまで死ねない。

 一応、家族だから、自殺したら身内に迷惑がかかるから家族をやめるまで死ねない。


 退職はできた。次にするべきステップはなにか。


 本当はなにも考えずにただただ消えたい。自分の存在をなかったことにできたらどんなに嬉しいか。


 死にたい死にたい死にたい死にたい


 頭の中でループして、ただ横になって、宙を見上げる。



【今日できたこと】

 ・死ななかった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る