第10話 カミングアウト
人は何か変えようと思った時に行動する。きっかけは何処で何が起こるかわからない
その変化ってのは歳月をかけて周りが気づいたりする。
彼の変化に気づいたのは、つい最近だった。
まずは体系、ついこの前まで猫背気味だった彼が急に背筋を伸ばして教室に来たのがきっかけ。ほかのゼミ生徒は気づいていないと思うけど、私の目からは少し普段と違うように映った。
そこから数週間が経ったある日、今度は顔の艶が前よりも増したのではないかと感じた。正確には肌が綺麗になったと思う。昨今、肌に関して男女関係なく注目されているし肌がきれいな男子は好かれる。外崎君も女性を意識するようになったんだ、なんて陰ながら見ていたが、私自身の直感はそう感じてはいなかった。
前よりも目を合わせて話すようになったが、視線は私の顔ではない部分を見られているように感じるし、彼の目線が胸やお尻などの特定の部分をいやらしく見ているような感じではなく、観察されているようだった。
(何かおかしいな、、、嫌悪感を感じる視線ではないことは確か。けれど、すごく違和感があるし見られている感覚が前よりもすごい)
一度、彼自身に話を聞こうと思ったが、話すことはなかった。直感だが、聞いてはいけない気がしたからだ。それとは別に隠しておきたい特別な何かを持っているようで
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「いつからそれを知ったの?言った覚えはないんだけど、、、」
「その返し方はもしかしてあたりってことかな?」
『やってしまった!』とわかる表情をみせ、彼は大きく息を吸い吐いた。覚悟を入れたのだろうか、詰むんだ口を開けて話し始める。
「僕は隠し事が苦手だし、言い訳とかも浮かばないからさ。うん、新田さんが言っていた通りで僕は趣味で女装しているよ」
「どうして女装しているの?もしかして、LGBT的なやつ…?」
性的少数者の話題は、今の時代だとかなり多い。カミングアウトもできない話だってあるくらいだ、彼自身が言いたくないことはもしかしてそれなのではないだろうか?
私が独りでに考えていると、普段見せない憂いた笑顔を向けた。
「そういうのじゃないよ~、なんだろうな。イメチェン?とは違うような・・・」
「あ、新しい自分を見たかっただけだと思う。退屈で仕方なかったからさ、せっかく上京してまで大学始めたのに、高校生の時と何ら変わらなかったからさ」
そこから、女装を始めたきっかけを彼は話し始めた。周りには、他のお客さんがいる状態の中で全く耳に入っていないように話し続けた。
高校生の時はつまらなかった、だからこそ大学に進学したら生まれ変わりたいと思っていたのに変わらない生活を送っていたことにある時、気づいて自分なりに新しい姿を模索した。その表現の一つとして出た答えが女装することだった。
「あの写真が生まれるきっかけってのはそういった経緯があったんだね」
「うん、、、あのさ!このことは誰にも言ってほしくないんだ!その、きもいとか言われたくないし皆から嫌われたくないからさ、、、」
言い終わるにつれて語尾が小さくなっていく。それもそうだろう、赤の他人ならまだしもゼミの友人にばれてしまっているのだ。大学は高校と比べて広まったりしても、そこまで拡散はされたりしない。ただ、ゼミという少人数クラスなら話は別のなのだろう
「そんなことしないよ。君島くんの趣味の話じゃん、誰にも言わないけどその代わりに一つお願い事があるんだけど・・・」
「な、何、、、??」
「女装した君島くんと遊んでみたいな~、てか、私にもメイクさせてよ!」
「・・・は?」
私もちょうど、退屈していたのだ、こんな美味しい出来事はやってこないだろう
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