待ち人来るか

犬屋小烏本部

第1話雨の中

雨が降って、それが大雨だった。公園の遊具の中に身を潜めて、雨が止むのを待った。

雨はどんどん強くなり、膝を抱えて遊具の中で小さくなった。もう、そんな歳ではないのに。

手元には傘などなくて、ただその雨が止むのをひたすら待つしかなかった。

雨は止まない。どんなに待っても空から光が差してこない。

雨が止まない。どんなにどんなに待っても、帰り道を戻ることができない。


そんな夕暮れの時間を、あなたは覚えているだろうか。


たった一人きりで、雨が止むのをひたすら待ったことは、なかっただろうか。

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