第2話

 2話


「ここです。」


 そこは喫茶店から徒歩10分くらい歩いた所にあるお店だった。見た目からして怪しげで、俺とは縁がなさそうな無さそうなお店だった。


 階段を下りる。

 行った先はクラブなんだろうなと予想してしまうほどの見た目。


 入ったことは無いけど、こういう雰囲気は嫌いではないのでいつか入ってみたいと思っていた。     

 だけど、こんな機会に入る事になるとは。もう少し華やかな、雰囲気で初めてを迎えたかったものだ。


 自動ドアではなく、結構思い扉みたいで俺が開けようか考えもしたが清美さんを背負っていることから、その気遣いは出来ないのであった。

 でも、気遣いをするまでもなく、軽々その扉を開けているところを見て、慣れているんだな〜との感想がこぼれる。


 入る途中でその扉を見てみると俺の予想通り重そうな見た目をしている。

 扉は防音をする為か分厚く重い設計になっていた。

 緊張しながら、その扉をくぐると、なぜか何の音も聞こえない。


 想像では洋楽が化かすかなっている事を思っていたのだが。・・・・もしかして清掃中だった?いや真っ昼間だから全然ありえるけど。


「仁美さ~ん!!」


 その声はいつもの様に。そんな雰囲気で、でも友人が気絶しているから焦っているようで。


「・・・だれだい?」


 置いてからひょこっと顔を出したのは・・・ぱっと見でわかる美人さん。思わず男性特有と有名な「一目ぼれ」をしそうになるくらいの顔面偏差値。


 そんなひとが顔をだしてこちらを確認した。

 誰が来たのか声で何となく分かっていたのか、無造作に、客を相手するような雰囲気無しにこっちを向いたが、想像とは違い俺がいた事から、どこかスイッチが入ったのか。


 一瞬で歩き方が変わった。


 だけど、俺が負ぶっている清美さんの事に気が付いたとき、その足取りは変わりこっちに急いで来た。


「なんでこの子寝てんの?」


 体は焦っている感じであるが、なぜか声はさっきの声の感じから何も変わっていない。・・・・驚いているのか、焦っているのか。全く分からない。


 でも、清美さんの様子を見ていることから、気になって入るようだ。


「清美が転びそうになった時この人が助けてくれたんだけど、その時の衝撃で気絶しちゃって。どうしたらいいか分かんなくてここに連れてきたの。」

「・・まあ、外傷はにみたいだし直ぐに起きると思うから、奥の部屋で寝かしときな。」


 なぜか気絶する事に慣れているかのように、もしくは対処を知っているかのような感じで、介護をしていた。


「あんたもありがとね。この子結構重かったでしょ。」

「いえ、重さなんて気にならなかったですよ。」

「・・まあ、お茶でも出すからそこで待てな。」


 ・・・いや~。何ていわれるか少し警戒していたけど何にもならなくて良かった。もしかしたら、俺の事を誘拐犯だと勘違いして、警察に電話をしちゃうとか有るかと思っていたけど・・安静にしていて良かった。


 ・・・まあ、お茶を出してくれるって言う事だったから、それだけ貰って帰ろうかな。あんまり長居すると迷惑だろうし。


「はい、コーラでよかった?」

「あ。ありがとうございます。・・・大丈夫でした。」

「おかげさまで。何とも無かったよ。・・・ありがとね。」


 ・・・はっず。いや、今までありがとう何て言ったことも言われたこともないから、受け取りあかたというか、消化の仕方が分からんのだけど。


 まあ、それでも良い事をした感じが実感できて嬉しいんだけどさ。


「・・・あんたはこう言う所に来るのは初めてなの?」


 こう言う所?・・あぁ。クラブみたいな雰囲気の事かな?そう言えば、あの子たち知り合いの店って言っていたけど、良くここにきているのかな?


 興味があるかと聞かれればそこまで無いけど、


「中に入ったのは今回が初めてです。さっきの人たちは良く来るんですか?」

「あの子たちは、ダンスの練習にたまに来るよ」

「ダンスですか?」


 ダンス?ダンスって小学校の時やらされた大勢で踊らされるあれの事かな?人前に出る事が苦手だったから緊張しちゃってちゃんと踊れなかったんだよな。

 そのおかげで、一番目立たない所で踊っていたし。


「何を想像しているのか分からないけど、あの子たちはストリートダンス。どこでも踊れるダンスが好きみたいだよ。即興も出来るみたいだし。」

「え、即興でダンスが踊れるんですか?・・・そんな直ぐに振付とかが思い浮かぶ気がしないんですけど。」


 即興って、知らない曲でも踊るんでしょ?無理でしょ。

 だって、どんな音楽か一回全部聞かないと分からないだろうし、それにそのその流れた曲に振付が合わせられるかどうか。

 俺だったら数週間は欲しいんだけど。


「まあ、それは練習するしか無いだろうね。ストリートダンスにしかない独自の感性が合るんじゃないかな?・・・私はダンスはやってないから良く分からないけど。」

「へ~。」


 そんなもんなんだ。

 そんな風に落ち着いていると、このお店の入口がガシャンっと開いてそこから大きな声が聞こえてきた。


「清美ー!!!大丈夫か!!!」


 野太い声だが、その声だけで分かるくらい心配をしているようだ。・・・それにしても、親にちゃんと連絡はしていたのは聞いていたが、来るのが速いな。


 もう少しかかるのかと思っていたけど。


 その声に反応して、いま目の前にいる仁美さんは対応をするために、行ってしまった。

 1人になってしまった。


 ここにいてもやる事は無いし、そろそろ帰ろうかな? あまり知らない人と話すのは得意ではないし。


 と思いながら軽くスマホをいじっていると、なぜか奥の方から怒鳴り声が聞こえてきた。・・・え?心配して来たんじゃないの?なんで怒っているの?


 ・・・俺が関係している事かも知れないから行くか。俺は従業員の用の通路と思われる所に入り、怒鳴り声が聞こえる方に行く。


「大丈夫ですか~。」


 そうゆったりした感じでそこの部屋に入ると、そこではなぜか清美さんとさっき来た、男性が言い争っていた。だが、俺が入ってきた瞬間その言い争いは一瞬だけとまった。


 なんなんだろう?と思っていたが


「お前はどう思う!」


 俺に飛び火したみたいだ。

 え~。すっごくめんどくさいんだけど。・・・何の事を言っているか分からないし、それに俺をその言い合いに入れないでくれ。


「えっと・・・なんの話をしているか分からないので最初から教えてもらえますか?」


 でも、この中に入ってしまったのは後悔はするが、俺が入って行ったのだ。言われた事はした方がいいんだろう。??


「こいつがダンスをやるっていて聞かないんだ!ダンスは金にならないからやめろって言ってんのに」

「私は! お金のためにダンスをやっているんじゃないの!!」


 は?本当に何の話をしているの?

 途中で言い争いに変わったから全く分からないんだけど。


「えっと・・・まあ、まだ未成年なんですから好きにさせたら良いんじゃないんですか?」


 俺もだけど、まだ未成年なら色々な事を経験した方が良いと思うし、そんなに窮屈に色々な事を縛らなくても良いんじゃないかな?

 それに、ダンスは体を動かすから健康にいいだろうし。・・・俺みたいに毎日家でゲームするような人とは比べるほどもない程。


「ダンスは世間的にイメージが悪いんだよ。・・・やるならバレーとかもうちょっと真面なスポーツをやってもらいたい。」

「え?ダンスってイメージ悪いんですか?」


 あまり世間の事を知らないからなのかもしれないけど・・・うちの高校にはダンス部は有る、、そこまでイメージが悪いとは思った事はないな。


「・・・それは最近の事だ。前までは、ダンサーの格好をしているやつ、俺みたいな服だ。こういう恰好は不良とか、怖いってイメージがあるんだよ。

 それに、こいつがやっているストリートは外来の文化だからか、タトゥーが結構容認されているから。ほら、タトゥーを掘っている奴と絡んでいる奴には近づきたくないだろ?」


 あ~そう言う感じか。

 確かに、目の前のおじさんの服装は結構いかついというか、こういう系の服装はなぜか非難してしまいそうになる。俺は着ないし。それに、タトゥーは親としては嫌だよな。


 タトゥーは悪い事ではないっていう声は確かにあるけど、文化的に日本は無理だろう。おれも、服装と同じでタトゥーを掘っている人には近づきたくない。もしかしたら、タトゥーに関しては服装よりもだめかもしれない。


 友人だとしてもラインをブロックするくらいはする。だって犯罪には巻き込まれたくないから。


「それはそうかもしれません。」

「・・・でも!私はダンスをやりたいの!マイケルみたいな凄いダンサーになりたいの!」


 夢を持つことは良い事なんだけどな~。

 俺には判断が下せないな。・・・ダンス未経験の俺がなにか言える事ではないし。それに、割とめんどくさい。


 だって、子供としては夢中になれる物があって、それは学校でも教育として取り入れられている物だけど。


 親としては昔のイメージがこびりついているんだろうな。確かに娘が不良になんてなって欲しくないだろうし。間違われても欲しくない。

 それに、このイメージは親の世代を中心としたものだし、就職には不利になるのではないのか?もしかしたら、未来を潰してしまうのではないのか?と。


 子供は輝かしい未来を。親は残酷な現実を。

 そんな家庭内で決めてくれと言いたいような・・・そんな事お前らが決めてろ!!と大きな声で言いたい。


 ・・・あれ?


「その服は?・・・もしかしてダンスをやっているんですか?」


 その親が着ている服。さっき説明「ダンサーはこんな服を着ている」って出されたけど、その服を着ているこのひとは・・・・



「あ゛、俺か?ダンスをやっているよ。」

「」


 ・・・なんなのこの人。自分がやっているのに、子供にはやるなっていうの?!

 はぁ?




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