大人はうそつき

 前におばちゃん(ママのおねえちゃんだ)が、みかちゃんとだいごくんと一緒にプールに連れてってくれたことがあるんだけど(みかちゃんとだいごくんはおばちゃんの子供で、ボクにとってはイトコになるんだって)、おばちゃんがお金を払うところで、

「大人一人、小学生一人と幼児二人です」

なんて言うんだ。


 だから、ボクはあわてて言ったんだよ。

「おばちゃん、だいごくんも小学生じゃない。だから小学生二人だよ」

おばちゃんは慌てたみたいに笑って、

「あら、そうだったわねぇ。もう小学生だった」

って大人一人、小学生二人、幼児一人でしたって言って、お金を払ったんだ。

 ボクは、だいごくんはおばちゃんの子供なのに、小学生か幼稚園さんかおぼえてないのか。変だなぁ。って思ってた。


 家に帰って、おばちゃんはママにそのことを報告してさ。ボクは、てっきり、ママに偉かったわね、ってほめられると思ってたのに、ママは困った顔して言ったんだ。

「はる、そういう時はね、子供は黙ってなさい」

で、おばちゃんが、ママにさ、

「小学生になるとさ、入場料500円かかるの。幼児だったら無料なのにだよ? だいごなんか一年生だし、背もちっちゃいから、余裕で幼児でいけると思ったのにさぁ、はるったら」

って言うの。笑ってたから、本気で怒ってるわけじゃないんだろうけど。

「子供は正直なのよ」

ママも笑いながら、そう言った。

 子供は正直。子供は正直。じゃあ、やっぱり、大人は嘘つきなのかな。



 おばあちゃんが幼稚園のお迎えに来てくれるときは、いつも、おばあちゃんの家に寄って、おやつをもらって、おばあちゃんといっぱいお話して帰るんだけど、今日はそうはいかないんだ。


「はる? おやつ食べてかないのかい? はるの好きなプリン、あるんだよ?」

プリン! ボクの大好物だけど、いいや、ぼくはもっと急ぐことがあるんだよ。

「ぷ、プリンは、冷蔵庫にとっといて。ぼく、今日、忙しいんだよ」

「そうかい。はるは何が忙しいんだろうね。じゃ、おばあちゃんも急いで、はるを送っていかなきゃね」

おばあちゃんはそう言って、ボクの家まで送ってくれた。

「おばあちゃん、ありがとう~!」

そう言うと、ボクは二階へかけあがった。おばあちゃんにはわるいことしたかな。つぎに会ったら、「ごめんね」って言おう。そう思いながら。


 実はパパが、「こども百科事典」を買ってくれたんだ。それが昨日届いて、もう、ボクは嬉しくて、ページをめくりながら、「うぉ、すっげえ~」「へぇ~そうなんだ~」って言って。


 パパは、そんなボクを見て、楽しそうで、ママも台所でニコニコ笑ってた。

「はる、いいか? 百科事典にはな、はるの知らない、いろんなことが書いてある。はるにはすごく楽しいもんだと思うよ。だからさ、幼稚園では先生の言うことをちゃんと聞いて、外遊びの時間はちゃんとお外で遊びなさい。家に帰れば、お前にはこんなにたくさんの楽しみがあるんだからな」

って、パパが言って、ママもうんうんってうなずいてた。だからボクは、パパの言うとおりなんだな。って思って、

「うん。わかったよ」

って答えた。


 ホントはよくわからなくて、「?」っていう気持ちが頭のどっかにあったんだけどさ。

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