少しふしぎな小話集

深山はり

「かやちゃん」

祖父の初恋は小学校に上がる前の頃だそうだ。

相手は「かやちゃん」という名前で、気がつけばよく家の庭に遊びにきてた子だったという。

ちょっと不思議な子で、決まって姿を表すのは、大人が農作業や仕事などで留守にし、子供たちだけが家にいる時間帯だけだったらしい。

まぁ、思えばかなり怪しげなんだけど、祖父やその兄弟たちはまだ子供だったからか全く気にせず、一緒にかくれんぼをしたり、鬼ごっこをしたりして仲良く遊んだそうだ。

祖父の家はいわゆる古民家で、祖父が子供のころは立派な茅葺き屋根だった。

でも茅葺きって囲炉裏やかまどを使わなくなるとすぐに痛むし、いろいろと維持が大変なんだよな。

だから、祖父の家もあるときトタンを被すことになったらしい。

トタンを被せることが決まってしばらくすると、いつものように遊びに来ていたかやちゃんがすごく悲しそうな顔して「ばいばい」って言ってきたそうだ。

それから、かやちゃんは祖父たちの前から姿を消したという。

祖父は「かやちゃん」は、もしかして「茅(かや)ちゃん」で、茅葺きの精かなんかだったのではないかと懐かしそうに言ってたな。


自分には野望があるんだ。

金貯めて、祖父宅の茅葺き屋根を復活させるんだ。

調べたら茅葺きって新築は無理らしいけど、なんかトタン外すのはOKらしいので。

もし、トタンを外したら、かやちゃんがまた祖父宅に遊びにきてくれんかなぁって思ってる。

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