第19話 フレイヤ女王の誤算(後編)

その時だった。


「緊急!緊急っ!フレイヤ女王様!大変です!」

いきなりあり得ないものを見たような形相で衛兵が駆け込んで来た。


「無礼であるぞ!」

「まあよい!どうした?早く申せ!」


(この感じ……半年前の大魔王軍襲来時と同じ感覚がする!まさかと思いたいが……)

フレイヤ女王の顔に焦りが滲み出ていた。


「古代ダークエルフ迷宮方面からダークエルフ軍が攻めて来ておりますっ!数は、確認できるだけで3万はいると思われます!」


「なんですってぇ!?」

フレイヤ女王は、玉座から立ち上がり、らしくなく大声で叫んだ。


「ひぃっ!?」

今まで縮こまり黙っていた桜花は、ダークエルフという言葉にビクッっと反応し、フレイヤ女王の大声でさらに縮こまった!


(古代ダークエルフ迷宮からダークエルフ軍が……桜花が守護していたモノって、もしかしてダークエルフの封印!?)

「ああぁぶっ!う、うぅ!?」

アーネが、大声で叫びそうになるところをルビが口を塞ぎ制止した。


(ルビぃ!?)

「言うなっ!今それを言うと俺達の立場が大変なことになるぞ!」

ルビもアーネと同じ事を思いついたようでアーネの耳元で囁いた。


フレイヤ女王は、焦りながらもルビに問う。

「くっ!こんな時に!ルビ、その宝玉は、何か特別な事を語ったか?」


「え?い、いいえ。ユニークスキルのこと以外は特に。過去の記憶を持たないただのボケた役に立たないサポートアイテムです。それに巨乳好きで困った奴です。」

ルビは、返却せずに済むようにできるだけタマを卑下してみようと試みる。


「おいおい。そこまで言うか?おっぱい同盟を破棄するのか?」

「そ、そんな同盟など元からない!」

ルビは、タマの発言に顔を赤らめ、全力否定する。


「……過去の記憶を持たないと?何も憶えていないのだな?」

「そのように認識しております。」


「そうか……よし!とにかくだ!今はダークエルフ軍を殲滅する。ルビは、その『レベルMAX勇者召喚』で迎撃を頼む!」

「え?……は、はいっ!」


(嘘だろ嘘だろ?レベルMAXの勇者を召喚できても俺自身は最弱なんだけど!遠距離魔法が命中すれば爆散するくらい弱いのですけどぉ!)

ルビは、アーネを見つめ助けを求める。


「ふぅ……心配ないわ。あんたは私が守るから。」

(マリアンヌ様との約束だもの!)


ルビは、アーネの目に決意に満ちた何かを見た。

「アーネ?」

(情けないな俺……)


「ルビよ。心配するな。お主のMPは9万まで回復しておる。ということは、最大でレベルMAX勇者を8人は召喚できるということじゃ。」

「うん?1人勇者召喚は1万MP消費だから9人じゃないのか?」


「それは駄目じゃ。絶対にMPを0にするでないぞ!動けなくなるどころか下手をすると死んでしまうぞ!」

「そ、そうなのか?……危なかった。そういうことは早く言ってくれよ。」


「すまんの~なんせ『ボケた役に立たないサポートアイテム』じゃからな~」

タマが嫌味たっぷりに言ってくる。

「うっ!あ、あれはだな~」


「ルビっ!何してるのよ!早く行くわよ!桜花もポーション運びでも何でもいいから手伝って!」

アーネが、謁見の間の外からルビと桜花を急かす。


「お、おうっ!」

「わ、分かりました。」

2人は、アーネと共に城壁へと向かったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る