第3話 支援物資は『クッコロ系』
大量に届いた支援物資。
水以外はほぼ無用の長物となりました。
喉が痛くなければ、きっと色々できたとは思うんですけどね。
そう、喉がとにかく痛かったんです。
水どころか唾液を飲み込むことも出来なくて、水を飲まなければと思いながらも、痛みに耐えられなくて我慢の日々。
何度も口を濯いでわずかに残った水分を飲み込む日々。
発症四日目には体重が五キロ減っていました。
お腹空いたよー。
喉渇いたよー。
でも飲み込めないよー。
ちなみに処方されたカロナールは、熱は下げてくれたけど喉の痛みは消してくれませんでした。
ついでに一年以上患っている肩筋肉周囲炎の痛みは倍増しました。
ちっ、ようやく治まってきてたのに。
面白かったので、と言うか、面白さを見つけなければ辛くてやっていけなかったと言うのが正しいですね。
支援物資の写真を友人たちに送りつけました。
ホテル療養になった知り合いがかわりに送って来たのは全てお弁当。
そしてなぜか絵面が茶色い。
「あきたよー」
と言うコメントにはお気の毒と返しておきました。
野菜不足にならないよう毎食野菜ジュースが配られたんですって。
それならミニサラダとかつけたらよかったのに。
一回だけ有名料亭のお弁当が出たそうです。
薄味でホッと一息付けたとか。
次からはやっぱりガテン系のお弁当で絶望したって言ってましたね。
「あら、私これ全部食べられないわ」
そう言ったのは別の友人のお母様です。
一型糖尿病なので血糖コントロールが難しく、炭水化物は最低限で糖質制限も厳しくしているそうです。
糖尿病向けレシピ本は一切役立たなくて、出来合いの調味料も大抵糖分が入っているから、ご本人の毎日の食事も砂糖やみりんなどは一切使わないんだとか。
「お塩とお醤油と胡椒があればなんとかなるわよー」
出汁は鰹節からレンチンで取れるし、コンソメは週に一度コトコト肉を煮込んで百均の製氷皿で冷凍して保存してると聞きました。
そこまで頑張っても、同じ物を食べていても、日によって血糖値がガンと上がるんだそうです。
確かにそれだとあの支援物資は無理かなあ。
そうか、これが「くっ、殺せ ! 」状態ですね。
「一型は遺伝だから、発症したら親の因果が子に報いと思うしかないのよ」
だからもし陽性反応が出たら、死ぬ前にシェー〇ーズでピザとパスタとポテトの食べ放題をしに行くの。
炭水化物オンリーですね、ス・テ・キ !
いや、ダメでしょう、不特定多数のいるお店なんて !
「冗談よ、冗談」
彼女の凄いところは、食べてはいけないものの代替品を考えないこと。
これだけなら食べても大丈夫ですよと言われても、そんなものには目もくれない。
「血糖値が上がる ? 食べるのを減らせ ? だったら最初から食べなければいいじゃないの」
もう悟りを開いてますよね。
そんな彼女も昔はプチフールをバクバク食べていたそうですが、食べたら命が危ないとわかったらきっぱり縁を切ったそうです。
「お酒も甘味も三日取らなければ諦められるわ」
意思の人。
だから私も、今は食べられないし水も喉を通らないけれど、そんなのは後で回収すればいいよねって考えられるようになりました。
悟りまではいきませんでしたね。
どっちかと言えば諦めの境地 ?
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