記録No.8 到着、戦闘

3時間ぐらいゆったりのんびり星空の旅を楽しんでいると、闇の中に一筋の光が現れた。

監視塔の光だ。

こちらに無線を送ってきていた、応対は少佐がしている。

近づいていくとそこには、ゴッツイ建物と格納庫、そして前線に近い基地特有の補給所があった。

この基地に来たのは初めてだが、この設備自体を見るのは二回目だ。


「あぁ〜…やっぱり俺はここの方が落ち着くなぁ…」

「戦闘狂の末期発言やめとけ〜、ルース」


ふははは、と複数名のパイロットが笑いあっている。

俺は名簿を取り出して、照らし合わせていた。


「…ルース・ジャッカル、ブラッカ・ジャンク、ダリル・マック…」


読み上げた順に撃墜数が高い。

600、598、400。

その他パイロットも撃墜数が多い。

さすがは前線兵士、候補生如きじゃ敵わなそうだ。

俺が真面目に照らし合わせている中、無線は穏やかな雰囲気だった。

まぁ、最前線付近のこの場所でそんなことが続くわけがあまりないが。


「…総員、戦闘準備、第5種先頭配置」

「「「了解ッ!!」」」


アラートが声を上げた途端に全員が位置を変えた。

俺を除いて。


「大尉は警戒しつつ飛行してください、敵発見の合図は出せても、敵の攻撃をいちいち伝える訳にも行きませんから」


随分と優しい口調で少佐は俺に告げてきた。

あとどっかから舌打ちが飛んできた。

嫉妬かなにか知らないが、文句は少佐に言って欲しいもんである。

そして、


「…もう敵見えてますよね?」


闇夜の中、レーダーにはまだ写ってないが、視界内、というかメインカメラ内に敵機体が見える。

まぁ見えるのは、相手のメインカメラの光だけだが。


「おいおい〜、イキるんじゃないぜ候補生〜」


少々笑いが起こる。

イラッ…


「…少佐、1人であれ片付けてくるので突撃許可をください」

「…正気ですか?相手見える限りでも二十機三十機はいますよ?」

「えぇ、問題ありません…って、少佐も見えてたんですね…」

「もちろんですよ?遠距離射撃でもして、大尉にカッコつけたかったのですが…大尉は可愛くないですねぇ」

「…行っていいんですか?」

「つれませんね〜…まぁ、いいですよ、大尉のことをバカにしている隊員もいることは事実ですから、その評価をひっくり返してください?」

「簡単にやられるほどやわじゃありませんので、ご安心を」


さて、フル装備の実力を見せにいこう。

俺は無線を切って、操縦桿を前に倒した。

途端に機体のバランスが少し崩れるのだから、微妙に出力調整を間違っている気がする…


「システム、起きてるな?」

「はい』

「右翼側の出力を調整してくれないか?微妙に狂ってる気がする」

「…よく気づけましたね、合っています。しかし、右翼側の問題、これは1度降りないと直せないものです』


詳しく聞くと第6バーニアスラスタの経年劣化だそうだ。

気づけなかったとは俺もまだまだである。


「ですがパイロット、まだパーツには『オーバーシュート』モードを発動できるほど余裕があります。』

「ほう、ならいいか、じゃ遠慮なく行こう!」


出力調整器をベタ踏みにして、スラスタに雄叫びを上げさせる。

と同時に、俺の手は装備スロットに触れ、『ロックオン式対空ミサイル』を選んだ。


「さぁ、パーティーと行こうじゃないか!」


ある程度的に近づいた途端、後ろでなにかの破裂音がした。

ちらっと後ろを見ると、そこには通信妨害用のスモークが炊かれていた。


「…ジャミングか?…おおっと、先制攻撃か」


余裕を持っていたので、急な攻撃にも対応出来た。

そしてこの砲撃によって、敵の位置があらかた割り出せた。

機体をコマのように一回転させ、


「ロックオンアンドファイヤ…」


肩部に追加したミサイルを全弾発射ブッパした。

すると、相手はまさかこんな攻撃が来ると予想していなかったのだろうか、かなりガサツな散開をした。

ただまぁ、連邦製の武器を舐めないでいただきたい。


「反応が遅れた機体5機…追加のミサイルのサービスはそいつらでいいか、ポチッとな」


肩部ミサイルの残りを全弾放った。

桜のように美しい色ではないが、空中に白い枝垂れ桜が完成した。

見物するならとても良い偶然である。

ただまぁ戦闘中にいちいち確認する暇があるわけないので、それがちゃんとディーコンの目に入ることは無かった。


「あと何機だー?」

「80機』

「…何だと?」

「先程増援部隊が到着していた、残りは約80機だ』

「説明どうも」


80機かぁ…

俺の最高戦績の4倍…

そして『スピード・スパイク』の装備は普段の12倍…よし、行けるな。


「パイロット、装備が12倍だからといって勝てる保証はありません』

「人の思考を当ててくるな、AIだろお前」

「長い付き合い、というものなので分かります』


AIが何言ってんだか…


「んじゃあその付き合い長いAIさんよ?次に俺がしたいことを当ててみな?」


システムは何も言わず、射撃兵装全てを起動させた。

ミサイルポッド、レールキャノン、機銃、ブラスター、全てが目覚める。


「…分かってらっしゃる…」


俺もロックオンを始めた。

相手はいまだ隊列を整えている。

さて、隊員の方々にお見せしよう━


「発射準備完了』

「じゃ姿勢制御に回ってくれ…発射!」


━フル装備の実力を。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る