記録No.2 敵エース登場

「ラストォッ!」


コクピット部分に蹴りを入れ、


《このっ!?》

「アタック!」


ゼロ距離ブラスターをお見舞いした。

敵のコクピットが貫かれる。


《ぐわぁぁぁぁ!?》


心の中で手を合わせ、魂の安寧を祈った。

罪悪感はもうどっかに置いてきたので特に感じない、あと雨が洗い流してくれている。

さて、あとは戦艦を残すのみ、


「はぁ…管制室、こちらディーコン、敵1部隊撃破、援軍を求む」


とりあえずもうそろ来てくれないだろうかと思った。

疲労感がやばいのである。

だが、帰ってきた返答は、


「こちら管制室、援軍は送れない」


何ら変わらない、慈悲の欠けらも無い言葉だった。


「…勘弁してくんねぇかね…了解」


俺は呆れながら無線を切った。

俺の呆れにも構わず、チャフの有効時間は徐々に減ってきている。

あともう命令関係なく帰ってやろうかとも思った、が。


「ディーっ、援護するよ!」

「あぁ、やっぱり信じれるのはお前だけだよ、シャロ、マジで愛してる」

「っ///…ブレるからそういうこと言わない、座標頂戴、真っ暗な上に雨でで見えずらいから…」

「あいよ、とりあえず送るが、あいつらビームウォール持ちだからな、ジェネレータ…まぁ、ビームが通るようになったら合図を送る、また後でな」

「うん!」


可愛い可愛い天使様の御加護がその思考を断ち切ってくれた。

疲労感なんざどっかに飛んで行ったので、俺は戦艦に接近した。

さっきまでは戦艦の上方で戦闘していたので、そんなに距離はない。


《ビーッビーッ》

「チャフが切れたか…ん?」


戦艦へ降下中、なにか雰囲気の違う機体が出てきた。

俺はそいつを目で確認した。

そして、


「はぁ!?おいおい冗談だろ!?」


俺は自分の目を疑った。

この戦争中、機体どうしの白兵戦となる、その白兵戦の中、やはり飛び抜けた技量のやつは居るものだ。

双方に現れるその飛び抜けた技量の奴らをまとめて『エース』と呼ぶ。

帝国側、俺が敵と呼んでいる奴ら側には、

『刀使い《サムライ》永仁えいにん

『死神の悠鬼《はるき》』

『恐怖の女帝』

等、様々なエースがいる。

ちなみに連邦側、こちらには、『殺人的加速オーバードライブ・フライヤー』

が居る、唯一無二のエースだ。

俺の『オーバーシュート』システムの元を使っているパイロットだ、俺の憧れでも一応ある。

で、今回俺が目を疑った理由は、


「…永仁…」


永仁、という機体を使う、『刀使い』が、敵船の甲板に居たためだ。

おそらくだが…30機も落とした俺を確実に仕留めるために出てきたのだろう。

なぜこんなところにいるのか…


《…未確認機体のパイロットよ、聞こえているな》

「ッ!?」


なんと重く、恐ろしい雰囲気だろうか。

俺は久々に恐いと思った。


《大人しく引くが良い、貴様、正規のパイロットではないだろう》


…見抜かれていた。


「…そう思う理由は?」

《正規のパイロットであれば、そんな常軌を逸した軌道を描かない、その上、1人で30機を倒す方法など知らない、そしてなにより》


俺は戦艦の上部で止まった。


《1人で戦艦を相手しない》

「…生憎だな、俺はエースを狙ってるんだ」

《…なるほど、候補生か、ならば二度と戦場に立てなくなるようにしてやろう》

「どうやって見抜いてんだよ…」


俺の呟きの後、甲板が光った。

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