第2話─頼みの綱の鼓山
「はぁ……面倒くさいなあ〜これ」
夕食前に残した課題の前に顔を顰める私。
中々に難解な課題に悪戦苦闘中。そもそも課題なのにここまで難しくしなくてもいいじゃん。心の中ではそうぼやきつつもやらねばならない。
「もうあいつに聞いてみるか、時間の無駄だし」
そう呟いたあと、徐に携帯を取り出し私の連絡網から助けを求めた。意外にもそいつは数コールで電話を返した。
「もしもし、私だけど」
「どっした? まさかアンタに男ができた? それとも人肌が恋しくなったのかなぁ?」
声の主は飄々とした感じでこう答えた。
「そういうことじゃないよ。課題が分からないから教えて欲しいの」
「まあそんなことだろうと思ったよ。その様子だと数学のプリント、それも微分あたりかな?」
「……やっぱりあんた超能力者かなんか?」
「ふふっ、さあどうでしょうねぇ。少なくとも私は君を昔から知ってるからね」
そうあっけらかんと返すのは私の古くからの友人、
事あるごとに厄介事を持ち込み、いつも私を翻弄してきた。それと同じくらい彼女に助けられたのも事実であるが。彼女の助言は確証はないが、的確である。こうやって今回のようにお告げに頼るのは初めてではない。
「まあいいや、いつものことだし。で、どうやったら解けるのこの問題?」
「まあまあ、まずは問題送ってくれないとお話にならないよ」
至極ごもっともである。携帯のカメラを起動し、件の問題を撮影、神草に転送を慣れた手つきで行う。やはり彼女は知っていたかのように、一瞬で応答が帰ってきた。
「ふーむ……対象を一点に絞り、次元を下げる。情報を整理し、判別せよ。自ずと道は開ける、なんてね」
「ただ単に微分しろということではないですねやっぱり。でもこの変数aをどうすればいいの?」
「目に見える形にすると何をすべきか見えて来ると思うけどなぁ」
「ふーんなるほどね」
彼女らしい曖昧なヒントだが、実は結構助かる。
「そういや今日は、やけに早く出たよね?」
教えてもらったヒント片手に考えながら、私はそう聞いた。
「まあそれは私の勘がってことで」
「用はたまたまね。いつも何やってるか分かんないあんただから身構えただけ」
「私をなんだと思っているのさぁ。まあ何と思われても私は別にいいけどね」
「別にそこまで危険人物とは思わないよ。ただちょっと勘が鋭すぎるだけで、そのくせ勉強も出来ちゃうし。時折神様かなって」
「神様ね。そう思ってくれるならありがたいかな。イメージはポジションなほうがいいし」
神草の言葉に少し引っかかりつつも私は続けた。
「あっ、うん。まああんたを今までずっと見てきたから慣れちゃったってのが強いけど」
「ふぅん」
談笑とも言えぬ会話をするのが、いつもの私達。だからと言って仲が悪いではなく、むしろ気を使わない楽にできる距離感である。
そうこうする内にも、なんとか解決の活路を見出していく。
「もうそろそろ終わりそう。あとは大丈夫かな」
「そんじゃ、そろそろ頃合いかな」
「あんたが元気そうで良かったわ。また学校でね」
「気が向いたらね。ふふっ」
そう言って彼女は電話を切った。学校でも神出鬼没で近く会えてないだけに、声だけ聞けただけでも良かった。私が会いに行かないのもあるが、それにしても気配すら感じない。
「さてと、早く終わらせなくちゃ」
物思いに耽りかける自分に喝を入れ直し、私は筆を加速させた。
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