通学中に怪我をしたら不幸中の最幸だった

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第1話

高校生になっても思っていたより変化はなくて、毎日学校だるいなぁと思いながらも、半分友達と話すことを目的に学校に登校する。そんな中学校からの延長のような三か月を丁度終えた。


一目ぼれだった。

恋愛なんてばかばかしい、友達なら男だけでいい、なんてことを思っていた俺の固定観念を一瞬で取り払われた。

出会ってすぐ別れたけど、俺の鼓動はそれから学校に着くまでの3分の間ずっと鳴り続けていた。初めは信じられなくて、信じたくなくて、気にしてないと自分に言い聞かせていたけれど、自分の気持ちに気付いてからは、


「一目ぼれなんて。結局は顔ってことだろ?」


なんて綺麗ごとを吐いて、ひとりでに満足していたころの俺が急に恥ずかしくなった。百聞は一見にしかずと言うが実際その通りで、この感覚は体験した人しか分からないだろう。


「お前今日なんかおかしくね?目の焦点あってないし。…………おーい」


「…………………え?いや、まじでやばいよなそれ」


「話聞いてないなら正直に言えっ」


手慣れた手つきで軽くチョップされる。


「いったぁー。なんだよおい」


「痛くしてねぇだろ。ってかほんとどうしたんだよ」


「何が?」


とりあえずとぼけてみる。こいつにはゆくゆくは話そうとは思うが、まだ心の整理ができてない状態で話すのはなんか恥ずかしい。


「何がじゃねえよ。今日なんか調子おかしいだろ」

「いや、そんなことは…」「あるだろ。学校着くなり机に頬杖たてて窓の外見だすし、俺がさっきの休み時間に話しかけても上の空だし」


「……………………」


どうやら失敗したみたいだ。こいつとは小学校の頃からの付き合いだからな。このままなんでもない風にしらを切るのは無理だろう。


「はぁ。やっぱばれるかー。別に話してもいいけどさぁ、なんもおもしろくないよ?」


このまま長引かせて話を終わろせようとしていたが、話さないと一生聞き続けるようなジト目で見てきたので恥ずかしい気持ちを抑えながら俺のめでたい初恋の話をしてやった。終始にやにやしながら聞いていた明人だったが、俺の話を聞き終わる頃には顔を真っ赤にして悶え苦しんでいた。


「なんだよ。そんなに照れたら俺まで恥ずかしくなるじゃん」


「……はぁ…はぁ……。だって先週まで、女に一切興味を示さなかったあの亮だろ?!何回か告られたことだってあるのに」


ひとしきり恥ずかしがった後に、まだ解せないという視線を向けてくる。


「まぁ同年代は子供っぽいからなぁ。あの人みたいに大人っぽくて美人でさらさらなショートボブで、そのうえ胸も……な?」


男同士だから許される暗黙の了解だ。


「分からないこともないんだけど、お前の場合はやっぱボブが入るんだな」


「あたり前だろ。ボブしか勝たん!」


昔から髪型にこだわりはなかったが、16年も生きていると好きな髪型くらい自分でも分かる。少し茶色に染められたあの人の髪は、顔が動くたびに艶やかになびいて俺の視線を奪った。まさにドタイプだったのだ。高校に着くまでの10分間、俺は明人の話に適当に返しながら彼女が別れ際に放った一言についてずっと考えていた。


「またね。」





結末まで書きます!

面白ければ星とハート宜しくお願いします。

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