グラブジャムンな関係

ひのはら

第1話


 17年生きてきた人生で、一番綺麗な人は誰かと聞かれればクラスメイトの来海くるみなぎだと答える。


 それくらい来海凪という女子生徒は綺麗だった。

 首がほっそりと長く、顔は片手で掴めてしまうのではないかと錯覚してしまうほど小さい。


 おまけにその小さなお顔にはバランスよく綺麗なパーツが配置されているのだから、女子生徒は誰も太刀打ちできない。


 繊細なガラス細工職人でも簡単には作れないであろう美しい造形。


 そんな彼女は酷く無口で、誰とも関わろうとしなかった。

 あの容姿でなければインキャと呼ばれそうな社交性のなさも、良いように捉えられて一匹狼と称えられていた。


 きっとこのまま卒業まで一度も会話もせずに、その先の人生でも二度と交わらないであろう存在。


 「……上村かみむらさん」

 「……ッ、来海…!?ちがくて、これは……」


 学校の最寄駅から乗り換えて、更に3駅いったところにある大型書店。

 持っていた本を咄嗟に後ろに隠すがもう遅い。

 

 「この世で一番綺麗だ」と胸を張って言えるクラスメイトと、どうしてか本屋の百合漫画コーナーで遭遇するなんて一体誰が想像出来るだろうか。

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