純文学なんて、書けなくて。

小坂あおい

プロローグ

 太宰治が嫌いだった。


 あの斜に構えた文章が、苦手だった。


 それと、小学生の時、国語の授業で使った資料集に載っていた、太宰治の顔写真に落書きしているのが先生にバレて怒られたから、尚更嫌い。


 それでも、読書家の父の薦めで太宰治の小説は昔から読まされ続けて来た。


 斜陽、人間失格、走れメロスだかエロスだか。


 正直何も面白くなかった。


 琴線に触れる事なんて、一切なかった。


 だけど、それでも、少なくとも彼の影響で、僕は、小説を、書き始めた。


 それは、とても浅はかな理由だと思う。


 それが、始まりだった。


 1度、物書きになってしまえば、抜け出せなくなる。


 目に見える情景が、描写表現になり、人の仕草を言葉で表してしまいそうな感覚になる。


 その感覚は、夢中とか、没頭とか、そう言う類の言葉ではない。


 じゃあ、その感覚にぴったりの言葉を探した時、それを上手く表現出来る言葉も、見つからない。


 ただ、1番近しい言葉で、表現するとしたら


 たぶん『呪い』という言葉が、最適なんだと、思う。

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