その喫茶店にはコミュ障で奇人な女子高生の店主が居る

 香笛春風(かふえ はるかぜ)は、養父に代わって喫茶店『ミニドリップ』を経営する女子高生である。コミュ障を自認し、どうにも人と距離感を置きたがる彼女だが、訪れる人々との交流する中で少しずつ成長していく。

 マスターが女子高生でコミュ障で、しかもかなり変わった性格の持ち主。キャラものかと思いきやそうではありません。春風さんの背景には重い背景があって、そのギャップが軽やかな物語へずしりと効かされているのです。こうしたお話はタイムリミットを設け、楽しさの裏に緊迫や悲哀を醸すことが多いのですが、だからこそ主人公そのものをもって醸す本作の仕掛けは本当におもしろい。そして主人公に焦点が合わされていることで、『ミニドリップ』という場でなければ出会うことのなかった登場人物と関係を結び、結果として彼女がどう変わっていくかも鮮明化され、ドラマとして際立っているのです。

 軽くて甘い読み口にはしる刺すような苦み、この極上の味をぜひご賞味ください。


(「喫茶店へ行こう」4選/文=高橋 剛)

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