第7話

 蝶番が爪で黒板を引っ搔いた時ような音をたてながらゆっくり扉が開かれていく。手が白くなるほどモップを強く握りしめる樋口の身体は緊張のあまり、小刻みに震えていた。


 部屋に入った瞬間、噎せ返るような血の匂いに神庭は吐き気を催した。 たまらず鼻と口を覆い隠すように手で押える。部屋の中は明かりがついておらず真っ暗で何も見えない。


 壁の照明スイッチを手探りで探し当てパチンと押し、室内がパッと明るくなった。各部屋は全く同じ間取りになっており、どの部屋にもテレビと冷蔵庫(冷凍室有り)が設置されている。


 窓際にはダイニングテーブル、それとテーブルとほぼ同じ高さの椅子。ドア側にはベッドが1つ。ここまでは良かった。しかしテーブル周辺の床には濡れたタオルが乱雑に放置されており、割れてしまったコップの破片が散らばっていた。


 そして神庭たちのいるドア付近の床の上には死体があった。首の無い血みどろの死体が真っ赤な海の中で力なく横たわっている。2人の絶叫が屋敷の中に響き渡る。


 それが惨劇の夜の幕が上がった合図だった。


 ☆★☆★☆★☆★☆★


 読者のみなさまへ

 物語の途中ですがここで一旦、休憩の代わりに古典的推理小説の作法に従って偉大な推理作家エラリー・クインが祖と言われている『読者への挑戦』を挟ませて頂きたく思います。


 親愛なる私の読者に求めるものは2つ。

 

 1.犯人はいったい誰か?

 2.どうやって犯人は密室殺人を遂行したのか

 

 これまでのお話からある程度犯人像は浮かび上がってくるかもしれません。

 お時間に余裕のある方はぜひとも挑戦してみてください。

                           K.Tより


 *注意

 ◇単独犯である。

 ◇隣の部屋で物音が聞こえて以降、鈴木は音に過敏になっていたためどんな些細な音も聞き逃すことは無い。つまり第二の事件は完全な密室殺人である。


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