第15話
放課後の教室。
午前で授業が終わったのだが、ここには人が集まっていた。
「呼んでないのに来たやつがいるんだが」
「いつでもどこでも、じゃじゃじゃん」
「相変わらず無表情なんだね……でも僕のために来てくれて嬉しいよ！」
「別に王子のためじゃない……」
「！？」
脱お
メンバーは、レイン、俺、セリカ、ステラ(なぜ)、ドリル(なぜ)。
まさかのAクラス全員が集まった。
「ちなみにドリルはなんで来たんだ？」
「あら、私が来るのはいけまけんか？」
「ううん、嬉しいよ！！」
「別に王子のためじゃありませんわ」
「！？」
再びレインは撃沈した。
すすり泣くレインの肩を擦ってやるが、嗚咽を溢すのみだ。憐れレイン、強く生きろ。
「私も変わった、ということですわ」
「外面取り繕っただけだろ」
「うるせぇですわ」
「ほら」
「しまった……っ」
俺の軽口に反応するようじゃまだまだだな。
まあ、でもちゃんとここに来るってことは、少なからず内面も変わったということだろう。
でも、からかいがいのあるままでいてくれ。
「これあたしいる……？」
「セリカさんも来てくれたんだよね……」
レインが感動したように……またすがり付くようにセリカを見た。期待しているのだろう。誰か一人は自分のために来てくれたのだと。
だがここで地獄に突き落とすのが俺の仕事である。
「セリカ」
「なに？」
「レインのために来た？」
「あんたに脅されただけじゃない。これっぽちも王子のためと思ったことはない」
「ぐふぅっ……うわあああ！！ みんな酷いんだあああ！！」
レインはうわぁぁ！ と叫び俺に抱きつく。
「やめろ鬱陶しいっ！ おいこら抱き着くな！ 元はと言えばお前の成績が良くないのが悪いんだろう……が！」
「ひぐぅ、親友が酷いよぉ」
無理やり引き離すとレインは目に涙を浮かべて俺を見る。くっそ、顔だけやけに整ってるやつは……。
「メスですわね」
「メス……」
「メス堕ち王子」
三者三様、綺麗にドン引きであった。
男として扱われたいなら、男らしく振る舞えよな。このメスが。
「時間が勿体無いから始めるぞ」
このままじゃ話が進まないと感じた俺はパンパンと手を打って号令をかけた。
レインは泣きながらも羽ペンを持ち、セリカはため息を吐きながら本を閉じてレインの元に向かう。ドリルは俺の足を踏みながら目の前に座り……っておいなにやってんだお前は。
「ふんっ！」
「うぎゃっ！ なにするんですの！」
「こっちのセリフだわ。なに足踏んでんだ」
「オホホ！ これ貴方の足でしたの。小さすぎて分かりませんでしたわ！」
わざとらしく高笑いをしたドリルはニヤニヤと嗜虐的な笑みを浮かべる。
「あぁ、ごめん。今踏んだのも足だったのか。丸太のように太くて分からなかったなぁ！」
「んなっ！？ 誰が丸太ですの！ お前を切り刻んで製材にしてやりますわよ！！」
「言葉のチョイスが悪辣」
「行動全てが悪辣なエスペラントに言われたくないですわ！」
「失敬な」
「じ・じ・つ、ですわ！」
言った切り、ふんっ、と鼻を鳴らしてドリルは机に向かった。これ以上話すことは無い、という意思表示なのだろうが、お前から話しかけてきたんだよな。
それはそうと、
「近い。離れろ。暑苦しい」
「嫌だ。離れない」
ステラが俺を押し退けて一つの椅子に二人が座っている形になった。
正直顔だけは無駄に整っているせいで気恥ずかしさが多少なりともあるが、それを見せると俺のプライドが粉々に砕け散る。
「私が勉強教えてあげる」
「別にお前に教えてもらわなくても普通に取れるんだが」
「でも私より低い」
「うぐっ」
「そして、ここ間違えてる」
「マジか……」
なし崩し的に俺はステラに勉強を見てもらうことになってしまった。
淡々としているが分かりやすく、悔しいが唸ってしまうほど完璧だった。
「～♪」
どこか機嫌良さげに見えるのは気のせいだろうか。
俺にはステラがよく分からない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます