第22話 07時54分

 現在は俺の家の外へと出たところ。いろいろ俺が秘密をばらしたこともあり。久梨亜の顔は赤い。だが――今は外。だらだら幼馴染ではないので――。


「今日もゴウちゃんと一緒に登校ー。嬉しいなー」

「……家出たら優等生キャラっか。さっきの騒動がなかったことになっているんだが……」 


 俺の横をご機嫌で久梨亜が歩いている。頬がちょっと赤いのも――嬉しい。ということでごまかされそうな感じである。まるで先ほどのドタバタは――俺の気のせいだったのか?という感じだが。まあ久梨亜はこうなのでね。家に帰ったらちょっと今日は怖いが――まあいい。新学期早々遅刻で目立ちたくないし。


「ゴウちゃんどうしたの?お話はお昼からたっぷり時間あるから聞いてあげるよ?」

「……家の中で揉め事は完結させておくべきだったか」


 やはり今日は帰宅後怖いな。

 にしても、沓掛久梨亜。基本は他人の目があれば優等生。勉強もスポーツも平均的に出来て、人間関係も問題なくさらっとしてしまう。だから周りからは――とってもあこがれの眼差しで見られている。家でのだらだらを誰かに見せてやりたい――と、俺はずっと前から思っているのだが――こいつ。必要最低限は学校以外では人と会わないのか。それとも普通の人は近づきがたいことがあるのか。なかなか休日とかに友人と出かけるって見ないんだよな。まあたまには出かけているが――ちなみに俺とはバンバン出かけてる謎もある。まあ親が仲がいいからそのながらで誘ってくるだな。

 外バージョンの久梨亜。中身を知らなければめっちゃ良い子なんだがね。そうそう自画自賛になるが。今日の俺パパっと久梨亜セットなかなかいいんじゃないか?先ほど俺のベッドにぶっ飛んでちょっと乱れたが――まあそれでもささっと家を出る前に整えてやったら。この状況。うん。俺――すごくない?誰か褒めて。久梨亜めっちゃ――かわいいと思うよ?ってか、ホントもう少し大人しかったらね。俺間違って久梨亜に告白していそうだが――今の久梨亜はね。うん。


「はぁ……テンション高いやつ早く行け。見捨てるぞ」

「見捨てたら泣きわめくからねー?そしたらゴウちゃんは近隣住民さんから睨まれるよー知らないよー?」

「迷惑すぎる」


 ちなみに今も――チラチラ視線はある。久梨亜と登校すると周りの視線が――なんだよ。ご近所さんからすれ違う人も。ほとんど一度はみんな久梨亜を見るからな。だからここで優等生久梨亜がめんどくさいことをすると――俺が社会的に死ぬ可能性がある。本当はめっちゃ見捨てたいのだが……外は外で大変である。


「泣きわめいちゃおうかな?」


 不敵な笑みを浮かべる久梨亜。


「やめろ」

「ゴウちゃんがみんなから見捨てられても私は居るからねー」

「久梨亜が居なければ、俺……平和なような――」

「そんなこと言うと泣いちゃうよ?」


そう言いながら泣きそうな表情ってそんなところで演技力出さなくていいから。


「やめろ」

「あと――帰ったらちゃんと私の部屋来ること。ここ大切ね。ゴウちゃん重要なお話」

「……」


 優等生バージョンでそんなことを言われるとちょっと怖いというか……こいつ今は優等生の表情とでも言うのか。微笑んでいる……先ほどのやり取りやはり恥ずかしいのか。まだ顔が赤い。つまり効果は結構あったみたいだな。


「——必要ないだろ?」

「あるからね?当たり前じゃん」

「誰か久梨亜を遊びに誘ってくれないかなー」

「全部今日は断るよー」

「普段から誘われてないからなー」

「誘うなオーラを笑顔で出すからね」

「……マジ?」

「さあ?」


 怖い怖い。外での久梨亜様怖いよ。うん。俺の知らないところで何か悪い久梨亜が出ているらしい。ってか、そんなこと初めて知ったのだが――って、もしかして久梨亜……今は笑顔。微笑んでいるのだが――さっきのやり取りかなり気にしてる?または――怒ってらっしゃるのだろうか……?ちょっと先ほどはやりすぎたという感じもあるからな。あれ?俺さすがにやりすぎた?そんなことを思いながらふと俺が久梨亜の顔を見ると――。


「何々?」


 いつも通りの優等生久梨亜の表情だった。うん。わからん。こういう時は――。


「いや、よだれ付いてたなーって」

「なっ!?」


俺が言うと慌ててカバンを――ってこいつ準備してないから鏡出てこないんだけどね。って――出てきたー。鏡は入ってるのかよ。


「——まあ冗談だけど」

「ゴウちゃん!」

「まあ間抜け感が外でも出ている方がいいかもな」

「何でー、恥ずかしいじゃん」

「間抜けと言えば、ホイホイ久梨亜とかあったからな」

「ちょ、それ昔の事だから。って、ほいほいはおかしいでしょ」


 久梨亜がワタワタ俺の腕を叩きながら文句を言ってくる。多分周りが今の光景を見れば――いつも一緒に歩いている男女がほほえましいことをしていると思うかもしれないが――俺はそんな気持ちにはなっていない。うん。久梨亜の相手をしているというだけだ。


「だな。昔昔。久梨亜は学校帰り。知らない人に声をかけられて――ついて行きかけたからな」

「あははー。あれはね。ちょっと昔。グイグイスカウトされて――初めてだったから。って、付いて行こうとはしてないよ?ちゃんと断ってたのに――なの。グイグイが強くて――」


 うん。また久梨亜の顔が少し赤くなったのだった。今日の俺、強いかも。っかそうか、こういう話題を出していれば自然と久梨亜は、俺を止めようと付いて来るので、ちゃんと学校に向かって進んで行くと言うね。これはメモメモだな。まあ今日だけだと思うが――毎日は効果ないんだよな。多分。でもそうか。俺が適当に歩いて行くより。久梨亜が気になる話題を出していれば俺が歩きながら話す。それだけで久梨亜は来るのか。うん。何で今までこれに俺は気が付かなかったのだろうか……。


「……ちなみに高校1年になった頃の話だった」


 いろいろ思いつつ俺は言う。うん。ここ大切ですよ。結構最近の話という。


「ゴウちゃん!バラしてる!年齢バラしてるから。さらっとばらさないでよ」

「めっちゃ最近というな。自分がかわいいことちゃんと理解しとけよ。全くホイホイ知らない人の話に乗ってよ」

「——」

「黙ったよ」


 俺の横で黙る久梨亜。顔がさらに赤い。過去を思い出してお静かになったようだ。静かになるのはいい事いい事だな。うん。

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