第19話 07時36分

「あれ?カバンが――久梨亜。通学カバンどこ置いた?」


 久梨亜の部屋に入ってすぐの事。まず一番先に見つかると思っていた久梨亜の通学カバンがなかった。いつものところに無かったのだった。


「あれ?いつものところに――」


 久梨亜がそう言いながら俺の後ろから来るが――あれ?という顔をすぐにした。


「マジかよ。やっぱり手ぶらでいいじゃん」

「だから嫌だよ!何でそんな恥ずかしい姿で学校行かないとなの!」

「だから朝から変なことをぶち込んでくるな!」

「それはゴウちゃんだよ!?」

「何でだよ!」


 どうもこの話。手ぶら。何も持っていかなくてもいいだろうという話になると頬を赤くする久梨亜。もちろん何を言っているのか俺は理解している。こいつがポンコツと理解していればすぐわかることだ。


「——あっ、ゴウちゃんもしかしてしてほしいの?」


 ほら、また馬鹿なことを言い出した。さすがポンコツ。アホの子。寝坊助である。


「——とりあえずカバンどこだよ」

「してほしいんだー」

「久梨亜?ふざけるな」

「あっ。ごめんなさーい」

「で。カバンどこだ?」


 俺が聞くと久梨亜はちゃんと考える?というポーズから――。


「ゴウちゃんが隠した?」


 そんなことを言ってきたが。もちろんそれはない。うん。ふざけたことしか言わないだろうな。と思ったがやはりだった。


「1人で行くか。じゃ、また学校でか」

「ちょ、ゴウちゃん見捨てないで。ダメだから」


 そう言いながら部屋の出口の前に立つ久梨亜。


「——っかマジで今日なら何も持たなくていいだろ」

「嫌だよーって、あっ!ゴウちゃんの部屋だ。そうだそうだ」

「何でだよ!来たのって――修了式?の時じゃなかったか?」


 俺は久梨亜の行動を思い出す。うん。基本俺が久梨亜の家に居る事の方が多く。久梨亜が俺の家に来ることは少ない――ってか俺が入れない。入れるとこいつ帰らなくなるから。って――確か最近久梨亜が来たのは――やはり修了式の時だ。つまり高校1年生の最終日。


「そうそう、その時に置いて――」

「いやいやさすがに部屋に久梨亜のカバンあったら気が付くわ」

「タンスの上見た?」


 さらっとそんなことを言う馬鹿。ガキ。


「——何でそんなところに置くんだよ、見るかよ!埃まみれだぞ」

「とりあえずポイって置いたんだよねー」

「ポイで置くところじゃねーし」


 マジでこいつダメだわ。俺の予想できない行動ばかりする……少し俺と久梨亜が久梨亜の部屋で久梨亜の通学カバンについて言い合っていると――。


「2人ともー。もう45分よー」

「マジか!?」


階段の下から久梨亜の母ののんびりした声が聞こえてきたのだった。思った以上に久梨亜の部屋で時間が経過してしまったらしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る