第11話 放っておいてくれないか

—1—


【阿部愛花、ゲーム続行不可能の為脱落。警察チーム残り13人】


 今度は愛花までゲーム続行不可能だと。本当になんなんだ、このゲーム続行不可能って。

 ガタンッ!


 何かが倒れる音と話し声が聞こえた。民家の方からだ。

 年数を感じさせる古い家で家のすぐ横に倉庫もある。どうやら空き家のようだ。倉庫もかなりボロボロだ。 


 トタン壁に穴が開いている。風でガタガタッと音を鳴らす。

 この音だったのか?

 俺は倉庫の中を覘いた。


「雅人! 翔子!」


 埃を被った倉庫の奥に雅人と翔子がいた。

 不思議そうな顔で俺を見る。


「どうしてここに?」


「どうしても何も雅人と翔子を探してたからだよ」


「なんで?」


 雅人が短い単語でズバズバと質問してくる。

 質問したいのは、こっちだ。


「これから先、捕まった俊介たちを救出したい。雅人と翔子も協力してくれないか?」


「いや。私たちにメリットがないもの」


「それにもう僕たちは、大人しくここで隠れてやり過ごすって決めたんだ」


「もう私たちには何もないの」


 翔子が血が付いた腕時計をギュッと握る。


「それってつとむのか?」


 勤は1日目の脱落者に選ばれていた。


「そうだよ。勤はあのメールが届いてから誰かに銃で撃たれた。それで、すぐに政府の人がきて勤の遺体を運んで行ったんだ」


「そうだったのか。浩也も死んだよ」


「そうなのか。このさっきから届いてるメールの脱落ってゆうのは、死ってことなのか」


「恐らく」


 ブーブーブー、ブーブーブー。

 五月と愛花と共に俺を助けてくれた樹からだ。


『はやとか?』


「そうだ。どうした?」


『やばいことになった! メールは見たか?』


「あぁ、見た。ゲーム続行不可能ってのが分からないが」


『五月と愛花は殺された。まさかこんなことになるなんて』


 殺された?

 誰が殺したんだ?

 クラスメイトの誰かか?

 それとも政府の奴か?

 何の為に。


「樹は見たのか?」


『うん。この目でしっかりと見た。体育館の外でだ。そりゃあ酷かった。足がすくんでその場から1歩も動けなかった』


「誰なんだ? そいつは?」


『あぁ、そいつは』


 ドゴッ。

 鈍い音が電話越しに聞こえた。


『はやと……気を付け……ろ』


 ドゴッ。

 ブロックか何か重量感のあるもので殴られたのだろうか。鈍い音がした。

 樹から誰が殺したのかを聞けないまま電話が切れた。


 ブーブーブー、ブーブーブー。


【古川樹、ゲーム続行不可能の為脱落。警察チーム残り12人】


 樹……。樹もその殺人鬼に殺されたのか。

 俺のクラスに人を平気で殺す奴なんていないはず。とは思いたいが実際に人が何人も死んでいるこのいかれた状況だ。

 誰がどんな行動を取ってもおかしくない。


「樹は死んだの?」


 翔子が携帯の画面を見つめている。その顔に生気はなかった。


「うん」


「も、もうやだこんなの」


 体育座りで顔を足に埋める。


「ゲームが終わるのをただ待っていても俺らが全滅するだけなんだ。翔子、雅人、力を貸してくれないか?」


 翔子と雅人に今かける言葉はこのセリフではないということくらい分かっていたが俺はこう言うしかなかった。


「放っておいてくれないか」


「わかった」


 俺は雅人と翔子を倉庫に残し、桃の家へ戻ることにした。

 ブーブーブー、ブーブーブー。


【本日のゲームは、只今を持ちまして終了です。お疲れ様でした】


 スマホの時刻は、18時だった。あんなに暑かった太陽ももう沈みかけている。

 ブーブーブー、ブーブーブー。


【ルールに従い、泥棒チームの以下2名を脱落とする。菅原まなみ、橋本加奈はしもとかな。泥棒チーム残り7人】


 まなみが脱落。こころと桃も一緒にいるのか?

 俺の心が徐々に壊れ始めていた。

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