第14話 人の振り見て我が振り直すとでも?

「実ちゃーん・・・・・・補習になっちゃったよ・・・・・・」

「お疲れ様」

冬休みも半分が過ぎた昼ごろ。日菜が泣きながら家に駆け込んできた。

「ていうか補習の通知が来るの遅いな・・・・・・」

「うちの学園は人数が多いから、補習の人を決めるのにも時間がかかるんだよ・・・・・・」

「だからって何で家に来たんだ? 私には何にも関係のないことだぞ?」

「私と一緒に補習に行ってください!」

「嫌だ」

それでも日菜は諦めず、ついには土下座をし始めた。

「おーねーがーいーしまーす」

「死んでも嫌だね!」

「何で! 私たちはどこまでも一緒にいるっていったじゃん! 永遠の愛を誓うとも!」

言ってない。結婚もしてない。

「よし! 実ちゃんが来てくれないのなら・・・・・・生徒会に頼んで、実ちゃんを停学にするよ!」

「職権乱用するなよ。そもそもお前生徒会に入ってないだろ」


「ヘックション!」

「警備委員長様? 風邪でございますか?」

副警備委員長が心配そうな顔で聞く。

「いや、大丈夫だ。それより早くこの溜まった仕事を終わらせねばな・・・・・・」

机に大量に乗せられた、大量の仕事の書類を前にがっくりと肩を落とす警備委員長なのであった。


「で、結局来てしまったよ・・・・・・」

「後で「うま○棒」買ってあげるから」

それ私の今月の稼ぎで、世界中に寄付できるぐらいの数買えるわ。

「じゃあ私は補習の教室行ってくるから。校内で色々遊んでてね!」

「はいはい。さっさと帰ってこいよ」

・・・・・・日菜と一緒にいないのに来た意味あったか?

「どうしよっかな~・・・・・・」

することもないので、とりあえず校内をぶらぶらと散歩する。

「おぉ、秋雨。いいところに」

「センセイ」

「これを倉庫に置いてきてくれないか? 鍵も渡しておくから、終わったら返しに来いよ。じゃあ頼んだぞ」

「は!?」

絶対仕事めんどくさくて押し付けただろ。生徒使いが荒い奴だな・・・・・・


天地学園 地下6階 倉庫

「広いな・・・・・・」

ここのもの全部出したら、野球できるんじゃねぇの? そもそもこんなに大きくした理由が聞きたいよ。

「よっこいせ」

これでよし。私は手をはたいた。

「・・・・・・ん?」

奥に謎の扉がある。そこから光が漏れており、誰かがいそうな気配がする。

「行ってみるしかないよな」

扉を開けた瞬間、私の目の前に飛び込んできたのは・・・・・・

『シンニュウシャ、カクニン』

「・・・・・・何これ」

戦国時代の足軽みたいな格好をした、人型のロボットだった。

『カクホセヨ』

「え?・・・・・・えぇ~!?」


「ふんふ~ん♪ 補習の手続き間違えていたなんて助かったよ。私じゃない別の人だったなんてね」

日菜は鼻歌を歌いながら廊下を歩いていた。

「おや? ここはいつも開いていなかったはず・・・・・・」

地下へつながる階段の扉が何故か開いていた。いつもなら閉まっているはずの扉だ。

(・・・・・・おもしろそう!)

「行ってみますか!」


「いやぁ~~!」

「何でお前まで来てんだよ!」

二人そろって追い回されていた。

「実ちゃんこれどういうこと!?」

「知らねぇよ~!」

何かもう、火縄銃向けられてるし。本気で殺す気だわこのロボット。

「あっ! また扉があるよ!」

倉庫のさらに奥深くに、また扉があった。

「これもうフラグなんじゃないか!?」

「行かないよりマシだよ! ここで殺されるより!」

・・・・・・うん、これ行かないという選択肢がねぇな。


「で、もう一回聞くけど、何でボクの場所が分かったんだい?」

はい。今の状況を説明させていただきます。

まず、謎の部屋に駆け込んだ私たちは、そこで小さな女の子を見つけました。日菜よりも小さいです。

その子に話しかけると、「・・・・・・捕らえろ」とロボットに命じ、ロボットに縄を巻かれ拘束されました。

で、今は女の子の前に正座させられています。もちろん縄で巻かれた状態で。以上です。

「いやー・・・・・・たまたまここに来ちゃったもんで・・・・・・」

「・・・・・・そうか。ただ、この場所を知られたからにはただでは帰せないな。忘れていってもらおうか。ちょうどこの前開発した記憶を消す機械があったから、それを使おう」

「は!?」

「記憶を消す!?」

おい・・・・・・この子頭おかしいのか・・・・・・? まず、『記憶を消す』機械って何だよ!?

「連れて行け」

「おい! 私は何もしていないぞ!」

「死にたくない~!」

「いや、死にはしないけどね?」

「話聞いとけ」

「はい・・・・・・」

謎の女の子と私、二人から同時に怒られた日菜はがっくりと肩を落とす。

と、その時。

「おーい月、調子はどうだ? ・・・・・・ってお前一体何やってんだ?」

大人の男性が来た。手には三角フラスコに入ったコーヒーがある。

「不審者が来たから、記憶を消して帰してあげようと思っただけだよ」

「話の経緯が読めん! まずこいつらを解放しろ! こいつらはウチの学校の生徒だ!」

「あぁ、そうなの? じゃあやめる」

ロボットは私たちの縄を解き、どこかへ行ってしまった。


「さっきはすまなかったね。勝手に入ってきたから、不審者かと思ったよ」

女の子は頭を下げた。

「いや別にいいよ。どこも怪我してないし」

「こいつは、『望月 月(るな)』だ。いろいろあってここで生活している」

「は、はぁ・・・・・・なるほど・・・・・・」

なるほどとは言ったけど、全然分からん。

「で、私がこいつの世話をしているって訳だ」

「それってセンセイ、ロリコンなんじゃ・・・・・・」

「幼女と一緒にいる大人が全員ロリコンだと思ったら間違いだぞ?」

「ところで永本先生、この子なんでここにいるんですか? いるにしても、ここ高等部校舎なんですけど・・・・・・」

日菜の言うとおりだ。ここは高等部校舎であり、彼女みたいな初等部(?)の子供は入れないはずだ。

「飛び級で卒業しているからな・・・・・・一応。大学院まで」

「はい!?」

飛び級って・・・・・・今の日本じゃ出来なかったんじゃないのか!?

説明しよう!

常に時代の最先端・教育の最高峰を誇る天地学園では、生徒たちのよりよい学習のために『飛び級』制度が設けられているのだ!

「でも何でここに住んでいるんだ? 卒業したのなら、金とか稼いでるんじゃないのか?」

「・・・・・・働けないんだよ。いくら飛び級で世界一の学校を卒業したとしても、年齢だけはどうにもならないんだよ」

「何かすみません・・・・・・」

「それで、住むあてもないからここに住んでいると」

「ちゃんと上層部の許可は得ている」

上層部とは、生徒会の別の呼び方である。

「いいのかよ、そんなこと許して」

「生徒会長様・・・・・・心が広すぎるお方だ・・・・・・」

「生徒会長様から直々にこの倉庫を与えてくださったのでな。大切に使わせていただいてるぞ」

「・・・・・・大切にの割には、随分警備ロボがうようよと巡回しているようですが?」

「うわっ!」

いつの間にか背後に風紀委員長が立っていた。ちゃんと部下付きで。

「風紀委員長様、なぜここに?」

「最近、地下倉庫の中でおかしい音がするという苦情が生徒たちから殺到しているので少し前に調査をしました。すると調査を始めようとこの場所に立ち入った瞬間、警備ロボットがいきなり攻撃してくる。その上、外した攻撃・玉は容赦なく壁を破壊する。おかげで誤って入ってしまった生徒が傷だらけで帰ってくるんですが? これは一体どういうことですか?」

「それは・・・・・・その・・・・・・」

月はなぜか私たちを指差す。

「何で私たちを――」

「こいつらがやれって命令したんです!」

「はぁ!?」

何で私たちが濡れ衣着せられてるんだ!?

「連れて行きなさい」

「ハッ!」

私たちは手錠を掛けられ、外へ連れ出されてしまった。

「おい! 私たちは何もしてないぞ!」

「どうしてこうなるの~!」

私たちの必死の叫びも風紀委員長の耳には届かず、生徒会の建物へと連行されてしまった・・・・・・

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