第10話 映画館に行こう!

『嘘が飛び交う、爽快コメディ「うそつき大会」! 全国の映画館で上映中!』

「ほう・・・・・・」

私の部屋で日菜はいつもどおりテレビを見ている。

「実ちゃん、これ見た――」

「却下」

「まだ何も言ってないのに!」

「いや口に出さんでも分かるわ。なんだよう「うそつき大会」って」

絶対クソ映画だろ。むしろここまで酷い名前にできる作者もすごいよ。

「一緒に見たかった・・・・・・」

「話は聞かせてもらった!」

突然部屋のドアが開けられ・・・・・・というより蹴破られ、何者かが侵入してきた。

「さ、紗枝様!?」

「また登場かよ」

「久々に町を出歩いてみたものでな。そしたらたまたまお前の家が見えたので来てみたぞ」

「うん、それよりドア弁償しろよ?」

そして何で私の家を知ってんだよ。

「実ちゃん! 生徒会の方に対してそんな言い方じゃ・・・・・・」

「構わん。お前は特別だ。お前には次期委員長になってもらいたいからな」

「えぇ!? よろしいのですか!?」

「お前はだめだ」

「で、何しにここに来たんだ?」

「映画館に連れて行ってやろうと思ったのだが。来るか?」

「紗枝様は、警備委員長の方のお仕事は大丈夫なのですか?」

「今日は生徒会長様から休みを頂いたのでな。たまには羽を伸ばそうと」

「生徒会長様から直々に休暇を頂くなんて・・・・・・すごいですね、紗枝様は」

「たかだか生徒会長なのに・・・・・・どっかの王みたいな立場だな」

「た、たかだか!? 生徒会長様はとんでもないお方なんだよ! 『天地の王』って呼ばれていらっしゃるんだよ!」

ずいぶんすごい名前ですこと。

「で、行くのか? 行かないのか?」

「紗枝様と一緒に映画館に行けるだなんて・・・・・・すごいね実ちゃん!」

「はぁ・・・・・・めんどくさいけど行くか」

思わず大きなため息を漏らしてしまう。

「そもそも何で日菜が委員長じゃないんだ? 日菜の方が強い気がするんだが・・・・・・」

「いや~・・・・・・.。私も実は一瞬だけ警備委員長やったことあるんだけどね・・・・・・」

「やったのかよ」

「成績不振であることがバレて、即時リコールされたんだよね・・・・・・。で、リコールするときの戦闘したんだけど」

「リコールで戦闘あるのかよ。ここ異世界の学園?」

「いや、警備委員長を決めるには戦わなくちゃいけないんだよ。だって現委員長より強くないといけないんだもん。で、途中までは今の警備委員長様を圧倒してたんだけど」

「あたしが耳に息をかけたらとたんに弱くなってしまったからな。そこから一気にゴリ押しで勝ったよ」

耳に息をかけるのは反則だろうが。正々堂々やれよ。

「それで今あたしが委員長をやってるって訳。まぁ、本当なら日菜に任せたいところなんだけどな」

「そ、そんな滅相もないことでございます! 警備委員長は絶対に紗枝様以外にいないと思っております!」

「お前意外にちゃんと敬語使えたんだな」

そんなに敬語使えるんだったら何で国語のテストの点数悪いんだよ。(前回、21点)

「ま、まぁいいや。とりあえず映画館に行こうか!」

「なぜ日菜が取り仕切るんだ?」

「す、すみません・・・・・・」


「結局学校かよ!」

映画館の前で思わず大声を出してしまった。

「あはは・・・・・・今度学校以外のところも行こうか・・・・・・」

「学園の外に出るのか?」

何故かさびしそうな目をする委員長。

「あんたは来ないでくれ。その見た目だと私たちまで不良と思われる」

「しかし・・・・・・この服が警備委員長の正装なのだから・・・・・・」

「それはあんただけだ」

この前歴代警備委員長の写真を見たけど、他の人は皆自衛隊みたいな服着てんのにこの人だけ80年代の長ランみたいなの着てるんだが。確かに強そうには見えるが・・・・・・

「この服は特注品なのだぞ! しかもいろんな機能がついている!」

「どんな機能だよ。鉛筆削りとかか?」

「まず、『軽い』・『蒸れない』・『風通しのいい』、なのに『雨が降っても決して濡れない』・『どれだけ着ても臭わない・汚れない』・そして『なかなか裂けない』。そんじょそこらの刃物じゃ切れ目一つ入れられないぞ。他にもいろんな機能がついている。 お前も頼んで作ってもらうか?」

「結構だ」

「そ、そうか・・・・・・」

「紗枝様、早く映画館の中に入りましょうよ・・・・・・」

「おぉ、すまなかったな」


「で、何を見るんだ?」

映画のポスターを見ながら委員長が質問する。

「『うそつき大会』です。紗枝様も一緒にご覧になりますか?」

「目的とは違うが・・・・・・たまには趣味思考の違う映画を見るのも良いだろう」

皆でうそつき大会を見ることになった。正直つまらなそうな映画だがな・・・・・・

「よし、ちょっと待ってろ」

「え? 紗枝様?」

「すまないが、警備委員長の者だ」

警察が持っているような、手帳を見せながら言う。

「は、はい! 今日はどのような用事で?」

「委員長優待を使いたい」

「はい。何名でのご利用ですか?」

「何やってんだよ・・・・・・」

「『~委員長』には、学園の施設の優待があるからね・・・・・・どの施設も無料で使えるよ」

「しかも手帳付きかよ・・・・・・」


「ということでお前たちも無料だ」

「あ、ありがとうございます紗枝様!」

日菜は土下座をしながら泣き叫ぶ。

「顔パスじゃないのか?」

「顔パスを使えるのは、生徒会長様だけだからな・・・・・・生徒会長様は学園長の次に偉いお立場であられるからな・・・・・・」

「生徒会長・・・・・・すごすぎだろ・・・・・・」

「じゃあ行こっか! そろそろ上映時間だよ!」

「そうだな。・・・・・・ポップコーンとジュースを買ってくるからちょっとだけ待っていてくれ」

「結構です! 自分で払うから!」

「遠慮するな。優待はこういうときに使わなくてはな!」

「やめてくれ~!」


「結局ポップコーンとジュース無料かよ・・・・・・しかもどっちもLサイズって・・・・・・」

「いいじゃないか、せっかくくれたのだから。厚意には全力で甘えるものだぞ!」

「限度ってもんがあるからな?」

「あ、始まるよ」

劇場内が暗くなった

『劇場内での撮影は違法です』

頭がデジカメの男と、頭がパトカーのランプの男が走り回っている。

「これこれ! ほんと面白くてさ、これを見るために映画に来たといっても過言じゃないよね! 漫画化とか、アニメ化されないかな~」

「あいつらに一体どういう魅力があるんだよ・・・・・・そしてポップコーン食いすぎだ。私の分残せよ?」

パリパリパリパリ

聞いてねえなこりゃ。

「確かに面白いよな。あいつらのぬいぐるみ持ってるぞ。いるか?」

「いらん」


『あの男が私のハンバーガー食べたのがいけないのよ! だから私はあの男を殺した!』

『太郎は何も悪くない! そして殺したというのは嘘だ! 刺さっていたナイフはドッキリのナイフだ! そして太郎は今、パチンコでスロットをやっている!』

『ふっ・・・・・・バレてしまったからには仕方ないわね。私も死んでやる!』

『やめろ花子! ハンバーガーならまた買えばいい!』

・・・・・・何この茶番。

しかも委員長となりで爆睡してるし。

『花子! 大変だ・・・・・・血が出ている!』

『・・・・・・アッハッハッハ! だまされたわね! それはケチャップよ!』

『ケチャップだと・・・・・・花子、もう嘘をつくのはやめるんだ・・・・・・!』

『幸太郎さん・・・・・・! 私はあなたのことが好きよ!』

『俺もだ! 二人で一緒に、新しいピザ店を作ろう!』

・・・・・・なんでピザ? ハンバーガーじゃないのかよ。

『花子!』

『太郎・・・・・・今更何をしに!』

『僕は、今パチンコで10万円勝ったんだ! だから僕と一緒にいてくれ!』

『10万円! 私は太郎さんと一緒にいるわ!』

『お、俺は宝くじで20万円当たったんだぞ!』

どういう状況だよこれ・・・・・・

ポップコーンでも食うか・・・・・・ってポップコーン無いし。全部食いやがったこの女。

『私は、二人のお金と一緒に過ごしたい! だからそのお金を全部頂戴!』

『いいとも! 君が笑顔になるのなら!』

クズ女だな。そして金を渡す男もおかしいけどよ。


映画が終わり、劇場内を出た。

「面白かったね!」

日菜は笑顔で歩きながら言う。

「一分一秒逃さず見たけど、どこが面白かったんだ?」

「あたしも面白いと思ったぞ!」

「あんたは寝てただろ」

 

その後、日菜に私の分のポップコーンを買わせ私たち三人は会話をしながら帰路に着いた。


追伸

委員長は、休暇中にたまった仕事で当分外出禁止だそうです。

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