第5話 君も出来る! MeTube!

「ふんふ~ん♪」

「楽しそうだな。何見てるんだ?」

私の隣の席で、日菜はスマホで動画を見ながら鼻歌をしている。

「あぁこれ? 「MeTube」だよ」

「MeTube? 何それ」

「えっ!? MeTube知らないの!? 今ものすごく流行ってるんだよ?」

説明しよう!

MeTubeとは、世界で一番、登録者の多い大手動画投稿サイトである!

「ほら、この猫の動画見てよ。かわいいでしょ?」

「まぁ・・・・・・かわいいな」

「そうだ! 今日、帰ったら動画投稿してみない?」

「いきなりだなオイ」

大体、動画投稿なんて危なくてさせられるわけないだろう。顔バレでもしたらどうするんだよ・・・・・・

でも・・・・・・やってみたい気持ちはある。

「やるにしても、一体どんな動画を投稿するんだ? 過激な動画はやめろよ? 炎上するから」

「そんなアホみたいな動画なんて投稿しないよ! 実ちゃんゲーム大得意なんだし。ゲーム実況を投稿してみようと思います!」

「はぁ・・・・・・なるほど」

ゲーム実況か。私も暇なときに見たな。・・・・・・全員自分よりヘタクソで全然面白くなかったけど。

「じゃあ今日帰ったら実ちゃんの家に集合ね」

「話がずいぶん急だな」

ということで今日は動画投稿をすることになった。


放課後 実の自室

「さーて! 早速ゲーム実況を始めようか!」

「まてまて、キャプチャーとか色々やらないといけないだろ」

「あぁ、そうか・・・・・じゃあ買いに行こうか!」

「その必要はない」

私はゲーム用机の脇においてある箱から、キャプチャーを取り出した。

「持ってたんだね」

「まぁな。使う機会がなかったけど・・・・・・」

「あ! 私、ゲーム実況だけじゃなくて他のもやりたい!」

「何だよ他のって」

少しぐらいはこいつのお願いも聞いてやらなきゃな。いつも世話になってるし。

「メン○スコーラ―――」

「却下」

前言撤回。

「えぇ~~~! 何で!?」

「あれは部屋が汚くなるからやめてくれ。それより早く始めるぞ。時間がなくなる」

「あぁ、そうだね。じゃあまずは実ちゃんから!」


「皆さん始めまして! みのひなです!」

名前安直すぎだろ。もうライブ始まってるから言えないけど。

そしてお前はどこにいるんだよ。人の座ってる椅子の上に立つって、ブランコの二人乗りしてるんじゃねぇんだよこっちは。

「今日はゲーム実況をしていこうと思います! なにぶん初心者な者ですから、失敗もあるかもしれませんが、楽しんでいってください!」

ちなみに、顔出しはしていない。じゃあどうしてるかというと、大急ぎで書いたアバター用のイラストを画面に貼り付けてる。そこまで上手くはないが・・・・・・(イラストレーター並みの画力)

「それではゲームスタート!」

勝手に始めるな! まだスキンも決めてないのに・・・・・・って始まっちまった!


「みの・・・・・・じゃなかった、みさきちゃん! ゲーム上手いね!」

「う、うん! これでも私、元廃人ゲーマーだから・・・・・・痛っ!」

「みさきのイメージが壊れちゃうから言っちゃだめ!」

日菜が超小声で警告してきた。あとすごくいい匂いする。

「あぁ、そうだな・・・・・・私、ゲーム大好きなんですよ!」

この裏声めっちゃキツイ!でもやっとかないと日菜に怒られるから仕方ない・・・・・・


10分前

「実ちゃんは声が低いから、裏声でやってね? じゃないとイメージ壊れちゃうから」

「私の声ってそんなに低い?」

そして私はのどが裂けるほど、裏声の練習をした・・・・・・

「もうちょっと高く!」

「もう無理だって!」

「実ちゃんなら出来る! もっと熱くなれよ!」


だから、私は大丈夫! あんなに裏声の練習したんだぞ!

「・・・・・・」

「何か喋ってよ!」

「あぁ確かに」

しまった・・・・・・

私は普段一人でしかやらないから(オンラインプレイはやる)、いつも黙ってやるタイプになったんだった・・・・・・!

「あー、あー・・・・・・この人ものすごく強いなー。負けちゃうかもー」

「とか言いつつ、速攻で倒してるじゃん」

ハッ・・・・・・いつもの癖が・・・・・・

「ていうかコメント欄エグいね!?」

『みさきちゃん強い!』

『みさきさんかっこいいっす!』

『みさきさん結婚して』

『ひなこちゃん(日菜)もなかなかのロリですなぁ~』

『二人とも私の嫁にならないか?』

何個か気持ち悪いコメントあったんだけど。何、通報していいの?

「あ、ありがとう・・・・・・」

こういう言葉しか思いつかない、こんな私を許してくれ・・・・・・


「はい! 今日も一位になりました!」

「当たり前だろ」

結局いつも通り、一位になって終わった。

「じゃあ次は、開封動画をやっていこうかな!」

「もう勘弁してくれ・・・・・・」


さらに20分前

「私、開封動画もやってみたいんだ。何かあけていないおもちゃの箱とかある?」

「人をおもちゃ屋みたいに・・・・・・まぁあるけどさ」

私は日菜をコレクション部屋(物置とも言う)に案内した。

「おぉ~いっぱいあるね」

「好きなものを使ってくれ」


日菜はちょうど出してあった、食事用のちゃぶ台にカメラを設置し正座した。

「じゃあ最初に開封するのはこれ!」

さっきは私がゲーム実況をしたから、今度は日菜の番だ。さて、何を開封するのかな。

「「魔法ガールズ☆キュアキュアプリティ~」のフィギュアと変身アイテム!」

「うぎゃぁぁぁぁ~~~~!!」

そ、それは・・・・・・私が今週の週末にゆっくり開封しようと思っていた変身のおもちゃと、めありたんの限定フィギュア(税込49,800)・・・・・・!

止めようとしたが、もう間に合わなかった。

「おぉ~! なかなかかわいいね~!」

さようなら、めありたん・・・・・・


「じゃあ次に開封するのは~~~?」

次はまともなもので頼むぞ・・・・・・!

「えーっと、「忍部隊」変身手裏剣~~!」

そ・・・・・・それは!(二度目)

私が今日開封しようと思ってとっておいた、戦隊ものの変身グッズ!

最悪だ・・・・・・さっさと開けてしまえばよかった・・・・・・

「おぉ~~これはなかなか。かっこいいねぇ」

それをカメラに写すな! 誰かカメラを止めろ!


「ふぅ。じゃあ最後は・・・・・・」

頼む・・・・・・! もう私のメンタルはボロボロなんだよ・・・・・・まともなもので頼む!

「同人誌福袋~~~!」

ああああああああああ!!!

何でそんなもの見つけてくるのかなぁ~!? こういうときに限ってさぁ!

「じゃあ一冊ずつ見ていこうか。では、みさきちゃ~ん!」

「はい・・・・・・」

「どうしたの? そんな顔真っ青にして。何かあったの?」

お前のせいだよ。


「では一冊目! えーっと、「私の妹は世界一!!」」

「しかもそっち系のやつかよ・・・・・・」

別にそんな百合ものじゃなくても、コメディー系とか二次創作とかあっただろ。何でよりによってこんな配信のときにそんなの見つけるのかなぁ!?

「では、二冊目。「悪魔さんと同棲始めました。」」

「同棲? 何それ」

「同棲って言うのはな・・・・・・まぁ、一緒に住むことだ」

「へぇ~! じゃあ私たちも同棲しようよ!」

「はぁ!?」

「実ちゃん、また顔真っ赤だよ?」

お前が急にそういうことを言うからだろ! コメント欄もすごいことになってるし!

『尊い・・・・・・』

『もう君たち付き合えよ』

『次の同人誌の参考にさせてもらっていいですか』

『結婚式場予約しておくね』

結婚式場はやめろ。いくらすると思ってんだよ。

「じゃあ次はー・・・・・・」

この調子で、私たちの開封動画(恥さらし)は進んでいったのだった。


「じゃあ今日はありがとうね! ばいば~い!・・・・・・はい、配信終了」

「ふぅ・・・・・・疲れた。まさか、いつものほほんと見ていた動画がこんなに頑張って作られていたとは・・・・・・」

動画って、編集とか大変だけど、見るのはあっという間だからな・・・・・・

「日菜、今日は―――」

「すぅ・・・・・・すぅ・・・・・・」

「寝たのか」

日菜は寝息を立てて気持ちよさそうに寝ていた。

「・・・・・・説教は起きてからにするか」

そう思い、私は日菜にそっと毛布をかけてやるのだった。

その後、私たちの動画がものすごく有名になったのを今の私たちにはまだ知らなかった。


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