ネット記事 その3

【『アイキュー部』 3人組個人VTuberユニットに早くも解散の危機か?】

 バーチャル通信簿 2022年7月03日 6時50分の記事



 構成メンバー全員が個人Vということで、Vファンの間で密かに注目されていたVTuberユニットの『アイキュー部』。


 お嬢様口調でリーダー役の『伊崎ミサキ』に元気が取り柄のムードメーカーである『一円。』、そして口数は少ないがプレイスキルの光る『井川#111』というキャラクター性の異なる3人で構成されており、全員の名前の頭文字が『い』で始まることから『アイキュー部』というユニット名が決まった経緯がある。


 そんなVTuberユニットの3人が現在、三者三様でインターネット上の注目を集めており『結成から1ヶ月も経たずに解散か?』との声が上がっているという。


 いったいこの3人に何があったのだろうか。



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『井川#111 不登校中の中学生であることが判明!!』



・井川#111とは何者か?


 井川#111はゲーム配信用アンドロイドという設定のVTuberだ。


 中性的な顔立ちをした青髪ショートカット。そして、中性的な抑揚のない声で淡々と喋るのが特徴である。


 性別不明、年齢不詳。ゲームの腕は上級者。


 彼(性別は不明だがここでは彼と呼称する)を端的に表すならこの表現がしっくりくる。


 女子のようで、声変わり前の男子のようにも聞こえる声に引き寄せられて動画を見た人が、その機械のように精密なプレイに驚き魅了されることもしばしば。


 普段FPSやTPSゲームをメインに配信しているため3人の中では一番登録者数が少ないものの、それらゲームをプレイする人の中には彼の動画を参考にしている者も多く地道にファンを増やしている。



・年齢バレから明らかになった不登校疑惑


 雑談枠を月1の頻度で行うものの、その口数の少なさから話がすぐに途切れてしまうため、彼の配信ではファンが話題が切れそうになったタイミングを見計らって次の話題をコメントに流すのがお約束となっていた。


 そしてそのコメントの中で、明かされていない性別や年齢に繋がる話題を挟み、口を滑らそうという『#チャレンジ』が本人の預かり知らぬところで密かに流行っていた。


 この『#チャレンジ』によって今回明らかになったのが、彼の年齢だ。



コメント:ねずみ年生まれの人は今日、赤色がラッキーカラーだってさ



 そんなコメントを拾い「……あれ、ねずみ年生まれだって配信で話したことあったっけ?」と子年(ねずみどし)生まれであることを認める発言をしてしまったことから年齢の考察が開始。


 最も近い2020年(2歳)を除き、声の若さと過去の「お酒はまだ飲めない」という発言から1996年(26歳)ではなく2008年(14歳)であるとの推測がされるとコメント欄は『14歳』という単語で埋め尽くされた。


 その年齢から現役の中学生であることが今回明らかとなったが、普段の活動時間(以前から平日の昼間であっても配信することが度々あったこと)から学校へ通っている様子はなく、不登校中学生であるという疑惑が浮上した。


 彼がなぜ学校へ行っていないのか。家庭の事情か、イジメか、当人の口からしか答えは得られないが、何かしらの事情があることが推測される。


 彼は『14歳』というコメントが流れ始めてからしばらくして突如、終了予定時間を切り上げて配信を終えた。


 その後はツヴィッターなどでの反応もなく、無言を貫いている。


 近年、子供が将来なりたい職業ランキングで常に上位にランクインしているのがワオチューバーであり『ゲームで遊んでいるだけで楽にお金が稼げる』とそう勘違いし、勉強なんてしなくていいと考える子供も少なくないという。


 彼はそんな子供のうちの1人なのであろうか。



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『伊崎ミサキ 正体隠匿系ゲームにてゴースティング疑惑』



・伊崎ミサキとは何者か?


 伊崎ミサキは一人称は『ワタクシ』、語尾は『~ですわ』と常にロールを貫くお嬢様系VTuberである。


 金髪ドリルツインテールのいかにもお嬢様然としたキャラクターで、主に人狼系のゲームをメインに配信を行っている。


 多人数ゲームの主催を勤めることも多い彼女はVTuberであるなしに関わらず交遊関係が広く、人望も厚い。


 人狼系──いわゆる正体隠匿系ゲームが得意であると明言しており、動画内ではその実力を遺憾なく発揮している。



・ゴースティング行為とは?


 ここでゴースティング行為とは何かについて軽く触れておこう。


 ゴースティング行為とは、ゲーム配信者の流している生配信を盗み見ることで、本来自分視点だけでは得られない情報を獲得しゲームを有利に進めるような行為を指す言葉である。


 例えばバトル・ロワイアル系のゲームにおいてゴースティングをすると、他人やアイテムの位置が分かり、相手の後ろに回って奇襲したり効率良くアイテムを回収することができ、展開を有利に進めることができる。


 もちろん、ゴースティングはゲームバランスを崩す行為であるため、eスポーツの世界においても不正行為として厳しく取り締まられている。


 正体隠匿系のゲームとはプレイヤー同士が敵か味方かわからない状態で、自分から見える情報だけを頼りに推理、考察をして敵の正体を絞り込んでいくようなゲームのことを指すが、ゴースティング行為をすることによって配信を盗み見たプレイヤーが敵か味方かということを推理、考察をせずに判断できてしまうためゲームとして成り立たなくなってしまう。


 そのため、特に正体隠匿系と呼ばれるジャンルにおけるゴースティング行為は単なる不正行為という言葉では表せないほど嫌悪されている。


 そんな正体隠匿系ゲームにおいて、昨日の配信においてゴースティング行為をしたのではないかと疑われているのが伊崎ミサキである。


 その疑惑は昨夜の20時から開始された彼女主催のターン性人狼ゲームにおいて生まれた。


 最終ゲーム、これから最後の対戦が始まろうかというまさにその時──彼女がなにやら焦ったような声を出した。


 そして微かに、配信に彼女以外の声が載ったのだ。


 それは小さく、聞き取り辛かったため配信を見ていた視聴者もそれが誰の声なのかはわからなかったため、その時は家族が配信部屋に間違って入ってきたのではないかという意見が支配的だった。


 しかし配信終了後、その声を再度確認したファンの一部が『他視点の声が載っているのではないか』と言い出した。


 そして、結論から言えばそれは紛れもない事実であったことが判明したのだ。



・疑惑に対し経緯の説明と謝罪はしたものの……


 配信から2日ほど経ち、事態を把握したのか彼女はゴースティング疑惑についての説明と謝罪を行うとして生配信の枠を設けた。


 曰く、


・ゴースティング行為はしていないが、他視点の配信画面はゲーム開始前に数秒だけ見た

・理由は最終戦前にゲームとの接続が切れたため入り直したものの、ちゃんと入れているかわからず他視点からも確認したかったため

・ちゃんと再接続できていることが確認できたため、他視点の配信は役職配布前には閉じたが、自配信に他視点の声が載ってしまった

・役職配布前に他視点の配信画面は閉じたため、問題ないと判断しゲームを続行した

・本来であれば、その時点でやり直しを提言すれば良かったが配慮が足りなかった

・ゴースティングを疑われても仕方がないような行動をとってしまい、申し訳ありません


 ということであった。


 つまり彼女の主張としては『確かに他人の配信画面は確認したもののトラブル対応であり役職配布前には閉じたためゴースティング行為はしていない』ということだった。


 公開されている動画を確認すると、確かにゲーム開始前に一度接続切れが発生し再接続を試みる彼女の様子が確認できる。また、声が載っているのは役職配布前であることも確かであるため彼女の主張に矛盾はないように思える。


 彼女の主張に対して、ネット上の反応は様々だ。


 『失望した』、『信じられない』、『役職配布前に画面を閉じたという証拠はなく、音量だけ切った可能性もあるからゴースティングの否定にはならない』といった批判の声や『お嬢は今回もいつものように思考開示してちゃんと推理しているからゴースティングはやってない』、『動画見ればトラブってたのは明らか』という擁護の声も。


 今回の疑惑によって彼女が今後、正体隠匿系のゲームをやれなくなるのではないかと心配する声も少なくない。


 果たして、彼女はゴースティング行為をやったのか、やっていなかったのか。


 彼女の今後の動向に注目が集まっている。



ーーーーー



『一円。 前世は「Met a Live」を引退した猫又イスナか?』


・一円。とは何者か?


 一円。はマイナークラフトをメインに、様々なゲームをやっている個人VTuberである。


 ちなみに名前の読みは『いちまどか』であり『いちえん』ではなく『。』は読まないがこれが本体だと主張するファンが多い。の◯太君のメガネが本体理論である。


 彼女については、活動開始当初からボイスチェンジャーを使っているのではないかという疑惑があり、バ美肉ではないかと噂されていた。


 ちなみにバ美肉とはバーチャル美少女受肉の略語であり、男性が美少女のイラスト、もしくは3Dモデルを纏ってバーチャル空間にて女の子として活動することである。


 ボイスチェンジャーを使うか自前で声まで女の子に寄せたり、あるいは地声で活動するなどその形態は十人十色である。


 一円。はボイスチェンジャーによって声を変えたバ美肉おじさんなのではないかというのが大方のファンの予想だったと、ひとまずここに記しておく。


 また、FPSゲームは嫌いと明言し、頑なにやろうとしないことも。



・ネット上の不当な憶測と中傷に耐えられず引退したVTuber


 皆さんは猫又イスナというVTuberをご存知だろうか。


 一度聞いたら忘れられない『特徴的なアニメ声』に『天才的なエイム力』に支えられた圧倒的なまでのFPSの実力。その2つを併せ持った、100年に1人の逸材と呼ばれた彼女のことを。


 今でこそ企業勢トップに君臨する『Met a Live』。そこにはかつて猫又イスナというVTuberが所属していた。


 VTuberの始祖『メタ園サキ』が始めた世界の黎明期を盛り上げた内のひとりであり、そして──ネット上の悪意に晒され引退に追い込まれたひとりである。


 彼女が引退に追い込まれた詳細な経緯については、ここでは割愛させていただくが、彼女が引退に追い込まれた背景には『声』と『FPS』が関係しているとここに記しておく。



・外れたボイチェン? 聞こえてきたのは天使の声


 一円。がとあるゲームの生配信をしていた時のこと。


 休憩から戻った彼女は、うっかりボイスチェンジャーに関係するスイッチを押してしまったようで、いつもとは違う声が配信上に載ってしまった。


『よーしっ、じゃあ次のステージやっていこー』



コメント:え?

コメント:この声、誰?

コメント:妹さん?

コメント:ボイチェンの設定値変わった?

コメント:ん? なんか聞いたことあるような?

コメント:これ地声? こっちの方が100倍可愛いやん

コメント:なんじゃこのアニメ声は!!

コメント:ボイチェン切れてますよ!?



『え? ボイチェン? んっ!! ~~~っっ!?「あ、あははは、皆は何も聞かなかった。いいねっ!?」


 コメントに気付いたのかすぐに声は元に戻ったものの、動揺を隠すことはできていなかった。


 この事故の後も彼女は何事も無かったかのようにゲーム配信を続けようとしていたが、コメント欄が黙ることはなく、むしろ配信のショート切り抜き動画がすぐに拡散し『一円。』、『#天使の声』がツヴィッターのトレンド入りを果たし、同時接続数が加速度的に増加していった。


 中には猫又イスナと声が似ていると指摘する声もあり、『Met a Live』の古参ファンまで乱入する事態をとなり収拾がつかなくなり、たまらず彼女は配信を中断することになった。


 ショート切り抜き動画は今もなお拡散を続けており、一円。と猫又イスナの関係性を検証する動画もいくつかアップされているようだ。


 その中には一円。のトレードマークでもある赤髪ポニーテールをしっぽに見立て、妖怪の猫又から転生したという暗示ではないかという考察も存在した(猫又イスナはツインテールがトレードマークである)。


 彼女がもし本当に猫又イスナであったなら、転生後に『声』と『FPS』を封印したのも頷ける話だ。


 ただし、猫又イスナがあまり喋らないタイプだったのに対し、一円。はハキハキと喋るタイプであるため、別人だろうという意見もある。


 どんな意見も、本人の口から直接話を聞かない限りはただの妄想に過ぎない。


 できればはやく、話を聞きたいものである。






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