第4話 道はつながってる

問三の(2)ってどうやって解くんですか?

ああ、それは t で微分するんじゃなくて v で微分すればいいよ

変数変換ってやつですか?

そうそう 資料の最後のページの下のほうに載ってる

あ、ホントだ。ありがとうございます

あとさ

はい

話、全然変わるんだけど

はい

敬語じゃなくていいよ


 こうやって指摘されて原さんに対して敬語になってることに気づいた。まあ、今も原「さん」って頭の中で言ってるんだけど。


え、でも

だから気にしなくていいんだって

あ、はい

はい、じゃなくてさ

うん。分かった

そう。やればできるじゃん


 ありがとうござ―—違う違う。消して「ありがと」と打ち直す。やっぱり一年留年したとか言われたらちょっと身構えちゃう。高校までだったら滅多に一個上と同学年とかなかったし。でもその留年のおかげでこうやって数学基礎教えてもらえてるわけだし。なんで大学にもなって文系が数学しなきゃなんないんだろ。しかもこうやって聞かないと分からないレベルの。


そういえばさ

うん

なんか誰か探してなかった?ミクロのとき

うん。なんで?

だって俺が話しかけたとき、あれこの人違うみたいな顔したから


 そんな顔してたのか。原さんが鋭いだけかもしれないけど顔に出てたのが本当だとしたらあんまりよくない気がする。相手もいやな気持ちになるかもしれないし。


まあ待ってました 待ち合わせてた人がいたので

やっぱり 俺の勘違いかとも思ったんだけど 誰?

誰って言われても……

あ、いや別に言わなくてもいいんだけど俺の知ってる人かなと思って

なるほど

黒髪で背の小さな男子じゃない?

えっ、そうだけど


 なんだか当てられすぎてちょっと怖くなってきた。この人超能力者かなんかなんだろうか。


それりんたろうでしょ


 名前まで当てられてしまった。なんで。純粋に驚きだしいよいよ怖い。


なんで分かったんですか?

敬語に戻ってるよ笑 俺のこと警戒したでしょ

 続けて、満面の笑みのゴリラのスタンプが送られてきた。

りんたろうも俺と一緒で留年したんだよ それで前、新入生とライン交換できたって言って喜んでたから

それだけ?

で、それで待ち合わせの約束したんだけど、そのあと体調崩しちゃって学校行けないって言ってたからさ。

ああ、そういうことか。でもそれだったらライン……

それはあれ。あいつ、実家暮らしで家が厳しいから風邪とかのときはスマホ触らせてもらえないんだよ。


 大学生になってもそんなことあるのか? と疑問に思わないでもなかったけど、僕よりりんたろうくんのことを知っているであろう原さんが言うのだからそうなのだろう。


ってことはそういう伝言をりんたろうくんから頼まれてたってこと?

うん、そゆこと。大月くんの見た目は教えてもらってたから。

 ここで「俺デキる男なんで」というドヤ顔のゴリラのスタンプが送られてきた。

あっ、ちなみにりんたろうは身長がお前よりちょっと低くて黒髪の眼鏡イケメンって言ってたよ。その通りだったから簡単に分かった笑


 僕がなんて返そうか迷ってたら俺、早番だからそろそろ寝るわと原さんが言っておやすみのスタンプが送られてきた。何かのバイトだろうか。たしかにもう零時を回ったし僕も寝ることにしよう。おやすみのスタンプを送っておいた。

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