閑話 「骸骨王にオレはなる!」
「どーすんの? この階層はだいたい討伐終了だけど」
オレにそう話しかけるのは、元ゴーストのカインだ。
エメラルド様を襲撃して、オレ等の骸骨軍団の一人に乗り移ったら、エメラルド様に魂をそのまま定着されてしまったヤツ。
エメラルド様はこの場にはいない。
小型狂犬アンディの動きがよくないのを察したみたいで一端地上に戻って行った。
アンディもあの年でめっちゃ強いのはわかるけど、さすがに疲れたんかな?
そんなわけで、この新規エメラルドダンジョンに残るのは、オレ達スケルトン軍団。
はいどうも、新規エメラルド・ダンジョンでアンデット(スケルトン)として第二の人生を送ってるサムです。
「ちょっとまて、カイン、オレ先輩よ? ダンジョン攻略者としても生前の年齢もオレの方が上よ?」
「サムパイセン、さーせん!」
たくよー。
最近の若いもんはー。なってねえよ。
「カインさー、サンドラって、マジで生きてるの?」
「生きてるようには見えたっす」
このゴーストになったこいつ。カインはアクアマリン・ダンジョンの攻略者だった男らしい。
アクアマリン・ダンジョン低層階だから、こいつのパーティーも金欠で、新規ダンジョンにアタックして懐あったかくしたかったんだそうな。
けどさあ。
この新規エメラルド・ダンジョンを選ぶとか。
下調べとかしなかったのか……生前まだ17だっていうじゃん?
そういうのもままあるよな。
地方の山奥の村とかでダンジョン攻略者を夢見て、すぐ近くがアクアマリン・ダンジョンで、そこで一旗揚げて~とか思ったんだろう。
学校行ってないっつーから、まあ仕方ないか。
セントラル・エメラルドだとわりと義務的に子供は学校に行かされるし……親無しの孤児院の子でもいけるし、住民の税金でそれができるんだよな。
でもこれはあれよ、先代様の施政のおかげっていうか。
セントラル・アダマントやこのセントラル・エメラルドはきちんとそういう施政をしているからね。
セントラル・ルビィやセントラル・サファイアも同様。
アダマント様に並ぶ長寿の魔女が治めてるところはだいたいそうなんだよなー。
アクアマリン・ダンジョンは新規も新規で、アクアマリンの魔女も現地の攻略者だっていうからな。そういうところ追いつかないんだろう。
先代様の残したのはセントラル・エメラルドの施政は財産の一つだよな。
「お前、なんでサンドラの傍にいたわけ?」
「知らないです、強そうだったから、引き寄せられたんだと思うっす。そんで近寄ったら、なんかオレの意思とかまったくない状態……そう言ってもわかんねーかも。ただ、サンドラ? の命令が絶対的な感じだった。はっきりわかるのは、サンドラのエメラルド様を殺せとかそういう命令だけ」
ダンジョンに潜ったこともないのに? サンドラが強い? それを言ったらエメラルド様の強さとか成長ぶりも普通の攻略初心者じゃないけど。
エメラルド様はサンドラは妄執していると言った。
若さ美貌と富と名誉に。
ここは魔女の為のダンジョンだから。
「サンドラがどこにいるかわかるか?」
「この階層から10層以内にはいると思う。ゴーストの状態なら階層も自由に行き来できるけど、このスケルトンに魂定着されたから、定着されてなきゃ、探れました」
ふむ。
とりあえずレベル上げだな。
オレは意思疎通ができるスケルトンを集めて、リーダーにし、そいつらに軍団を何隊かに分けてもらう。カインにもリーダーになってもらった。
こうなるとオレについてきてくれるスケルトン、大所帯になったなあ。
「リーダーになったお前とお前とカイン、ちょっと低いの階層でレベル上げしてくれ、残りはオレについてきて、この先の階層を進む」
喋れないヤツはカタカタと歯を鳴らす。了解の意味だろう。
「エメラルド様が戻ってきたら―――また合流な」
オレはスレイプニルに乗る。
「合流って、どーするんすか?」
「オレが集まれ~って思ったら自然と集まるようになるから、あんま考えるな」
ヒラヒラと手を振るとカラカラと関節部分が擦れて音が鳴る。
「……なんだそれ、ありなんすか?」
「ありだよ。だってオレ、スケルトン・ジェネラルだから――ゆくゆくは骸骨王にオレはなる!」
ぐっと握りこぶしをつくる。
人間じゃあなくなったけど、オレの魂はこのままだから。
魔女に仕えし、アンデッドの王を目指すぜ。
骨になろうが、ダンジョン攻略者なんだよ。
もっと強くならないとね。
エメラルド様がここにいない間に、オレがこのダンジョンを任されるように。
その為にはサンドラ、お前を探すぜ。
どんないちゃもん付けたって、エメラルド様が先代様の後継者。
このダンジョンの名前の魔女なんだからな!
サンドラ。お前の野望はこのダンジョンの魔女になること――、セントラル・エメラルドを手中に治めること。
阻止するぜ。
オレはお前に従わない。
「行くぜ行くぜー! ダンジョン中層階に向かえー! サンドラの首を獲る!」
オレが声を張ると、物言わぬスケルトン達は剣を振り上げて士気を高める。
スレイプニルはスケルトンの覇気を感じとったのか、走り出し、スケルトン達はオレの後を追いかけて走り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます