第6話 少女皇帝と自己紹介②ややこしいクラス

 自己紹介は隣国ベレネウス王国ウォーター伯爵令嬢のモルザ、メイ男爵令息のフェリクス続く。


「次はネイさん。」

「はいっ!ネイっす。冒険者ギルドから来たっす。よろしくお願いするっす。」


 と活発な少女が自己紹介した。


「次はクリスティナさん。」

「私はベルザンダ侯爵家長子のクリスティナ・テレジア・ベルザンダですわ。クリスがお二人いるなら私のことはティナと呼んでもよろしくてよ。」


 そう言って金髪ドリル髪の少女が自己紹介する。確かにクリスが2人いるならクリスティナや省略形で一般的なクリスじゃあわかりづらい。

 続いてベレン男爵令息ダンジム、ロド男爵令息デニス、騎士団員の令息ケニスと続く。しかしデニスとケニスってまぎわらしいわね。まあ二人のクリスよりはましね。

 次の少女の自己紹介でまた一波乱あった。


「次、ティナさん。」

「なっ!!」


 思わず声を上げたのはティナと呼んでもいいと言ったクリスティナだった。


「アタシですね。アタシはデリッサ商会会長の娘でティナって言います。日用品から冒険者御用達のアイテム、ドレスまで扱ってますさかい用入りなもんがあったらアタシに言ってくれたらある程度用意できます。よろしゅう。」


 デリッサ商会はこの国で一番の大商会で確かに彼女が言ったものは用意できそうでね。ちなみに皇帝である私の御用商人でもある。それはともかく問題があるわね。


「あの、ひとつ提案があるのですが。」


 私が手を上げて発言の許可をもらう。


「はい、へ――――フリージアさんどうぞ。」


 先生が許可を出す。……陛下って言いそうになったわね先生。


「クリスティナさんの愛称なんですが、クリスでもティナでも被ってしまうなら、”リスティ”ってどうでしょう?」


 はっきり言ってこんなに似たような名前が揃うのは滅多にないだろう。ややこしい状況を少しでも軽減できるように提案してみる。だが、その提案を聞いてクリスティナさんが俯いてプルプルと震え出す。やっぱダメか。


「――――ですわ。」


 クリスティナさんがなにか呟いた。どうしたんだろうと彼女に注目が集まる。すると彼女は勢いよく立った。


「おーっほっほっほっほ。愛称を賜るなんて、光栄の極みですわ!これからはと呼んでもらってもよろしくてよっ!!」


 と、高笑いを上げそう宣言した。愛称が気に入らなかったのじゃなく、愛称を考えたのが私だったから感激して震えていたのね。


 自己紹介はコレーガン伯爵令息ハロルドと、エルと名乗った……あの子って男?女?なんというか性別不明な人物で終わった。


 今年の入学者に他国の人間が少ないのでこのクラスにも我がベジリアス帝国の民以外は1人しかいない。まあ、少ないのは私が皇帝になったからなんだけどね。理由は単純に私が入学するのはだ。学年が近ければ皇帝と友好関係を結べ、皇帝の側近や、場合によっては帝配になれる可能性だってある。そうなると1~2年くらい入学時期を遅らせる方が特と考えたわけだ。

 ――――来年は入学希望者が殺到するわね。今年入る予定で遅らせた人と来年入学予定の子、そして……。倍率は今年の2倍くらいになるかもね。その分優秀な生徒が集まるでしょう。




「皆さんの自己紹介も終わったので、皆さんのカリキュラムをお伝えします。皆さんにはこれから4年間勉学や社交をはじめとしたいろんな事を学んでもらいます。1年、2年は共通授業ですが、3年からはそれぞれ目指すものによって選択授業が開始されます。2年間でどういった人物になりたいか考えてみてください。」

「「はい。」」


 みんな元気よく返事した。


「また、国によって変わりますが、この4年間に成人を迎える――――。」


 先生は私たちの方をチラッと見て。


「迎えない人もいますが、所属する国によって違う成人の儀を執り行うことになります。ですが、成人してもこの学園の生徒であることは変わらないので、注意してください。」


 帝国の成人は16歳と定められている。私やアリスが成人を迎えるのは卒業後になる。通常ならよほど成人年齢が高い国じゃない限り卒業までに成人することでしょう。


「では、この後、男女各寮で歓迎会を行います。その後、全体の歓迎会を行います。寮へは生徒会役員が迎えに来ますので、それまでしばらく待っていてください。」


 しばらくして男子は生徒会長。女子は生徒会役員に連れられ各寮に向かうのであった。

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