第10話 戴冠式①

 数日後、新しい帝冠が完成し、戴冠式を行う準備に入った。


「では、10日後に戴冠式、葬儀は1月後を目処に行います。」


 私は侍従長とフィリップス卿に宣言する。


「わかりました。では各貴族へ戴冠式の連絡を送ります。」

「頼みます。」

「こちらはアリスとともに式次第の準備をします。戴冠式の衣装も準備は進んでおりますので一両日中には試着できるでしょう。」

「よろしくお願い。」


 各方面への指示を飛ばしていく。もちろん戴冠式なので、友好国の首脳にも招待状は送られる。すでに帝国の事情を伝えているので、ある程度の首脳が来ると思われる。

 戴冠式には大広間を使う。全ての貴族の当主、および代理人が入り、各国の首脳や大使も来るので、それ相応の広さが必要だ。

 それに、戴冠式の後にはパレードも予定されている。新しい皇帝を民に見せる場なので、帝都の主要な場所を巡る。すぐ城に戻っていくので、ちゃんと警備をすれば問題ないだろう。当日来る友好国の首脳の宿も手配しなければならない。迎賓館はあるが、こちらも当日はパーティに使うので、帝都一のホテルや貴族の屋敷を押さえなければならない。

 私も当日まで再びに倒れないよう気を付けながら、各方面から来る書類を処理していった。




 戴冠式当日。帝都は大忙しだった。10ある友好国のうち、なんと10ヶ国全てから首脳や代理の者が来たのだ。代理も王太子や宰相などのかなり格の高い人物が来た。席次も決めるのに苦労した。

 貴族も全ての家が当主が来ることもあいまって、帝都の警備を厳重にしなければならなくなる。何かの弾みでテロが起こったら友好国も含め上が全部いなくなってしまうから……。



「私の姿、変じゃないかしら?」

「いえ、凛々しいですよ。」


 侍女姿のアリスがそう言ってくれた。


「そうです。神々しいです。」


 こっちは近衛騎士姿のエリシアも続く。


「緊張するわね、ホント。」


 私は、半月前まで皇帝になる予定はなかったんだよ。夏風邪ひいたら皇帝になっちゃったんだから。


「それでも、帝位が空位なのは避けなければならない……というか、今、陛下以外で一番上位の継承権持ちは、陛下の大叔父の家系のモルストア公爵家になりますからね。しかも当主を避けるとなると当主のご子息である3歳の少年か、当主の妹君が輿入れしたネウケライ侯爵家の半年前に生まれたばかりの少女になりますからね。」

「傀儡一直線ですね、それだと。まだ10歳の私がです。まあ、私でもちゃんと考えて動かないと内務卿のいいなりとか言われかねないですし。」


 今でも腹心といえる人物がほとんどいない。まあ、最大の要因は私が若すぎて帝立学園に行ってないからなんだけど、そんなん想定できないわよ!


「同世代で信頼がおける人物だって4人しかいないし、どうしましょうか。」

「確かに、問題がありますね。」


 ま、それはある方法で何とかなると思うけど……。


「まずは、戴冠式を終わらせましょう。」

 

 こうして私は戴冠式に向かった。

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