第1章 統治開始と大粛清

第1話 少女皇帝と謁見ラッシュ

 皇帝になり最初に処理しなければならないことは、葬儀の取り仕切りであった。


「陛下、葬儀の事ですが……。」

「ええ、皇族14名合同で式を行いましょう。遺体の発掘はどうなっていますか?」

「あまり順調ではありませんね。」


 侍従長が首を横に振りながら答える。


「あの広大な離宮がすべて埋まるほどの土砂ですもの、仕方ありませんね。……いっそのこと、離宮跡を皇帝家の墓地として管理する方がいいかもしれませんね。」

「なるほど、たしかにその方がよろしいかもしれませんね。」

「では、そのように手配を。葬儀も離宮跡で行いましょう。その方が帝国がその場所を管理していると知らしめることができますから。」

「仰せのままに。ところで陛下、複数の貴族が令息を伴って謁見を求めておりますが、いかがなさいましょう?」


 侍従長が書類を書きながら確認してくる。今は侍従長に内務卿を兼任してもらっているが……。


「そうですね。私が10歳なのをいいことに、婚約者と言う形で取り入ろうとし、最終的には権利を貪ろうとしている屑ですね。…………膿を出すのにいいかもしれませんね。謁見はしましょう。ただし、来た貴族の名は控えておき、告発に使います。あと、そうですね、貴方には私の横に立って、こう言ってもらいましょう。それは――――――。」

「――――なるほど、告発は直前まで隠すのですな。いい考えです。」

「ただの面通しのために連れてきた場合は、別室で当主とのみ話しましょう。叱責を含めてね。

 あと、私と同じくらいの令嬢がいる家に相手側からの一方的な婚約破棄があった家も確認するべきですね。後で令嬢令息と面談を行い、引き裂かれた者には私から婚約の許可と祝福を与えましょう。そうじゃない場合は、再度の婚約は皇帝として認めないと言うことで。

 告発したものを含め、爵位を暫定的に1つ下げましょう。理由は、『一度に親族を全て亡くした皇帝に突然すり寄ろうとしたり、喪中なのにあわよくば帝配にねじ込もうとしている貴族は信用できない。』とでも言えば文句はないでしょう。」

「そうですな、文句を言えません。」


 侍従長も納得顔で頷く。


「あとは、巻き込まれた令嬢たちとお茶会がしたいわね。迷惑をかけてしまったお詫びを兼ねて。あと――――――。」

「それは、いい考えですな。私も――――――。」


 侍従長はやや困った、ただし幸せそうな顔で理解してくれた。


「そういえば、私の婚約者はどうなってます?たしか、秋に発表する予定だったはずですけど……。」

「ああ、それでしたら、最終選考を離宮で行う予定でしたから、まだ未定です。資料は私が持っていく予定だったので、こちらにありますが……。」

「それは私があくまでその家に入る予定の政略結婚でしょう。現状それはできなくなったので、選考のやり直しをすると言うことで、処理してください。」

「わかりました。まあ、まだ打診だけで公表しておりませんので、処理できますな。」

「よろしくお願いします。」


 そして、侍従長との打ち合わせはさらに続いた。




「皇帝陛下のおな~り~」


 謁見の間に現れた皇帝たる私は侍従長を伴い黒い喪服姿で現れた。

 それに対し、ドカウツ侯爵とその子息はきらびやかな衣装を纏い、頭を下げていた。

 私が玉座に着くと、侍従長が声をかける。


「皇帝陛下の代理として命ず、面を上げよ。」


 その声に二人が頭を上げ、皇帝である私に声をかける。


「皇帝陛下の御拝謁を賜り、至極光栄に御座います。本日は陛下のお心が休まればと、陛下の婚約者である我が嫡子のフェレッドを伴い、御機嫌伺いに参った所存に御座います。」


 私が、スッと侍従長を見ると、侍従長は頷き


「陛下はご覧の通り、現在喪に服しております。その事を考えた上で発言為さるべきです。」


 侍従長の発言が終わるのを待ち私は立ち上がり退出した。まだ頭を上げたままのドカウツ侯爵親子に侍従長が「皇帝陛下が退出なされます!いつまで頭を上げているのですか!」と言われ慌てて頭を下げていた。



「アレ、2階級降格で。」

「子爵まで落としますか?」


 控え室で侍従長と話し合う。


「むしろ、不敬罪で斬首にならないだけましだと思ってもらわないと困るわね。」


 私は肩をすくめる。

 ご機嫌うかがいに来た貴族は20組を超えたので見込みのある貴族は後日改めて登城するよう日時を指定して伝え、2日かけて謁見した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る