第2話

 五十嵐たちがいる田舎町から、山一つ挟んだところに市街地がある。そこの警察署の刑事課では、小さなざわめきがあった。

「おかしい……」

 岡崎は定期的な連絡が遅れていることに胸騒ぎがした。一時間おきに一分いっぷんの狂いもなく、ワン切りが入っていたが、五分遅れている。すぐに言われたとおり、ある人物に連絡を入れた。

「岡崎です。五十嵐さんからの連絡が五分遅れています」

「榊原です。了解しました。もうすぐそちらに着きます。こちらからは五人行きます。そちらでも動ける人数を揃えてください。我々が到着するまで待機願います。くれぐれも先走らないで下さい」

「分かりました。到着をお待ちしております」


 ほどなくして、榊原たちが岡崎の待つ警察署に到着した。

「相手が猟奇的な殺人犯であるという事と、犯人には協力者がいる事は推測されます。これだけの人数で行けば警戒されるでしょう。しかし、五十嵐から連絡が途絶えたと言う事は、一刻の猶予もないと思われます。手分けをして捜索に当たりましょう。五十嵐の居場所はGPSで追えるはずでしたが、電波が弱くとぎれとぎれです。点をつなげば、この辺りにいると思われます」

 榊原は田舎町周辺の地図を広げ、点と点を線で結んだ。点には確認できた時間が記入されている。最後に確認できたのは、今から二時間前だった。


 岡崎のチーム五人と、榊原のチーム五人、会わせて十人。それを三班に分けて行動することとした。隣の駅までは十五分かかった。刑事が十人、無人駅に降り立つのは目立つが、その駅に止まる本数は少ないため、むをなかった。まずは先発チームが目的地へまっすぐ向かった。



 五十嵐たち三人は、背後から棒で襲われたが、蓮宮に怪我を負わせるわけには行かないと、とっさに身体で彼女を庇った。

「ぐふっ」

 棒は五十嵐の背中を強く打ち付けた。須藤は棒を掴み奪い取ったが、相手は十人ほどいて、多勢に無勢だった。蓮宮がいなければ対処は出来たが、ここはおとなしく捕まることにした。田舎の住民たちに捕まったところで、五十嵐たちには、さほど危機感はなかった。とにかく、蓮宮に危害が及ばないように注意を払い、彼らの動向を探る。

「お前らは一体、何者だ? 俺たちに何の恨みがあるんだ?」

 五十嵐は、打ち付けられた痛みを押して、彼らに質問した。しかし、彼らは無言のまま五十嵐たちの手を縄で縛り連行した。着いた場所は古い民家だった。中には土間があり、そこから座敷へ靴のまま上がるよう指示された。その奥には木でできた柵の牢があり、五十嵐たちはそこへ閉じ込められた。

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