鑑定は・・・

「ねぇ? この巻物私が貰ってもいいよね? 」

朝食の家族みんなが居る席で聞いてみた。


「いいよ。どうせ大して価値の有るモノではないだろうし・・・」


土蔵から出て来た巻物に私以外は家族の誰も興味を示さなかった。


コレは一体誰の作品なんだろう?

きっと寺崎家の家宝に成るものに違いない。

鑑定とか頼むときっと高いんだろうな?

巻物の鑑定家とか知らないし・・・

鑑定家って怪しい人が多いから頼みずらいんだよな・・・


巻物は寺崎家の家宝である事は信じていたが誰の作品であるのか分からずに私は悶々とした。


そんな日々が暫く続いたある日、職場で主張の鑑定番組の収録がある事を聞かされた。

こんなチャンス逃したら再び訪れる事は無いだろう。

そう考えた私は家族にあの巻物を鑑定に出す事を説得した。


父や母は反対だった。

「そんなゴミの中から出て来たモノを鑑定に出して、近所や親戚の笑いものになるなんて絶対に嫌だからな! 」


体裁が悪いからとチャンスを潰す父や母だったが、私は粘り強く説得した。

「それなら私がコッソリ一人だけで出すから、父さんや母さんは知らなかったフリをしてればいいでしょ? そうすれば恥をかくのは私だけなんだから・・・」


私が何度もしつこく言うから、最後は諦めた様だ。

「好きにしろ! 」

と言われ私はニンマリしながらお宝を大切に磨いた。



出張鑑定当日はドキドキだった。

『どうか私の日常に華を下さい。』

こんな小さな私の想いは届くのだろうか?

会場には二十人位、お宝を鑑定してもらいたい人達が集まっている。


会場で次々とお宝が鑑定されて行く。

私の番が廻ってきて心臓が飛び出しそうだ。

最初に掲示された鑑定金額の150万円という額を見て私はホットした。

そして同時に『一体誰の作品なんだろう?』

と解説を心待ちにした。


「コレは小野小町の日記だと思いますね。書かれた内容なんですが『あの人のことを思いながら眠りについたら夢に出てきたのだろうか。夢と知っていたなら目を覚まさなかっただろうものを。』という古今和歌集の和歌が書かれています。そして注目すべきは『円仁様、会いとうございます。』という事が書かれている事です。」


「はぁ? ソレはどういう意味を持つのでしょうか?」

司会者は私が聞いてみたい事を代わって聞いてくれた。


「いいですか? 小野小町の墓は全国に何箇所も在り、どれが本物かは分かっていません。当然この方のすぐ近くにも、小野小町の墓が存在します。この日記が出て来た事でそれが本物である可能性がぐっと上がったという事です。」


「ナルホド! 凄い鑑定金額が出ました。ありがとうございました。」

司会者に促されて私は舞台を降りて行った。


コレは小野小町の日記だったんだ。

暫く私は興奮が止まなかった。





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