【完結】ハマったVTuberが義妹だと知ってしまったので幼馴染に相談したところ、幼馴染達もVTuberをすることになって、二次元にしか興味がなかったはずの僕の心がかき乱される

夜炎 伯空

第1話 ハマったVTuberの前世(中の人)が義妹だった!?

「ハマったVTuberの小春日こはるびルミナが、まさか妹の瑠衣歌るいかだったなんて……」


 僕の名前は神代洞夜かみしろとうや

 漫研サークルに入っている大学二年生。


 自分でも自覚している二次元オタクだ。

 両親が家に不在なことが多かったので、漫画やアニメを見まくっていた僕は、その影響を大いに受けていた。

 

 妹の瑠衣歌は高校二年生。

 瑠衣歌の両親に不幸がある前は従兄妹いとこの関係だったのだが、今は家族に加わり、義理の妹として一緒に暮らしている。


 瑠衣歌には両親を失ったという心の傷があると思うのだが、そんな様子を見せることなく僕に対しても明るく接してくれていた。


 僕は学業のかたわら、趣味の延長で似顔絵のイラストをネットで描いて、こづかい稼ぎをしている。



 遡ること一年前。


 昔の僕は漫画家を目指していたのだが、絵を描くスピードが遅いことに挫折して、イラストを描いたり、小説をネットに投稿したりすることで気持ちに折り合いをつけていた。


 そんなある日。


『妹系VTuberになりたいので、イラストを描いてもらえませんか?』


 僕のSNSにVTuber用のイラスト描いてほしいという依頼があった。


 ちょうど、その頃、VTuberを描くことに興味があった僕は、


『VTuber用のイラストは初めて描きますので期待に応えることは出来ないかもしれませんが、それでもよろしければ描かせてもらいます』


『はい、大丈夫です。楽しみにしています』


 というやり取りをして、VTuber用のイラストを描くことになった。


 そこで、似顔絵イラストを描くために、写真を送ってもらおうとしたのだが。


『もし妹さんがいれば、その妹さんに似たキャラを描いてもらえませんか?』


 そうお願いされたので、キャラクターの参考にするだけだし、それくらいで怒られることはないだろうと思って、瑠衣歌に似せたキャラクターを作成することにした。


 まず、VTuber作成用のソフトをダウンロードして、使い方も必死に調べたりと、時間はかかったけど、何とかキャラクターを描き上げた。

 もちろん、今の方が上手に描ける自信はあるが、苦労してVTuberのキャラクターを初めて描いたので、小春日ルミナは僕にとっても想い出深いキャラだ。


 そんな想いがこもったキャラクターだっただけに、VTuberのルミナにハマるのにそう日はかからなかった。

 そして、そのキャラクターを作った本人ということもあり、僕はルミナの最初のファンとなった。


 初めての配信の日からずっと応援してきたからか、人気のVTuberになっても、


「トウヤ兄ちゃん、いつも来てくれてありがとうございます! 嬉しいです!!」


 と言って、僕のチャットコメントには毎回返事をしてくれていた。


 逢うことはないんだろうけど、名前を覚えてもらえるくらいには、ルミナと特別な関係が築けている。


 そう思っていたのに……

 


 両親が出かけているので、今日は広々としたリビングで配信を見ようと、瑠衣歌の部屋の前をノートパソコンを持ちながら通過しようとした時、部屋の中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


 ……瑠衣歌の部屋から聞こえてくる話とルミナが話している内容が同じ?


「あれ? もしかして瑠衣歌も配信を見てるのか?」


 瑠衣歌は僕がルミナのファンだということを知っているので、同じ配信を見ているのだと思った。

 しかし、立ち止まってルミナの声を聞いていると、目の前にあるパソコンから聞こえる声よりも部屋から聞こえてくる声の方が何故か早い。


 それに声色は変えているが、瑠衣歌が話しているかもしれないと疑って聞いてみると、ところどころ瑠衣歌の普段の声も混じっているのが分かった。

 僕は信じられないと思いながらも気になる気持ちを抑えられず、部屋のドアの前で声を聞きながら配信を見続けた。



 配信を最後まで見た僕の感想。


 ルミナの前世は瑠衣歌で間違いない……


 僕は小春日ルミナの前世(中の人)が瑠衣歌であることに気づいてしまった。

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