第16話
*
<バス停>
友「さっきの話さ、妹はもし姉先生に恋人が出来たらどうするの?」
妹「どうするのって?」
友「まず同居はかなわないじゃん」
妹「うん」
友「夜ごはんをつくって家で待ってることも出来ないじゃん」
妹「うん」
友「……ていうか大前提として、自分よりも好きな人がいるってことじゃない」
妹「そうだね」
友「ダメージとかないの?」
妹「だってそんなの想像できないから」
友「でもないとは言い切れないでしょ」
妹「ないよ」
友「言い切っちゃうかー」
妹「うん」
友「……」
妹「起こるはずのないことは考えない方がいいし、そういう想像したって何も変わらないじゃん」
友「たしかに変わらないけどさあ」
妹「友ちゃんさっき図書室で、将来設計って言ってたよね」
友「うん言った」
妹「将来のことなんて、わたしはあんまり考えてない。その少し考えたことで優先順位はあるけど……でも、どこの大学に行くとか、何の仕事をしているかとか、そんなのは些細な問題で、どうでもいいことなの」
妹「わたしの中では、おねえちゃんと一緒にいること以外は全部失敗なの」
友「……」
妹「おねえちゃんがわたしじゃない誰かを好きになっても失敗。わたしのことを嫌いになっても失敗。もし失敗したとして、そこから修正はできるかもしれないけど、それはそれ。……わたしは、一度も失敗したくない」
友「ねえ、怒ってる?」
妹「怒ってない」
友「ごめんね」
妹「ううん。怒ってないから謝らないで」
友「……」
妹「……」
友「……じゃあさ、ひとつ聞いていい?」
妹「うん」
友「そんぐらい思ってるならどうして、その気持ちを姉先生に伝えないの?」
妹「それは……」
友「うん」
妹「…………ごめん、言えない」
友「わたしでも?」
妹「……うん。友ちゃんにも、誰にも……おねえちゃん以外には」
友「そっか」
妹「友ちゃんあのね、わたし目の前のことはちゃんと考えてると思う」
友「たとえば?」
妹「この三年間の重要さとか、貴重さとか」
友「どういうことよ」
妹「ふふふ、恥ずかしーからヒミツ」
友「なんだよー」
妹「……」
友「……ていうか、あんなに本音をしゃべる妹は珍しいんじゃない」
妹「そうかな」
友「わたしだからか」
妹「友ちゃんだからかな」
友「取ってつけた感ハンパねー」
妹「本音を言えるのは大切な友達だから」
友「本音を言えるのが大切な友達なの?」
妹「ううん。友ちゃんが大切な友達だから、本音を言える」
友「嬉しいこと言ってくれるねぇ」
妹「ふふふ」ドヤァ
友「このドヤ顔を見れるのも実はめちゃくちゃ貴重なのでは?」
妹「ありがとう」
友「褒めてないよ」
妹「えー、ウケる」ケラケラ
友「ウケんし」
友「まー、妹もがんばってるみたいだし、わたしもがんばらないとなー」
妹「テスト?」
友「それも。これは自分との戦いなのだ」
妹「他の人は気にしてられない?」
友「よく分かってんねーさすが」クスクス
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