第16話




<バス停>



友「さっきの話さ、妹はもし姉先生に恋人が出来たらどうするの?」


妹「どうするのって?」


友「まず同居はかなわないじゃん」


妹「うん」


友「夜ごはんをつくって家で待ってることも出来ないじゃん」


妹「うん」


友「……ていうか大前提として、自分よりも好きな人がいるってことじゃない」


妹「そうだね」


友「ダメージとかないの?」


妹「だってそんなの想像できないから」


友「でもないとは言い切れないでしょ」


妹「ないよ」


友「言い切っちゃうかー」


妹「うん」


友「……」


妹「起こるはずのないことは考えない方がいいし、そういう想像したって何も変わらないじゃん」


友「たしかに変わらないけどさあ」


妹「友ちゃんさっき図書室で、将来設計って言ってたよね」


友「うん言った」


妹「将来のことなんて、わたしはあんまり考えてない。その少し考えたことで優先順位はあるけど……でも、どこの大学に行くとか、何の仕事をしているかとか、そんなのは些細な問題で、どうでもいいことなの」


妹「わたしの中では、おねえちゃんと一緒にいること以外は全部失敗なの」


友「……」


妹「おねえちゃんがわたしじゃない誰かを好きになっても失敗。わたしのことを嫌いになっても失敗。もし失敗したとして、そこから修正はできるかもしれないけど、それはそれ。……わたしは、一度も失敗したくない」


友「ねえ、怒ってる?」


妹「怒ってない」


友「ごめんね」


妹「ううん。怒ってないから謝らないで」


友「……」


妹「……」


友「……じゃあさ、ひとつ聞いていい?」


妹「うん」


友「そんぐらい思ってるならどうして、その気持ちを姉先生に伝えないの?」


妹「それは……」


友「うん」


妹「…………ごめん、言えない」


友「わたしでも?」


妹「……うん。友ちゃんにも、誰にも……おねえちゃん以外には」


友「そっか」


妹「友ちゃんあのね、わたし目の前のことはちゃんと考えてると思う」


友「たとえば?」


妹「この三年間の重要さとか、貴重さとか」


友「どういうことよ」


妹「ふふふ、恥ずかしーからヒミツ」


友「なんだよー」


妹「……」


友「……ていうか、あんなに本音をしゃべる妹は珍しいんじゃない」


妹「そうかな」


友「わたしだからか」


妹「友ちゃんだからかな」


友「取ってつけた感ハンパねー」


妹「本音を言えるのは大切な友達だから」


友「本音を言えるのが大切な友達なの?」


妹「ううん。友ちゃんが大切な友達だから、本音を言える」


友「嬉しいこと言ってくれるねぇ」


妹「ふふふ」ドヤァ


友「このドヤ顔を見れるのも実はめちゃくちゃ貴重なのでは?」


妹「ありがとう」


友「褒めてないよ」


妹「えー、ウケる」ケラケラ


友「ウケんし」


友「まー、妹もがんばってるみたいだし、わたしもがんばらないとなー」


妹「テスト?」


友「それも。これは自分との戦いなのだ」


妹「他の人は気にしてられない?」


友「よく分かってんねーさすが」クスクス


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