閑話

 道路には死体が三つ、当然ながらその中に俺は居ない。ガバメントの銃口から銃身は斜めに抉られ、沸騰するような音を立てていた。


 「マジですか….運が良い奴ですね….」

 「死体に近づいても大丈夫だと思うか?」

 「まあ、大丈夫じゃないですか。私はここに居ますけど」


 拳一つ分の段差を乗り越えて男の死体に近づいた。仰向けに倒れているが、その顔は銃弾に丸く切り取られていて分からない。手には妙に小さい拳銃が握られていた。


 「まさかお前一人で殺してしまうとはな」


 薙がひょいと塀を乗り越えて駆けつけて来た。


 「お前が遅かったんじゃないか?」

 「異常者め、その頭を抉り取ってやりたいくらいだ。だが、まずはこいつの死体漁りからだな」


 ポケットやバッグ、服の下、躊躇なしだ。薙は口角を少し吊り上げていて、かなりの上機嫌に見える。


 「なーんも出てこないな。何もない。こいつは何もないカスだ」

 「銃があるだろ」

 「個性がない武器は好きじゃないんだ。無機質過ぎる、ユーモアがない」

 「殺しにユーモアが必要なのか?」

 「何にでもユーモアは必要だろうが。だからお前は馬鹿なんだ」

 「パジャマ姿もユーモアだったのか」

 「….お前、節操がなくなって来たみたいだな」

 「友達だろ?」

 「友達なわけないだろうが」

 「友達じゃなきゃこんな話さないだろ」

 「まあ、3歩譲って知り合いだ」

 「じゃあ今から友達になろうぜ」

 「はぁ、まあ、私の家まで来られたら考えてやる」

 「了解した。楽しみだ」

 「楽しみにすることでもないだろうがな」


 薙はスッと立ち上がり、車へ向かった。いつの間にか、銃は分解されている。少し勿体ないな。


 「山井、ほら、歩け。もう直ぐだぞ」

 「本当にもう直ぐ何ですか..?」

 「まあ、もう直ぐかも知れないし、まだまだ先かも知れないな」

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