第19話 お酒を飲まなくても楽しい人生がある?

 四半世紀以上、ほぼ休肝日のない生活を送ってきた。基本的に飲むのが好きだし、喜怒哀楽のすべてにお酒が付き物で、感情を完結するための必須アイテムなのだ。

 お酒を飲めない人がよく「人生半分損してると言われるのが腹立たしい」と言うのを聞くが、疲れた日や嫌なことがあった日の夜、お酒も飲まずに何しているんだろう?という疑問を抱いていた。

 先日、夫の先輩の秘密基地にお邪魔した。山を買って山小屋を建て、週末だけ山で過ごすというとても素敵な生活があった。小屋の中には暖炉があり、壁一面に本がびっしりと並んでいた。私の目指す理想の空間だった。

 その先輩はお酒を飲まなかった。周りが酔い始めても、その先輩も同じように明るく楽しそうに話していた。誰かが「本当に一滴も飲まないんですか」と聞いた。「お酒を飲まなくても楽しい人生はあるんですよ」と楽しそうに言った。

 そのフレーズは何度も聞いたことがあったが、なぜかその先輩の言葉は私の意識を変えるほどに刺さった。目の前にある憧れの空間にいる人の言うことはきっと正しい。初めて、飲まない人の人生の方が楽しいのではないかと思ったのだ。

 自然の中で風やせせらぎの音を聞き、豆から挽いてゆっくりと落とした珈琲を飲みながら好きな本を読む。お酒を飲まなくてもすることはあった。理想に近付くためには、飲み過ぎて一日を無駄にするなんてことがあってはいけないのだ。

 いつまで続くか、この意識改革。まだ3日目…。

 

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