第9話 片方ずつの靴下

 長女の引っ越しの片付けの手伝いに行った。驚くほど散らかっている上に1ミリも片付けを始めていない。社会人になりたてで疲れているのはわかる。でも、一週間後にはこの部屋を出なければいけないのだ。

 どこから手を着けていいのか途方に暮れる。体育会にいたから、Tシャツやパーカーが山ほど出てくる。捨てる服、絶対に着る服、捨てられないけど部屋着にする服の3つに分けたら、半分が部屋着になった。家にいる時間が少なくなるから部屋着はこんなに必要ないと、ときめく服だけ選別させた。

 靴下に至っては、恐ろしい数あった。引き出しの中から小っちゃい靴下が数十足。「なぜか片っぽなくなるんだよね」とケラケラ笑っている長女に片方だけしかないのを全部捨てさせたら半分以下になった。棚やベッドを解体したり片付けていく場所の隙間から、相方らしき靴下が次々と出てきた。なぜここに?文句を言ってる時間もない。

 業者さんに運んでもらう時に裏がゴミだらけだったら恥ずかしいから軽く掃いてと洗濯機を動かした。爆笑した長女がうずくまったかと思うと、玉入れの如く、片方だけの靴下をポイポイ投げてきた。まさかの10足以上。「探してたやつ!」とはしゃぐ長女を一喝し、最後に洗濯機の下を箒でさらうと、底から片方だけの靴下がまた一つ、ポロリと落ちてきた。

 育て方を間違えたと反省した帰路の車中に、平井堅の「片方ずつのイヤフォン」が流れ、それと違う、と一人虚しくツっこんだ。

 

 

 

 

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