第23話 リサーチ

 南田みなみだしゅう……やせ形で顔立ちが良く、成績優秀。人望も厚くクラスではまとめ役。毎日の朝活のせいか体力もそこそこに運動もできる。おまけに誰にでも優しいときたもんだ。

 俺はまとめあげたメモ帳の情報を読み上げていく。


「あ、あのさぁ……さっきからぶつぶつと、なんなのアンドレ?」


 ナレーション側に徹底していたつもりだったが、背後につきまとう俺にしびれを切らした様子の南田。笑みは浮かべているが、困惑気味にとうとうこちらへ話しかけてきた。


「俺はただリサーチをしているだけだが?」


「どえらいリサーチだな。ってか、朝からずっとつきまとってきてるじゃんか。リサーチというか、もうストーキングだろ」


「……」


 リサーチよりもストーキング。南田の的確な指摘にぐぅの音も出ない。


「もう勘弁してよ」


「悪いがそうもいかない。こっちにはこっちの都合があるのでな」


「なにか困ってるなら話聞くからさ、許して」


 随分と焦っているな……なるほど、尾行に夢中で気がつかなかったが、現在地はトイレ前。流石の南田もそこまでついてこられるのは都合が悪いというわけか。


「すまん、気がつかなかった」


 俺は謝罪を述べ、しばしこの場から動かないことを約束する。あまり困惑させすぎると本末転倒になりかねないからな。


♢♢♢


「で、アンドレ。何企んでるわけ?」


 用を済ませた南田が、少し頬を赤らめ、ハンカチで手を拭きながら出てきた。そして、すぐさま俺の不審な行動について問いただしてくる。


「ここまでのストーキン……リサーチの結論だが、確かにお前はある程度信頼できるレベルに優秀だと言えるだろう。成績も首位をキープ、日常的に目立った問題行動も見受けられない」


「だからなんなのよ、俺のこと調べてさ」


「なら単刀直入にいうが、南田、生徒会副会長になれ。舘林さんからのご指名だ」


「!? アンドレ、それで俺に付きまとってたわけ?」


「まずは敵の分析から始めるのが俺のモットーなのでな」


「はぁ……会長、いくらなんでもアンドレ差し向けるかな~」


「で、どうなんだ? 答えはイエスかノーか」


「ま、待って。いくらなんでも結論焦りすぎでしょ」


「むぅ、確かにそれはあるな」


「少し考えて答えるよ。放課後までに返事する」


「わかった。ちなみに南田……」


「どうかした?」


「周りの女子からの好感度は高く、なぜ彼女がいないのかと不自然なほど、うんたらかんたら……」


「もうそれはいいって!」


 良い情報をナレーション気味に読み上げて、追い打ちだけかけておいた。

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