第8話
(マリナ視点)
最初村に来たグレイさんを見た時は凄く怖そうな人だな…って思いました。
大きな体、キツイ口調、不機嫌そうな表情…この人が私達からの依頼を受けて魔物を退治しにきた…なんてちょっと信じられませんでした。
しかも村中からなんとか集めたお金もとても少なくて…あれだけじゃ誰も…そう思ってましたから余計に。
グレイさんは村に着くなり直ぐ魔物退治に出ようとしてましたが、日も傾いていたので一晩泊まっていくように村長がお願いして、グレイさんは渋々といった感じで了承しました。
そしてその後で村長や村の大人達が私に頭を下げてお願いしてきました。
一晩だけ彼の相手をしてくれ。 もしそれで子供ができても村人全員で責任をもって面倒をみるから…と。
本当は凄く嫌だけど。
私のお母さんは私を産んで直ぐに亡くなって、お父さんも私がまだ小さな時に……。それ以来ずっと村の人達に助けてもらってきた私には断る、なんて選択肢はありませんでした。
その日の夜、目一杯おめかしさせられてグレイさんの泊まってる空家へと足を運びます。
私は震える手でドアをノックしました。
頑張って覚悟を決めましたが普通に断られてしまいました…。
私はそんなに魅力が無いでしょうか?
何もせずに帰されてしまい、他の人達もとても不思議がってました。
私は次の日、せめてこれぐらいは…と朝食を作ってグレイさんの所へ再び訪れました。
その時何故か私の手は震えることはありませんでした。
グレイさんと交わした言葉は決して多くはありませんが、彼がとても優しい人なのは私にも分かりました。
その…………………見た目と違って。
――――――――――
(第三者視点)
森の中を青い肌をした体の大きな魔物、エルダーオークが木々をなぎ倒しながら全力で走る。 よく見ると右腕が肘から先がなく、体は切り傷だらけ。その表情は苦痛と屈辱、そして恐怖で歪んでいた。
ほんの少し前まで意気揚々と配下のオーク達を連れて、近くにある人間達の集落を襲おうとしていたはずなのに。
逃げ回る人間を追いかけ、玩具にし、男は
しかし今、このエルダーオークは自身が家畜と見下していた人間に逆に追いかけ回されている。
つい先程森の中で遭遇した人間。今まで自分達に出会った人間は恐怖に顔を歪めて逃げ回るか、腰を抜かして無様に命乞いをするか…たまに立ち向かってくる者はいても、全く相手にならない奴等ばかりだった。
普通のオークに比べエルダーオークは知能も高く、ある程度は言葉も理解できる…はずだが何故か男の言葉は全く理解できなかった。
「ああ、探す手間が省けた。 なあお前、玉置いてけよ。二つ共な、後ついでに首」
改めて思い出してみてもやはり分からなかった。
しかも男の強さは異常だった、向かっていった配下のオーク達は一瞬で首を跳ねられ、驚いた隙に距離を詰められ股間付近を剣先が掠めた。
冗談ではないとエルダーオークは反撃をするも全ていなされ、男が剣を振るう度に体に傷が増える。
そして右腕が切り飛ばされてから漸く理解した。
勝てない、逃げなければ。
元配下の死体を投げつけてから全力で逃げ始めた。
「チッ! おい逃げるなら玉と首は置いていけよ!」
…逃げなければ。
それから森の中を走った。方向なんてどうでもよかった、兎に角あの男から距離をとらなければ…。
ここまで来れば大丈夫だろう……そう思って後ろを振り返るエルダーオーク。
「鬼ごっこは終いか? ならもう諦めて
男が邪悪な笑みでそう言った。
―――――――――
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