第48話 新たな出会い

 ドカーンと爆発したかの様な音で目が覚めた。


「な、なんだ!? 敵襲か!?」


 体を起こしてキョロキョロすると他の2人もビックリしていた。


「何が起こっているんだい!?」


「何があったの!?」


 部屋の出口をみると壊された扉が目に入った。そしてその扉の前で般若の様な顔をしたマーリンがいた。


「集合時刻に遅刻とはどう言うつもりだ?」


 ふと部屋に飾られていた時計を見ると8時30分だった。集合時刻は8時のはずだから30分の遅刻だ。


「いや、これは……」


 俺がなんとか言い訳しようとすると頭をガシッと掴まれ持ち上げられた。


「なんだ言ってみろ。ただし下手な事を言えば分かっているな」


 と言って握る力が強まった。


「……寝坊しました」


 嘘をつけるわけがない。2人を見ると顔が真っ青だ。


「怒っている時間もない。30秒で支度しろ」


 そんなの無理だ。でも今のマーリンに逆らったら確実にやられる。


「「「はい!」」」


 俺達は言われた通り30秒で準備をした。


「よし、全員準備はできたな? なら行くぞ」


 と言われても開会式に普通に行って間に合わないだろう。ここからだと40分は会場までかかるはずだ。


 俺達が靴を履いて外に出ようとするとマーリンは俺達を止めた。


「そっちから行っては間に合わん。こっちから行くぞ」


 そう言って、マーリンは窓を開けた。……これはつまり……


「「「うぎゃぁぁぁぁ!!!」」」


「ハハハハハハハ! 風を浴びると気持ちいいな!」


 俺たちの悲鳴が響き渡る中1人の女の笑い声が響き渡る。

 勿論マーリンだ。俺達は今空を飛んでいる。

 箒の上で立っているマーリンは気持ちいいかもしれないが、吊るされている俺たちの身になってくれって感じだ。


「お、おろしてくださいー!」


「ダメだ、これは寝坊した貴様らへの罰でもあるからな!」


 そう言ってさらにスピードを上げるマーリン。


「「「ごめんなさーいぃぃぃ!!!」」」


 俺たち3人は目的地に着くまで謝り倒すのだった。



「さあ、着いたぞ」


 あれからドナドナされて俺達は選抜戦会場の外まで連れてこられた。


「はぁはぁ、死ぬかと思った」


「こんなに大地がありがたく感じたのは初めてだよ」


「そ、空を飛ぶなんて高位な魔法を体験できると思った僕が馬鹿だった」


 俺達は四つん這いになってそれぞれの感想を吐いた。上から俺、カイン、ヒーデリックだ。


「何を遊んでいるんだ早く会場に入るぞ」


 別に遊んでいるわけじゃないぞ。辺りを見渡すと人通りが少なくなっていた。

 確かに早く行かないと本当に遅刻してしまう。


 立ち上がって、マーリンの後を思うと走り出すと突然目の前に青髪の眠たそうな目をした美少女が現れた。

 髪は三つ編みのサイドテールが胸のあたりまで伸びていて黒色のゴムで結ばれている。

 制服を見るからに俺の学校の生徒ではない。レオナの学校の制服とも違う服だ。


「……………」


 俺が左から抜こうとしても少女は左に行き通せんぼされる。


「リック知り合いなの? 僕達はマーリン先生が怖いから急いで行くね!」


 と言い残してカインとヒーデリックは走って行った。


「待て! 知り合いじゃ……ってもうあんな遠くにいるし」


 止めようとした時は2人の背中は小さくなっていた。余程マーリンが怖かったのだろう。


「…………」


 目の前の少女は何も言わずに俺をみている。


「なんか言えよ!」


 通せんぼしてるってことは何か用事があるはずだ。


「……なんか」


 何かを考えた後に言った言葉がそれだ。俺キレてもいいよな? 許されるよな?


「今は不思議ちゃんの相手してる暇ねぇんだよ! 用がないなら退いてくれ!」


「……レオナが面白いやつだって言ってたのに貴方からは何も感じない。……まだ貴方と一緒にいた人の方が楽しそう」


 かっちーん。もう完全に怒りましたよ。えぇ、初対面で失礼すぎません? 俺は女の子でも殴れる人間だぞ。


「喧嘩売ってんだったら買うぞこの野郎!」


「……野郎じゃない」


 そう言うこといってんじゃねぇ! こいつは人を怒らせる天才か?


「殴るぞ? もう殴っちゃうよ?」


「……お前じゃ私に叶わない」


 ムカつく! マジで一発殴ってやる!


 俺が拳を振り上げたその時1人の女子生徒が声をかけてきた。


「レイさーん! こんなところにいたんですか!? 開会式始まっちゃいますよ! 早く行きましょう!」


 女子生徒がそういうと、レイと呼ばれた少女は頷いた。


「……分かった。お前も早く行けよ」


 そう言ってレイは会場へと向かっていった。


「お前が俺を止めたんだろうがぁぁぁ!!!!」


 俺はこの行き場のない怒りを天に向かって吐き出して会場へと向かった。

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