第45話 学園長

「……誰?」


 俺の言葉に貴族の人は顔を真っ赤にした。


「貴様この俺を知らないのか!?」


 と言って来たので有名人なのかと思い後ろを向いて他のみんなに知り合いか確認すると全員が首を横に振った。


「いやぁ、すみません。わからないです」


 俺の言葉に後ろの取り巻きがざわざわした。


「俺は2年のソールド・シンファーだ!」


 先輩だったのか。


「ソールド様のことを聞いてもその顔ふざけているのか! ソールド様は2年で唯一の公爵様なんだぞ!」


 取り巻きの1人が説明してくれた。それにしても公爵って言うとかなりくらいの高い貴族なのか。


「いやぁ、そうなんですね。すみませんでした」


 フフフ残念だったな! 対貴族最強切り札のエリカがこっちにはいるんだよ!

 ふっ、こっちはいつでもエリカを出す準備はできている!


「なんだお前この俺ソールド様を馬鹿にしているのか?」


 と言って近づいてくるソールド先輩。

 が、それを誰かが肩に手を置いて止めた。それを見ていた取り巻きの生徒は驚いていて声も出せていない。


「あ? 今俺はこいつにはな……し……を……」


 その人物の顔を見たソールド先輩もどんどん顔色が悪くなっていく。


「今のは平民差別か? もしそうだと言うのなら私の立場からすると見逃せないな」


「リ、リディア様……」


 生徒会長だ。やっぱこの人圧が半端ないな。エリカからはあまり感じないけど王族の気品ってやつが漂ってるな。


「どうなんだ?」


「な、何もしてません!!」


 そう言って逃げるようにこのテーブルから移動した。


「はぁ……すまないな。私の管理不足で君に嫌な思いをさせてしまった」


 ソールド先輩とその取り巻きを呆れた目で見送ってから俺に頭を下げて謝罪をした。


「俺は大丈……ぶへっ!?」


 俺が大丈夫だと言おうとすると誰かに突き飛ばされた。


「お姉様は悪くないです! リックもこれくらいじゃ気にしないわよね!」


 と言ってエリカはドンドンとまあまあな強さで背中を叩いて来た。

 ……そういえばエリカはお姉ちゃんであるリディアのこと大好きなんだよなぁ。コンプレックスを感じてる部分はあるが、それ以上に好きなんだよな。


「お、おいエリカ。リック君は大丈夫か」


 と俺に心配した表情を向けているが、実は内心生徒会長も喜んでるんだよなぁ。多分誰もいなかったらニヤニヤしているはずだ。

 だってこのお姉ちゃんもシスコンだし。


「あぁ、俺は大丈夫です。それより親睦会って事らしいですけどこれから何かするんですか?」


「ん? あぁ、これから学園長からのお話がある。それが終われば後は会話を楽しむなり、食事を楽しむなり好きにしてくれて大丈夫だ」


 うげぇ、学園長の話とかあるのかよ。特に意味もないのに長々と話すから嫌いなんだよな。


「そうなんですね。ありがとうございます」


 とお礼を言うと学園長が来るまでは楽にしていてくれと言って生徒会長はおそらく3年生が集まっているテーブルへと戻っていった。


 それから少しの間みんなと話していると長い白髭を蓄えたおじいちゃんが壇上へと上がった。

 すると会場にいる全員が会話を止めて壇上に注目した。




「私は学園長のルシウスだ。1年生の者たちは初めましてだな。そして、まずはこの場にいる1年生5名と2年生5名、3年生5名の者達に賛辞を送ろう。君達が選抜戦のメンバーに選ばれたのは君達の頑張りの結果だ。そしてこれに満足するのではなく、これからも頑張ってほしい」


 ……話が長くなりそうだし目の前にある料理でも食べようかな。

 目の前にある肉がうまそうだ。牛のステーキかな? 焼き方はレアで俺好みだ。

 あっ、この肉うまい。柔らかくてジューシーだ。この世界にあるのかは分からないが元の世界で行くとA5ランクとか余裕でいくな。


「そして今回、君達も知っていると思うが、平民の学生もメンバーに入っている。我が学園では初めて平民の生徒が選抜メンバーに選ばれたわけだが、私は彼を誇りに思っている。そして彼がこの学園で平民と貴族の架け橋になってくれるんじゃないかと期待している」


 ……全部食べてしまった。ん? ヒーデリック前に同じ肉が置いてあるぞ。

 ……1切れくらいもらってもバレないよな。


「それが彼だ! リック・ゲインバース君!」


 と同時に俺へ視線が集まった。


「えっ? なに?」


 ちょうど俺のフォークがヒーデリックの前にある肉を刺した瞬間だ。


「僕のステーキに何をしているんだ!?」


「アンタは話を聞きなさい!」


「もっと行儀よくしてください!」


「いてっ!?」


 上からヒーデリック、エリカ、ソフィアだ。しかも下の2人には席が隣だったこともあり同時に拳骨された。


「………コホンッ! 彼が貴族と平民の架け橋になってくれるはずだ! 多分……」


 学園長の語尾がだんだん弱くなっていった。


 それからは大人しく学園長の話を聞いていたが、特に気にする内容でもなかった。

 まあ簡単に内容を纏めると選抜戦では頑張って1位を取って来てくださいとの事だ。


 そして学園長の話が終わってからも晩餐会は続き俺達は親睦を深めたのだった。


 まあ2年生と3年生からは睨まれていたんですけどね。


 はぁ、親睦会ってなんだろう。

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