第30話 パーティメンバー

 ヴィナス様からダンジョンに行けと言われて本当は直ぐにでも行きたかったが現在俺は学校で授業を受けている。

 理由は至極簡単だ。マーリンの授業をサボったら殺される。


 だから休みの日まではダンジョンに行くことができない。


 そこでキーンコーンとチャイムがなった。


「よし、朝の授業はここまでだ。解散!」


 やっと授業が終わった。マーリンの授業は基本的に実技しかしないから疲れる。というか腹減った。


 リンとレオンでも誘っていくか。


「おーい、リン。レオン、食堂に行かないか?」


「そうだな、俺は構わ……」


 そこで何故かレオンの言葉が止まった。


「リックさん。ご飯一緒に食べませんか?」


 振り返るとソフィアがいた。なんでここに? ……たまたま授業していた場所が近くだったとか? ここ練習場だけど……


 まあいいか。


「あー、悪い。俺レオンとリンと……ッ! 何すんだよ!」


 ソフィアの誘いを断ろうとするとレオンが口を塞いできた。


「俺たちの事はいいから、頑張れよ」


 そう言ってサムズアップして去ってに行った。


 ……なんか勘違いされてるような気がする。


「……やっぱ予定無くなったし、行くか!」


「はい!」


 俺達は食堂へと向かった。


「マーリンのやつ、俺ばっか狙い打ちしてくんだよなー」


 他愛もない話。というか愚痴を話しながら一緒に廊下を歩く。


「それだけ期待してるんですよ」


「いや、あれは虐めたいだけだと思うけどなぁ」


 そういうとソフィアはフフッと笑った。


「リック君が死にかけた時マーリン先生も本気で心配してましたよ」


 そうなのか。それは嬉しい事だが……


「そ、そうなのか」


「どうかしましたか?」


 コテンと首を傾げる仕草が可愛いが、そうじゃない。

 気のせいかもしれないが距離が近いような気がする。なんなら肩とか当たりそうだ。


「……近くね?」


「普通ですよ。友達なんですから」


 いや普通じゃないような気がするが……


 はっ!? わかったぞ。ソフィアは裏の顔を隠している。だから本当に気を許して友と呼べる人はこの学園にはいないはずだ。


 だからこんなに近いのか。


 なるほど、なるほどと1人納得していると突然後ろからバタバタと走る音が聞こえてきた。


「リック! アンタ何やってんのよ!」


 声のした方を振り向くと息を切らしたエリカの姿があった。


「どうしたんだ? そんなに息を切らして」


「どうしたんだ? じゃないわよ! なんでソフィアとそんなに近づいて歩いてるのよ!」


 ソフィアとエリカって知り合いだったのか。知らなかった。


「あら、エリカさん。友達なんですからこれくらいは普通じゃないですか?」


 フフフと笑いながらソフィアは言った。


「普通じゃないでしょ! リック! アンタもなにまんざらでもなさそうな顔してるのよ!」

 

 実際まんざらでもないんだけどな。ソフィア美人だし。……というかエリカはなんでここまで噛み付いてくるんだ?


 はっ! もしかして……


「ソフィアに対して嫉妬してるのか!」


 あっ、思わず口に出してしまった。


 エリカも友達は少ない方だし。多分友達を取られたと思ったのだろう。


 可愛いやつめ。


「……………る……い」


 俯いて何かを喋るエリカ。何を言っているのか聞き取れない。


「どうした? なんだったら一緒に飯食うか?」


「うるさい! バカ!」


 その言葉と共に魔力の球が俺に向けて飛んできた。


「ぶへらっ!?」


 俺は衝撃に吹き飛ばされるのだった。




「いい加減落ち着いたらどうですか?」

 

 美味しそうなステーキを食べながらソフィアがエリカに声をかけた。


「落ち着いてるわよ!」


 エリカはドンっと勢いをつけてフォークを振り下ろし、ステーキを刺した。


 あれから俺達は食堂に着いた。そして目の前の2人は優雅に昼食を食べているが、俺は食べれていない。なんなら地面に正座させられている。


 私は無神経な発言をしました。と言うプラカードをつけてだ。


 プラカードなんてどこから取り出したんだ? と思う人もいるだろう。エリカが錬金魔法で作っていた。魔法って超便利だよな。


「あのぉ、僕もご飯食べた……ッヒ!?」


 途中で口が止まる。何故かって? ナイフが横切ったからだ。


「あら、ごめんなさいリック。手が滑ったわ」


 エリカは微笑むが目が笑っていない。はっきり言って超怖い。


「い、いえ」


「そういえば何か言ったかしら?」


「な、なんでもありません」


 ガクッと項垂れる。あんまりだ。俺もお腹空いているのに。


「……リック。今週の休み付き合いなさい」


 俺が空腹を我慢していると突然エリカが声をかけてきた。


「あっ、ずるいです! リックさん今週は私と遊びませんか?」


 ソフィアはそう言うが何がずるいんだ? 


「何言ってんのよ! リック私を選びなさい!」


「リックさん!」


 と、2人がこちらを見てくるが俺の答えは決まっている。


「いや、無理だよ。今週は用事あるし」


 ダンジョンに行く予定があるのだ。


「用事ってなにをするのよ!」


 エリカに問い詰められる。


「ダンジョンに行かなくちゃいけないんだよ。ある人? と約束しちゃって」


 相手が神だと言うことは言えないので誤魔化しておく。


「なら私も着いて行ってあげるわ!」


「私も行きます!」


 2人はそう言ってくれるけど無関係なのに申し訳がない。


「2人とも関係ないだろ? あれだったら2人で遊びに行けよ。2人とも暇なんだろ?」


 俺がそう提案するとエリカとソフィアは睨みあった後にありえないと言っていた。


 お前ら本当は仲良いだろ。


「いいから連れて行きなさい!」


「そうですよ! それに1人でなんとかなるんですか?」


 ……確かにパーティメンバーはいた方がいいか。


「じゃあお願いします」


 俺は2人に頭を下げた。


「それでいいのよ」


「はい」


 2人は満足げに頷いている。


「じゃあご飯食べてもいいか?」


 正直言って限界だ。これでダメと言われても俺は無理にでも食うぞ。


「いいわよ。……悪かったわね」


 よかったエリカからのお許しが出た。


 その言葉を聞きすぐに学食のおばちゃんの元へ行き、今日の昼食であるステーキをもらいに行く。


 そして席へ戻り、ステーキを前に手を合わせる。


「いただきます!」


 そして俺がフォークを握るとチャイムがなった。


「あっ、授業に戻らないといけませんね」


「ソフィアとエリカは先に戻ってでいいぞ、俺はこれを食べてから行くから」


 次もマーリンの授業だったはずだけどまあ大丈夫だろう。適当にトイレが長引きました。とか言えばそれ以上は何も言われないだろう。


 ん? なんだ2人とも俺の後ろを見た後に顔を下に向けたぞ。


「リック。いい度胸だな。アタシの授業が始まると言うのに」


 聞き覚えのある声に思わず体が止まる。そして後ろを向くとマーリンの姿があった。


「さっさと来い」


 マーリンはそう言うと俺の首根っこを掴んだ。


「待って! 待ってください! 俺のステーキが! ステーキが!」


 俺は足掻くがマーリンの力の前にただ連れていかれるだけだ。


 まあ、パーティメンバーが決まったし、良しとするか。


 因みにその後の授業で俺が死ぬ思いをしたのは別の話だ。

 




 

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