第3章 神様の言うとおり!

第28話 信者探し

 学園に帰り数日が経った頃俺は神からの啓示を受けた。

 頭がおかしくなったわけではない。文字通り神の啓示だ。


 今日の夢の中での出来事だ。


「ちょっとリック君! しっかり信者探してる? 早く探してくれないと女神パワー没収しちゃうよ! そしたらマジTBSって感じになるよ? じゃあね! なおこの啓示への反論等は一切受け付けてないのでよろしく!」


 との事だ。しかしテンションバリ下がるをTBSっていう感じが最近のギャルみたいでなんか複雑だ。


 没収は流石に困るし、信者を増やせば魔力が上がるとも言われたので増やすことには俺も賛成なんだが、なんと言って誘おうか。


「んー……」


「どうしたの? 悩み事?」


 今は登校中でカインと一緒だ。そうだ! カインを誘ってみるか。


「なぁ、カインって神様とか信じてるか?」


「急にどうしたの? ……もしかして怪しい勧誘?」


 カインがゴミを見るような目で見てきた。切り出し方が悪かったか。


 校舎に行く途中でちょうど広場の前に来た。


 おっ! いいこと思いついた!


「カインちょっといいか?」


「え? うん。いいけど……」


 俺は少し嫌がっているカインを強引にヴィナス様の像の前まで連れてくる。


「どうだ!」


「……どうだってなにが?」


 ……反応が薄いな。


「ほら、女神様の像が目の前にあるぞ? 信仰したくなったろ?」


「いや、ならないよ」


 冷静に考えてみるとそりゃそうか。信者になった時のメリットを説明しないとな。


「じゃあまずお前が神に求めるのはないか?」


「えぇ? 別に何も求めないけど……強いて言えば平和な世界とか?」


「そうか。ならこの女神様! ヴィナス様を信仰するべきだな! ヴィナス様は世界平和のために色々なこと頑張っておられるんだぞ!」


 知らんけど。まあいいだろう。一応神だし何かしら人の為になる事とかしているだろう。


「なんか胡散臭いよ。どうしたのさ?」


 胡散臭い、だと?


「そろそろ授業だし、もう行くよ。じゃあね」


 俺がショックを受けているとカインはそそくさと校舎の方へと向かってしまった。


「まて! カイン! ヴィナス様は美人だぞー! おっぱいでかいぞー!」


 だが、カインが立ち止まる事はなかった。


「……忘れてた。カインって歳下好きなんだったけ」


 公式設定でそんな設定があったような気がする。

 ……ミスったな。作戦を間違えたか。まあいい。他にも人はいるからな。


「おはようリック」


 教室に入るとレオンがいた。


「おはようレオン君。君、神様に興味ないかい?」


 レオンの肩をがっしりと掴み逃がさないようにしてから笑顔で話しかける。


「おい、リック。なんか変じゃないか?」


「いや普通だ。どうだ? 今、ヴィナス様を信仰すると、ヴィナス様直々に入信の挨拶をしてもらえることになっているんだけど、どうかな?」


「いや、俺はいい。遠慮しておこう。授業があるんだ席に……」


 そこで持つ力を強める。


「ほら、神も言っているよ? 私に入信してくれたらマジテンアゲ! みたいな? とね」


「何故ギャル語!? しかもそれ古いような気がするぞ!」


「ほら、どうべフッ!?」


 後ろから殴られた。後ろをみるとマーリンが居た。


「授業が始まるぞ。すぐに席へ戻れ」


 ……マーリンにも言ってみるか?


「神? そんなものを信じるわけないだろ? 大体神など居なくともアタシの魔法があれば大抵の事は可能だ」


 とか言い出しそうだ。


「……はぁ」


 他をあたろう。


「ほぅ? アタシを見てため息とはいい度胸だな? 貴様は午前中は走っていろ!」


「いや、違うんです!」


 しまった。ため息が出てしまった。


「言い訳するな!」


 マーリンが後ろに魔法を展開する。


「はいぃぃぃ!」


 俺は半ば追い出されるようにして教室を出たのだった。




 昼休みになり、マーリンからもういいぞ。と言われ疲労のあまり倒れこんでいるとリンが来てくれた。


「だ、大丈夫ですか?」


「おう、なんとかな。……それよりリンって神様って信じるているか?」


「はい、信じています。そ、それがなにか?」


 おっ! 好感触だ。


「ならさならさ! 誰か信仰してる神とかいるの?」


「信仰はしていませんけど……」


「じゃあ来てくれ!」


 俺は立ち上がりリンを連れてヴィナス様の像へと走った。



「じゃーん! こちらヴィナス様です!」


「えっ、あっ、はい」


「俺が信仰してる神様なんだけど、いい神様だから信仰してみない?」


「いいですよ」


 えっ、マジ?


「いいのか? そんな簡単に返事して」


「リック君が信仰してるんです。きっといい神様ですから」


 そう笑顔で言うリンに少し申し訳なくなる。が騙してるわけではない。悪い女神ではないだろうし。


 するとリンが象の前で跪き胸に手を置き目を瞑った。


 ……終わったのか? 


「これでいいんでしょうか?」


「た、多分な。ありがとう! きっとヴィナス様も喜んでるよ!」


 分からんが多分これで大丈夫だろう。


「じゃあご飯食べに行きましょうか」


「おう!」


 俺とリンは女神像を離れて食堂へと向かった。



 あれから時間が過ぎて放課後になった。


 後1人くらい入信させたいな。


「やあリック君も今からかえるのかい?」


 ちょうど良いところにヒーデリックがいた。


「おう。ところでヒーデリックは神様を信仰しているか?」


「あぁ、当然だろう。僕が信仰するのはアーレス様さ。戦の神と言われる偉大なる神だ」


 なんだもう信仰する神がいたのか。


「じゃあダメかぁ」


「どうしたんだい?」


「いや、実はヴィナス様を信仰してほしくてさ」


 だが他に信仰する神がいるなら無理だろう。


「ああ! いいぞ!」


 えっ、いいの?


「多重信仰とかダメだろ」


 思わず口に出てしまった。


「そうなのかい? だが友の頼みだ。僕もヴィナス様を信仰しようじゃないか!」


「なら頼むぜ!」


 そしてリンと同じような感じで信仰をしてくれた。

 多分これで大丈夫だろう。

 それからヒーデリックとは別れ自分の部屋へ戻った。


 そんな感じで俺は1日を終えるのだった。

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