第2話 異世界転生

「ちゃんと僕の話を聞いてるかい?」


「え、あ、お、おう」


 突然目の前の金髪の可愛い系のイケメンに言われて驚く。


 俺はベッドで寝てたはずじゃあ……それになんで外にそれにこいつ誰だ?


「絶対聞いてなかったよね? だから入学式の前に一度寮へ荷物を置きに行こうよ!」


 何を言っているんだ? 俺は大学2年だぞ? 入学式なんてイベントはもう参加する事はないぞ。

 これは夢か?


「なにを、言って……」


 そこまで言いかけてハッとする。この男の顔どこかで見たことあるのだ。


「本当にどうしたの? リックってば頭でも打った?」


 ん? リック? それって幻想学園の……


「な、なぁお前名前なんていうんだ?」


「本当に大丈夫? まあいいや、僕の名前はカイン・レーンスフィアで家は貴族で位は伯爵だよ」


 待て待て待て、頭がクラクラする。

 カイン・レーンスフィアといえば幻想学園の主人公の名前だ。それになんて言った? 俺の事をリックって言ったのか?


「お、俺の名前は?」


「リック・ゲインバース。僕の友達だろ? 本当に大丈夫かい?」


 おーい、と俺の目の前で手を振るカイン。


 そんな事はどうでもいい。今は俺の名前だ。幹亮介ではなく、リック・ゲインバースと目の前の男は言った。


 ああ、つまり俺は……


「異世界転生したってことかよ!?!?」


 その場で自分の顔を触りながら叫ぶ。カインは俺が叫んだ事により、ビクッと肩を震わせコイツ大丈夫か? 的な視線を送ってくる。


「道端でうるさいのよ!」


「グヘッ!?」

 そんな俺に突然後ろから蹴りが入る俺はその衝撃で前のめりに倒れ込んでしまう。


「リック!? 突然何を……ってエリカ?」


 俺を庇う為に前に出てくれたカイン。流石主人公だ。それよりエリカだと?


「久しぶりね! カイン! ……それとリック」


 カインの方へと笑顔を向ける少女の顔を見てハッとする。メインヒロインのうちの1人エリカだ。

 赤色のツインテールでお人形のような顔に少し生意気な雰囲気。

 間違いない、この子はエリカだ。ゲームにおいて最初に出会うヒロインで主人公とリックの幼馴染にあたるキャラだ。


「本当にエリカなの!? 久しぶりだね! まさかこの学園でエリカに会えるなんて! 僕は嬉しいよ!」


 そう言ってガバッとエリカの手を握るカイン。それに対して頬を赤らめながら満更でもなさそうなエリカ。


 俺は何を見せられているんだ。


 それにしても流石主人公、エリカと再会した時に1番好感度が上がる行動をしてやがるぜ。


「コホンッ! 姫様そろそろ」


 後ろにいた執事が態とらしく咳払いをしてエリカに声をかけた。確かゲームにもいたな、確かセバスチャンだっけ?

 入学式以降で出てくることもないし、忘れてしまった。


「そうね、アンタ達も遅れずに入学式に参加するのよ」


 そう言ってエリカと執事は去っていた。


「にしてもエリカと会うなんて驚いたね」


 カインの言葉になんとか頷く、俺としては異世界転生した事の方が驚きだがここではとりあえず話を合わせよう。


「ああ、そうだな。それより寮に行くんだろ? さっさと行こうぜ」


「そうだったね、急ごうか」


 俺たちは手に持っている荷物を置きにいく為に寮へと向かうのだった。

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