思いが整理されても、ほろ苦さは変わらない。

最初に頭に浮かんだのは、夏休みの宿題を代行するプロでした。

幼い様子ながらも、シーンは洗練として意識の流れも少なかったためです。

その印象が崩れたのは、読み進めていく内に現れた語り手の情緒でした。幼少期特有の脱抑制された好奇心は物語の推進力になると同時に、その人の内面を強く描き出します。

読者は時に我が身を振り返りながら、あるいは推し量りながら、語られる人を読むことになりますが、その過程で物語を覆う文体への違和感は薄れていきます。

そして作者の思い出であることを再認するに至り、文体への目は完成します。私自身覚えのある経験も多く、読み終えた後も余韻がしばらく残る読書体験となりました。

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おんなのことぼく