第14話 猫でも数集まりゃ脅威

 その時、

「ねぇ、」どこからか声が聞こえた。私が聞こえるなら二人も聞こえたろうと、それぞれ見るも反応変わらず。

 もしかして、私にしか聞こえない?とりあえず応えてみよう。

 「もしかして、私に話かけているの?」

 頭の中で言葉を話してみると、肯定する気配があった。

 「あの意地悪な人間が、僕たちの仲間をいじめるんだ。近寄らないようにしているんだけど、あいつらが探し回るから安心して暮らせない」

 「待って、君たちは一体?」

 「君も僕たちと同じだろう?」

 「猫?」

 「あぁ。」

 私に思念波を送ってきた猫に数を聞くと、かなりの数が散らばって潜んでいるらしい。

 「あの意地悪なやつらを、その猫全員で怖がらせてみない?」

 オークとチョークが悪たれ共と乱闘を始めて暫し、どこからともなく聞こえてくる猫の鳴き声に、三人とオークとチョークは一斉に動きを止めた。

 まず三人が怯えだし、オークとチョークは顔を見合わせる。そろそろ頃合いかな?

 「さぁみんな、三人を失禁させよう」

 数え切れないほどの猫が、路地や建物の屋根から溢れ出てきた。

 オークとチョークはいきなり現れた猫の群れの数に驚いていたが、三人の怯えようは尋常うではない。まるで、なにか後ろめたいものがあるかのように。

 まさかと、「もしかしてあの三人は君たちを・・・」

 最初の猫や、やって来た猫達が口々に叫ぶ。

 「そうさ、僕らの仲間を連れていった」

 「あいつの家族は猫を大切にしているがあいつはその当て付けをするように・・・」

 「口にするのもおぞましい」

 「あいつらはひどい!」

 ニャーニャーの音に怨嗟が込められ、言葉が分からなくとも何を言いたいか分かったオークとチョークは、三人を見る目に殺意を込める。

 ますます縮こまった三人に、きつめのお灸を据えてあげよう。

 イヴリース様に教わった魔力操作で、脳内で私が知る限りの邪神に猫と分かるよう見た目を重ねる。

 オークとチョークと猫達には見えないよう、恐怖の帝王が描きそうな人間の本能に訴えかけるおぞましい姿を。

 「お前達は我が同胞を苦しめたな、万死に値する。何か申し開きはあるか?」

 言葉にならない泣き言を、ズボンを尿で濡らしながら、鼻水と涙まみれの顔で三人は許してくれといった意味の言葉を繰り返す。

 「失った命は戻らないし、傷ついた心も癒されない。お前達はどれだけ彼らが怖かったか思い知るべきだ」

 猫達の記憶を三人の脳に流し込んだ。

 痛覚等五感も全て。

 どれだけの時間がたったろう。のたうち回る三人を猫と二人と私でシラーっと見つめていた。

 頭を抱えながら、ごめんなさいと謝罪の言葉を繰り返す。

 一時的に謝罪しているか分からないから、猫好きという彼らの家族にことの子細を報告しよう。あと猫の記憶から三人がどんな悪事をしたのかを、クレイの町の人々の脳に流してやろう。

 猫に怯えた三人を残し、猫とオークとチョークと私はシーダーとイヴリース様の元へ戻った。

 猫は虫がお腹にいたり、病気を持っていた子もいたのは、イヴリース様の魔法で除去したり治療してもらった(そんなんあるなら早く教えてくれよ吝ん坊め)。

 かくかくしかじかでクレイの町の猫の窮状を二人に報告すると特にシーダーが三人を殺しにいくと聞かず、オークとチョークとイヴリース様が全力で止めた。私はというと、シーダーの顔にビタリと張り付いて止めた。

 三人はというと、リーダー格らしき金持ちの息子の家族と使用人に猫にした仕打ちを告発したら、庭を掘り返し大量の骨が見つかった。骨の発見より、猫が大きく掘った穴に大量に埋められていた事実に家は悲鳴で溢れ、懇ろに一匹ずつ弔った。骨しか分からないが、墓にそれぞれ名前を書き、美しい花を植えて寂しくないようにした。

 猫が大好きな一家で唯一の猫嫌いだった息子は、猫を苦しめて鬱憤を晴らしていたが、それが明るみになったらまず父親にひどく責められた。大好きな息子が、目に入れてもいたくない猫を・・・。泣きながら息子を殴り、息子を殴れない使用人らは目線だけで殺せそうな目付きでにらむだけだった。

 それでも十分に怒りは伝わったらしく、息子は勘当され、聖職者の元で悔い改める日々を送るつもりらしい。それから数年後、息子は猫のために生きる聖職者になるのだが、それはまた別のお話。

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