主視点あらすじ

1章あらすじ前編 視点ジェイド(約1,500文字)

民間軍事会社“ステルスハウンド”の代表“カイム・ノヴェク”はある子供を自らの館へ招いた。


その名は“ヨルムンガンド・ヘルレイア”。


子供は伝説の蛇の名を背負う通り、人間ではなかった。


通称“ヘルレア”には性別が無く、そして既に十代半ばで死期を間近に控えていたのだ。


ヘルレアは人間のつがいを得ると、その伴侶と相反する性に変じ、大人となり命を永らえる。そして同時に伴侶が身を寄せる組織に寄生し、“巣”として支配するのだった。


そしてカイムが人外ヘルレアを招いたのは、世界蛇ヨルムンガンドと呼ばれるその子供が、双生児であったからだ。


双生児は互いに激しい攻撃性を示し、“巣”に潜むと同時に、相手を殺すまで人間社会へ終わらない紛争を招く。その者の達は死の王とまで呼ばれる強大な災厄だった。


このままヘルレアが番を持たずに死ねば、対になる暴虐の王をのさばらせる事になると、カイムは自らがヘルレアの番になろうと招いたのだった。


しかし、カイムはあっさり振られた。


撃沈するカイムだったのだが、そんなおり任務に出していた兵士が連絡を絶った。カイム等が異変に対処しようとする中、ヘルレアの企みで猟犬ハウンド達は翻弄され共闘する事になるのだった。


ヘルレアによると寒さの厳しい北方“東占領区”に、対となる世界蛇の気配が僅かにあるという。“東占領区”というのは、元はアルケニア国から独立したという、内情が漏れ聞こえて来ない独裁国家であった。


しかし、行方不明の兵士達は東占領区へは派兵されていない。その異常事態と緊急性によって、班として動いていた兵士達は分裂して動く事になった。


ヘルレアと共に行動するのは、カイムの配下である兵士“ジェイド・マーロン”。


しかし、ジェイド達兵士とヘルレアは仇敵だ。


ジェイドは反発を抱きながらも、ヘルレアと共に行動を余儀なくされた。


北ヘ向かう程雪は激しくなり、同時に敵の攻撃も始まる。それは“使徒”という異形に成り果てた、元人間の兵隊からのものだった。


王は“綺士きし”という手駒を持つ。綺士はヨルムンガンドが自ら下した下僕だ。その綺士が作り出すのが使徒だった。


二人は使徒の攻撃を退け、王の気配を辿り続ける。そうしてジェイドはヘルレアと過す内に、世界蛇の存在に敵意以外の感情を見出し始めるのだった。


過酷な環境の中、遂に二人は綺士に出会う。


ヘルレアは綺士を押すも一歩のところで逃げられてしまう。それはジェイドに深い懸念を抱かせた。


王が綺士程度に勝てない――。


それでも引き返せるわけもなく、進んで行くと静寂に沈んだ村に行き着いた。探索していくと一軒だけ、玄関扉の開いた民家を見つける。


家の地下室でステルスハウンドで使われる、特殊な大口径の銃で殺された遺体を見つけるのだった。そしてバラバラにされた二体分の遺体も同時に発見する。


その遺体は仲間のものであった。


しかし、後一人“オルスタッド・ハイルナー”が居ない。


ジェイドはヘルレアに探索出来ないかと願うと、ヘルレアは探索したい者の持物を貸せと言う。ジェイドは部屋で見つけたペンライトをヘルレアへ渡すと、王は珍獣“シャマシュ”を取り出した。シャマシュはジェイド達を散々ヘルレアの作り出した自律人形というものだった。


そうしてシャマシュに導かれて歩き続けると、二人の前に現れたのは甚大な災害の跡だった。遠く見渡すと爆撃らしき痕跡が生々しく広がっている。


それが暴虐の王が発し続けた気配の源だったのだ。


ヘルレアが言うには、力の駆動源が小さい為に世界蛇であるヘルレアですら判断が難しかったのだという。


そして、何よりもヘルレアは幼蛇ようだ――成熟した大人ではなかったからだ。


災害に対して、二人に出来る事は無く、呼び続けるシャマシュに押されるようにして、この場を去るしかなかった。



後編へ続く――。

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