第26話 男子生徒とクラスメイトと

今日から本格的に授業が始まることになっていたので、少し重い鞄を持ちながら教室へと向かう。


すると、俺がいることにまだ慣れない様子の別クラスの女子が通り際にチラチラとこちらを見てくるのがわかった。


これからはこれが当たり前になるんだなと、学校生活での自分の立ち場を再認識し、2-Aの教室へと入っていく。


「おはよ〜。」


すると俺が来たことに気づいたクラスメイトたちがおはよ〜と返してくれる。


昨日は二人と話していたからあんまり周りの子達のことを見れていなかったんだよな、と美織が座っている席とは反対の席へと目を向け改めて挨拶することにした。


「おはよう。昨日はあんまり話せなかったけど、よろしくね。」


「は、はい!よろしくお願いします!!」


すると私も私もと、いろんな子が集まってきたのでみんなに挨拶を返す。


そうして挨拶をしていると、クラスメイトの男の子が教室へとやってきてプルプル震えながら俺に話しかけてきた。


「お、おはようございます。御門くん。ぼ、僕は小暮翔太こぐれしょうたって言います…。お、同じクラスの男子として、な、仲良くして欲しいでしゅ!!う、うぅ噛んじゃった…」


なんだこいつ、かわいいな。いかんいかん、俺にそっちの趣味はないんだ。落ち着け落ち着け。


「俺の方こそよろしく!!仲良くしような翔太!」


「う、うん!!えへへ、大我くん以外の友達初めてできた…」


いちいちかわいらしい仕草をする翔太に和んでいると、翔太の後ろからスポーツ刈りの男が現れて翔太に肩を組みながら話しかけてくる。


「よぅ!翔太~!呼んだか~!?編入生君と何話してたんだよ!俺も混ぜてくれよ~!」


「わっ、た、大我君やめてよ~重いって~!」


「へへ、わりぃわりぃ。お前は編入生の御門だったよな!?俺は柿谷大我かきやたいがだ!昨日は話せなかったけどよ、同じクラスの男だし仲よくしような!」


「ほんとか!?あぁ、仲よくしてくれ!ちょうど翔太とも今友達になったんだよ。いやぁこのクラスの男子がフレンドリーで助かったよ~これからよろしくな~!」


思わぬ形でクラスメイトの男子と仲良くなれたので、これからはなかなか楽しそうなことが待っていそうだ。


などと考えていると、気づけば俺たち男子の周りから女子が少し離れており、こちらの様子をうかがっていた。


「あれ?なんでみんな離れてったんだろ?」


「そんなのあたりまえだろ?むしろ御門はなんでそんな平気そうだったんだ?」


「ぼ、僕も気になってた。あんなに女の子に囲まれて怖くないのかなって…だから怖かったけど、さっき声をかけたんだよ……。」


あ。

俺はまたやってしまっていたらしい。なんて言い訳をしようかと悩んでいると、いつの間にか登校していた、美織と六花が助けてくれる。


「それは、悠くんのご家族のご意向らしいで~。」

「そうです。悠さんのご家族の方は、女性との接し方について一般的な考えとは別の考えを持つよう教えていたようですよ。ね、悠さん。」


「そう!そうなんだよ!外に出たら女の人が沢山いるけど、接し方さえ間違えなければ大丈夫だからって言われてきたんだよね~。だから皆よりは女性と話すのに慣れてるんだよ!」


た、たすかったーーー!ナイスタイミングで来てくれたものだ…。


「そ、そうなのか??でもなんでそれを夕立と安達が知ってるんだよ。」


大我がまだ納得できないらしく二人を問い詰める。


「あ~そんな警戒せんでも変なことはしてへんよ。春休みにたまたまショッピングモールで出会って、そんときにお姉さんから聞いてたんよ。」


「そうですね。その時は悠さんがここに編入するとは思ってませんでしたが、概ね六花の言う通りですよ。」


「あぁ、二人の言った通りだよ。昨日も二人と話していたのはその時仲良くなったからなんだ。」


俺が最後にフォローしたことで、大我もようやく納得したようだ。


「そういうことにしておくか。まぁでも、あんま愛想振りまきすぎんなよ?勘違いされて襲われても自業自得だからな。」


「ははは、肝に銘じておくよ。」


最後まで心配してくれる大我に軽く約束をして二人は席へと戻っていった。

それを見守り、俺は二人に対して改めてお礼を伝える。


「助かったよ。ありがとね美織。六花。」


「いやぁ~ナイスタイミングやったやろ?」

と六花。

「お役に立てたようでよかったです。」

と美織が口にする。


「もうばっちり、ほんとに助かったよ。ちょっと俺の行動が軽率だったみたい。」


女子と接することに嫌悪感がないため、どうしてもああいう態度になってしまうのはもうどうしようもないかもしれない。


その後、六花のほっぺに赤い傷があったのでどうしたのか聞くと、なんでもない!といって席まで戻ってしまったので、先生が来るまで今日の授業の流れについて美織と話すことにした。


そのまま美織と話していると、後ろのドアから一人の男子生徒がこちらをみているのに気づいた。

それは完全に俺を睨んでいる様子だったが、俺と目が合うとサッとすぐに隠れてどこかに行ってしまったようだ。


「?」


「どうかされましたか?」


「いや、なんか美織の後ろのドアから男子生徒に見られてたみたいなんだけど、どっかいっちゃったんだよなぁ。」


「男子生徒…?どんな方でしたか?」


「髪は短めで、ちょっと小太りな感じの奴だったかなぁ。なんか俺のことすごい睨んでたんだよね。」


俺は先ほど見かけた男子生徒の特徴を美織に伝える。すると美織は考え込んでどこかに連絡をしていたようだ。


「ふむ。ありがとうございます。もしかしたら何かわかるかもしれませんので、またお伝えしますね。さ、授業の準備をしましょう。」


「?わかった。1限は数学だったよね。」


俺は美織の言っていることがよくわからなかったが、ひとまず授業の準備をすることにした。




そして、昼を迎えたころ俺は空き教室に呼びだされて唐突にキレ散らかされているのだった。


「お前ごときが俺様の美織に近づくんじゃねぇよ!とっとと学校辞めちまえこの不細工が!!!」


なんでこうなった…。



☆あとがき☆

美織視点で出てきた男子生徒がさっそくお出ましです。

ぽっと出のモブキャラに用はないので、早々に退場してもらおうと思います。

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