第11話 幼馴染みの愛と俺の心の闇

 現愛は、涙を流していた俺の顔を険しい表情で睨み付ける。

 俺は、戸惑いつつも何でそこまでして、こんなにも怒ってるのか分からない。


「何で……お前が、怒ってるんだよ!」


「そんなもの……あんたが、好きだから決まってるじゃない!!」


 俺は、現愛がまた意味不明な告白をするのに、唖然とするしかない。

 俺にとっては、現愛はそんな女というイメージはなく、ただ単に嫌われてると思っていた。

 それが、ここまで怒りをぶつけてくるとは。


「それに……魔王に、教えてもらったの……あんたが、どんだけあの時苦しかったのか……だから! 私は!! リアルの良さも教えたい!!」


「無駄だよ……もう……」


 現愛は、俺がそういうと大量の涙と鼻水で顔をグシャグシャしながら、質問責めをしてきた。


「……うぅ……何で!? 私が、あなたを振ったから? あなたが、中二の頃に色んな人に裏切り続けられたから? ぐずぐず……中二の頃のあたしが、他の男と付き合っていたから? うぅ……それを、助けて疲れたから? うぅ……どういうことよ……どういうことよぉ!!」


 現愛が、そう言うと風が吹きあれ俺達は飛ばされそうになるが、何とかそこで踏ん張る。

 だが、そんなものは問題じゃなかった、それより過去の俺の出来事がバレそうになった俺は、気分がどんと悪くなり追求されたくないので、防ぐためにおもいっきり叫ぶ。


「やめろ……やめろぉぉ!!」


 俺が、そう言った瞬間魔王が目の前に現れて、ぼそぼそと自分だけしか聞こえない声で言う。


「いいのか……我を倒せば、ブレイ達も消えるのだぞ……」


「……何だって!?」


 俺の驚愕した表情に、不思議そうに見つめる四人の女達、ブレイは何か察したのか、冷や汗をかきながら何を言われたのか聞く。


「平二……何か、魔王に言われたのか……」


「何でもない……」


 俺は、どうにか誤魔化してブレイを納得させたが、心が痛んでしょうがない。

 やはり、信用してくれた親友のような、キャラには打ち明けたいが、言えるはずがない。


「平二……私は……あなたに、救われた……あの時、襲われそうになっていた私を……付き合っていた男と、その友達から……逃がしてもらって……うぅ……だけど! 平二!! あんたが、あの時本当は……傷付いていたんだよね……だから!! これ以上無理しなくていいの!! 私に、振られた時に傷付いた分まで!! 好きにしていいの!!」


「それは……違うよ……」


 現愛は、涙で前が見えないくらいになっても、必死に俺の方をみて慰めようとする。


「違わない!! だから……私は、もうあんたを裏切らない!! うぅ……一生あんたを愛すと誓う!! ぐずぐず……だから、私を愛してよ……もう、傷付くあんたを見たくない……私のせいで……いや……うぅ……他の人のせいで、傷付けられる必要ない……うぅ……これで、平二はリアルの女の子と付き合えるの」


「それは……ない」


 現愛は、俺のでた言葉に驚いたのか、涙を引っ込めて口をぽかんと開けて声を震わせる。


「どうして……どうしてなの……もう、二次元に夢を見なくていいのよ……私が、あなたに最高の愛を届けるから……」


「もういいんだよ!! リアルの、女の愛なんかいらない……リアルの、世界なんて要らないんだよ! 俺は!!」


 そう、現愛が俺の話を聞くと茫然と立ち尽くす、それから何故か難波や、天音のメイドの九寺ツクシ《きゅうじつくし》と魔王が名前を言っていた。

 そして、その二人は闇につつまれていて、もう手遅れだった。


「ツクシ……あなた……」


「……」


 九寺は、主である天音の言葉を聞かずに、難波と一緒に魔王の前に立つ。

 難波も、いつものおちゃらけた雰囲気と違って、眉間にシワを寄せて真剣な顔をしながら、こちらを見ていた。


「あはははは!! 闇を、受け入れて……こちらの、仲間になるか! 大城平二!!」


「ああ……もう……リアルに、未練はない……」


 現愛から出ていた、黒い闇のオーラは魔王の力で引き剥がされて、俺のところにきて取り憑いて体を包む。


「平二!!」


「平二!? 本当に、それでいいの! ブレイまで裏切って」


「ああ……リアルなんて、俺はもういらない……」


 そして、魔王は闇の魔法でこの世界を黒くしていく、空は雷雲で覆われて人々は心を闇に染めていった。


「あはははは!! これで、この世界は征服完了だ! 残念だったな! 勇者ブレイよ」


「ぐううう!! だけど! 平二は、きっと元に戻ってくれるよ! 絶対に!!」


「どうだかな……あはははは!!」


 魔王は、ブレイ達を見て嘲笑っていた。

 どうやら、俺を手に入れて勝利を実感していたみたいだ。

 ブレイの仲間は、いつの間にか来ていたが、もう俺には関係ないのだ。

 俺は、魔王と共に黒いマウントに包まれて消えていく。


「平二!! 私は、絶対に諦めないから!!」


「そうです!! 諦めません!!」


 俺は、黒い闇のオーラに包まれながら、そんなリアル女4人組の叫びを聞いたが、どうでも良かったのでさっさと魔王に移動してもらうように頼み、一瞬で辺りが真っ黒になり消えていた……。




 私達だけで、あれから闇に犯された人達を闇から払い救った、どうやら私と天音と伊藤と先輩と先生は、闇を払い除けれる一族のまつえいと、ブレイから聞かされた。

 まさかと、祈ってみると平二みたいな武器が出現して、それで魔物攻撃してみると、倒されて消えていった。


「素晴らしいよ! 流石! 魔払い一族の人達だ!」


「別に……そんなことを、言われても嬉しくないわよ……それより、アイツが何故ああなってしまったのか……話すわよ……」


 他の4人は、平二の過去に興味津々だったが、私は話したくなかった。

 それは、私が辛いとかじゃない。

 平二が、悲しんでいる姿を思い出したくなかった、それに……もうあんな時代無かったことにしたい。 

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