あなたはあなたのままでいいんだよ

永嶋良一

1.些細なことに傷ついて忘れられない

 今日もね、昼休みに隣の3組の亜美と階段の踊り場でダンスの練習をしたのよ。ダンスの大会がもうすぐだから、部活以外に練習しないとね・・


 だけど、私は気にかかることがあったの。昨日、ダンス部の練習が終わったときに、顧問の山根先生が全部員を集めて、今度のダンスの大会で踊るメンバーを発表したのよ。先生は「全員に踊ってもらいたいんだけど・・大会の規定で1チームで登録できるのは20人までだから、選手は3年生全員と後は2年生から選びました」と言って、大会に参加できる20人を発表したのよ。


 私たちの高校のダンス部は女子ばっかりで全部で46人でしょ。3年生が12人、私たち2年生が16人、そして1年生が18人よね。だから3年生の12人は全員選ばれて、2年生から半分の8人が選ばれたわけ。私は運よく選手に選ばれたんだけど、残念ながら亜美は選ばれなかったの。


 亜美と私は1年のときに同じクラスですぐに仲良くなって、一緒にダンス部に入ったの。2年ではクラスは別になっちゃったんだけど、こうやって毎日昼休みには一緒にダンスの練習を続けてきたんだ。

 

 だけど、私は選手に選ばれたけど、亜美は選ばれなかったのでね、今日は私はとってもつらかった。それでね、ダンスの練習の中休みのときに、私は亜美にこう言ったのよ。


 「亜美、ごめんね。私だけが選手に選ばれちゃって・・だから、なんだか、つらいの」


 亜美は私の肩に手を置いて、こう言ってくれたの。


 「いいのよ、紫音しおん。私の分も頑張って踊ってね」


 私は亜美の優しさに感謝したわ。


 「ありがとう、亜美」


 すると、亜美がこう言ったの。


 「紫音、もう、そんなことを言わないでね。紫音にそんなことを言われると、私、自分が惨めになってしまうわ」


 そう言って、亜美は泣き出してしまった。私の言葉が亜美を傷つけてしまった・・私は亜美に謝ったんだけど、亜美はトイレに走って行って、個室の中に隠れてしまったの。私が個室の外から謝っても、返事もしてくれなかったの。


 亜美を傷つけてしまったことが忘れられなくて・・私は午後からの授業は上の空だった。


 そして、亜美に会うのがつらくて、今日、私は部活を休んでしまったの。


 私はいつも一生懸命やってるつもりなんだけど、なんか、苦しいんだ。生きてるって、なんで、こんなに苦しいのかなあ。


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