第45話
ベットの上で独り寝転んで居た。
とにかく何も考えたく無かったのだ。
愛海や海華にあの男を会わせてしまった事、そして雪に迷惑を掛けてしまった事だ。
こんなんではダメだろ、俺。
「入りますね」
「横に寝転んでから言うのか?」
「それが私のポリシーです」
「変わったポリシーだな」
横に最近では普通になって来た雪が並ぶ。
聞いて来るのだろうか、そんな考えを俺は持つ。
だけど、雪は何も聞かなかった。
「たっくん。二人で少し、遠くに行きませんか?」
俺は瞬時に土下座する。
「とてつもない迷惑を掛けたのは分かる! 俺はなんだってする覚悟はある! だけど、逃げるならさめて妹二人も」
「ち、違いますよ! 全くそんな事考えてません! 心が休まる場所に少しばかり行きましょう。その方が、良いと思います」
「でも⋯⋯」
雪が俺に顔を寄せて来る。
「私が行きたいのです。たっくんと、二人で。ダメ、ですかね?」
そんな風に可愛らしい声と表情で近くで覗き込んで来て、一枚の紙を向けて来る。
その内容は『嘘つきお兄ちゃんは雪姫お姉さんの指示に従ってください』『下妹同意。裏切り兄には優しい制裁』だった。
ちょっと泣けて来る。
違うんだ。愛海、海華、これは本当に母さんとの約束であって。
だから別に隠していた訳じゃないんだ。
いやね。だからと言って秘密を言う訳にはいかないんだけどね。
「あの、たっくん? 心の中で凄く言い訳してませんか?」
「で、どこ行くんですか?」
「遠くです!」
「具体的に」
「遠くです!」
オッケーノープラン。
「パンダ見に行くか?」
「そうですね。なら、明日早くから出発ですね」
「犬との触れ合いがあったな。予約するか」
「たっくんやり方分かりますか?」
俺は目を逸らす。
未だにスマホの操作は苦手な俺。凛桜に手伝って貰い、色々と勉強中。
そこら辺の操作は愛海達の方が上手い。若いって良いね。
そして翌日、駅まで歩いて、新幹線を初めに目的地に向かう。
目的地に着いて、ぼんやりと呟く。
「初デート? と言うか皆で行った場所も動物園だっな。動物園で始まって動物園で終わる。裏切り者には勿体無い終わりだな」
「何を言っているかさっぱり分かりませんが行きましょう。ちなみに初デートは私の中では昔の駄菓子屋に行った事です」
「それは同じだわ」
入場し、左手には土産屋と帰りの道がある場所、右手にはレッサーパンダが居る。
中に入りレッサーパンダを見る。
可愛い。
「むー」
嫉妬された。
それはレッサーパンダへと向けられ、プルプルと端っこで縮こまるレッサーパンダ。冷気の籠ったオーラーと言うか圧と言うか、雪は今でも現役のようだ。
木の柱とかあったりするのに、端っこでプルプルしている。丸まって尻尾を掴んでるよ。
それでも他の客はレッサーパンダを写真に収めているが、流石に一箇所に居て、割と離れているので面白く無さそうにしている子供達。
「ちょ、雪」
「むー」
「よし、次行こ次」
次は水族館の方に向かう。
中央には北極クマ、シロクマの方が良いかな? がゴロンとしていた。
夏だが内部は涼しいだろうな。
他にはペンギンが殆どだ。
下は水中を泳いでいるペンギンが見れたりする。
斜めで登って行く道があり、そこでは服がカラフルに光る用に見える。天井のライトがそうしているかもしれない。
「眩しい」
「ですね」
二階は陸上にいるペンギンや上からシロクマを見れる。
後はペンギンの説明がある。
「世界最大のペンギン、でかいですね」
「な。海華並はあるぞ」
逆に一番小さいペンギンは愛くるしかった。
「飼うならこの子ですね」
「飼うの?!」
「お父様達が住んでいる本館には色々なペットが居ますよ。ホワイトタイガーやニホンカワウソや⋯⋯」
「ごめんスケールが違いすぎてピント来ないや」
次に触れ合い広場に向かう。
鳥が入っている小屋があるのだが、そこには入らず触れ合い広場を散歩する。
大きな鳥に猿、カワウソ等が居る。
鳥の楽園って所に入り、様々な鳥を見た。
次に近くにある猿が見れる場所に向かい、猿、猿と来て亀が居た。
後は亀の置物があったり⋯⋯猿は小さい方が可愛いと思った。
チンパンジーを見て、めっちゃおっさんだとか思ったりした。
「そろそろパンダの子供を見に行きましょう」
「だな」
流石はパンダ、人が多かった。
左側の檻に入っている子供のパンダは寝ており、右側は動き回っていた。
後は昼の時間に成ったらカワウソの餌やりや大人のパンダが見れる。
なので再び触れ合い広場に戻って来た。ちなみに看板には『ふれあい広場』って書いてある。
その近くにある犬と触れ合える場所に行く。
受け付けは来たすぐに済ませてあったらしく(多分雪が誰か手配した可能性大)時間となり、中に入る。
最初に他の人と説明を受けて、犬と触れ合っていく。
「流石に犬も慣れてますね。ふわふわです」
「だな〜かわゆす」
「⋯⋯」
「雪も可愛よー」
「〜〜〜」
犬を撫でてない手で雪を撫でる。
動物園、結構危険かもしれない。
昼まで餌やり可能な動物に餌をやったりして和んだ。
昼は俺も雪も冷やしうどうを食べた。
時間となり、既に割かし列が出来ている大人のパンダを見る為に並ぶ。
夏な事もあってか暑い。
雪は麦わら帽子を被っており、二人とも日焼け止めは塗っている。
俺は要らないって言ったのだが、雪が譲らなかった。
なんか子供と同じように左側は寝ており、右側は起きていた。
後、流石は室内。涼しかった。
最後にお土産を買って、一回千円の内部で回転している形のくじをして行く。
雪が行い、特賞を取って、景品の中で一番大きいパンダぬいぐるみを貰っていた。満面の笑みで報告して来る雪は子供ぽかった。
最後にちょっとした小ネタだが、ここには10万円のめっちゃ大きなパンダ人形があり、それも記念として雪が購入していた。
「はっ! 帰る前にあれだけはしなくては」
「え?」
連れられて来たのは記念撮影が出来る場所だった。
パンダの置物に座り、店員が写真を撮って、写真を貰えるって奴だ。
「はい。もっと寄ってくださーい。お好きなポーズでどうぞ〜」
中央に寄り添い、ピースサインで写真を撮る。
シャターの光に一瞬目を閉じそうに成ったが、気合いで耐えた。
その結果出来た物は、うっすら頬を赤らめて柔らかい笑みを浮かべてピースする雪に、超真顔で目を見開いている俺と言う絵面だった。
「すまん雪」
「ふふ。これも一つの思い出、ですよ」
帰り道、写真を見ては雪はクスクスと笑って俺のライフを削って行った。
だが、そうだな。かなり気分は良くなった。久しぶりに雪の喜怒哀楽の様々な表情をみれし。
雪になら、話しても良いかもしれない。
約束は二人に話すなってモノだし。寧ろ、桜井姉妹等が居ない今の方が、話すには良いかもしれない。
疲れているのに寝ていない雪に向き直り、俺は語りだした。
あの日見た、おぞましい光景と、それに寄って母の強さがとても明るく見えた事、そしてその時出来た約束を。
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